リコリス・リコイル 〜雑草にだって花は咲く〜   作:シコウ

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本部への出張

 ああ…眠い…、寝る前にコーヒーなんて飲むんじゃなかったな…。前日の夜のことを後悔しつつ、あくびを噛み殺す。そしてさっさと終わらないかなと思い、眠気覚ましに、配られた『部外秘』『要回収』とスタンプの押された資料をパラパラとめくる。

 

 DA本部の大会議室、本来なら参加する権利のない定例会議にボクは出ていた。ただしオブザーバー(傍聴人)としてだが。下座の隅で黙って本部のお偉いさん(各部門責任者)の話を聴くだけとなると睡魔に襲われるのも仕方ないというものだ。なぜ退屈な会議に出る羽目になったかというと少し時間を遡る。

 

 DA関東本部・東京支部…表向きには、実在しない国税庁山梨研修所の名称で某所の国有地内にある。今日は本来、ここの倉庫棟建て替え工事の件で打ち合わせに来た。設計・施工とも元の勤め先…清林建設(セーリン)、ボクは限りなく施主に近い協力会社という立場となっている。ひょっとしてこれは板挟みコースまっしぐらなのでは?DAめ、これ目的でボクを拾ったな?

 辞めるときにニコニコ顔の会社の重役に『月岡くん、向こう(DA)でも頑張って』なんて言われたとき、なにかあるなと思ったらこれだ。

 

 映画などでよくある秘密組織の施設、極秘裏にそんなもの造れるかと思っていたが、うちが喰い込んでいるとは思わなかったな。暗黒メガコーポは実在した。

 

 そんなこんなで打ち合わせを終えて帰ろうとしたら、廊下で上司に鉢合わせ『よう、珍しいな。このあとの定例会議出てけや』なんて言われて参加することになった。下っ端が居ても意味がないと思うんですが…。

 

 いかん、つい過去の回想に入ってしまった、会議に集中しなければ。

 

 「…対象のハッカー、ウォールナットですが、依頼主不明の傭兵(コントラクター)が襲撃、310支部(リコリコ)の護衛があったものの死亡が確認されています。」

 

 「なぜ310がウォールナットの護衛を?」

 

 「ウォールナットの件は情報部で調査中であり、まだ現場に命令が伝えられていませんでした。」

 

 「310が任務失敗か…珍しいな。まあ、死んだならそれで良い。」

 

 へえ、ラジアータ…うちの統合管制AIにハッキングか度胸あるねぇ、死んだようだが。

 

 「さて、次の件ですが、現在情報部で対応中の制服マニアについては特段の進展はなしです。」

 

 リコリスの制服に興味を持つとは、手元の資料には掲示板サイトやSNSのログが載っている。アイギス女子の制服で生徒以外には非売品である、との情報操作はうまく進んでいるようだ。

 でも、もしリコリスに手を出したら、そこまでの命だろうな。

 

 「対象に接触が必要な場合は、831に一任してもよろしいでしょうか?」

 

 「大丈夫です。なあ、月岡。」

 

 は?何言ってんの、このオッサン(上司)また仕事増やすつもりか?忙しいのに。

 抗議の一つでも、と思ったが居並ぶお偉いさん達の顔を見ると拒否権は無さそうだ。

 

 「了解です…。」

 

 ハメられた、これが目的だったか、しかもわざわざ呼び出して会議で言質をとるなんて、面倒事が転がって来ると決まったようなものではないか。畜生め。

 

 会議後、増えることが確定した仕事に憂鬱な気分を抱きつつ廊下を歩いていると前のほうに人だかり、何かあったのかと覗いて見ると屋内訓練施設(キルハウス)の見学ブースだった。

 

 「ねぇ、下では何をやっているのかな?」

 

 気になったのでそばのリコリスに声をかけた。

 

 「2対2の勝負ですよ、ほらあそこ。」

 

 少人数の模擬戦とは珍しいな、リコリスは基本的に班単位で行動するはずだが。強化ガラスを挟んだ指差す方向にはファーストリコリス、白髪のボブカットが特徴の…千束ちゃんじゃないか、

 

 「…アレ、銃弾避けてない?」

 

 「視えてるそうですよ、アサルトライフルのフルオート射撃も避けられるとか。」

 

 「実弾も?」

 

 「実弾もです。」

 

 えぇ…どんな反射神経と動体視力だ、まるで神からのギフトだな…。ペイント弾が一発も当たってないぞ。

 

 「別に、弾が目視できてるわけじゃないぞ、射線を紙一重で避けてるんだ。」

 

 缶コーヒーを2本持ちふらりと現れた上司は、片方をボクに渡し『さっきは済まんかったな』と付け加えつつそう教えてくれた。

 

 「錦木は観察力と反射神経が異常に高いんだよ、相手の僅かな筋肉の動きさえも読み取り、そこから行動を予測して避けちまう。アイツとジャンケンするなよ、勝てないからな。」

 

 なるほど、サンダンウチ・タクティクスなら倒せるかな?いや、ソードオフショットガンに銃剣でもつけるか、拳銃では相手にならないだろうからな、今度訓練があったらやってみるか。

 おっ、奪った相手の銃を投げ返したぞ、相手のセカンドがすかさずそれを拾って発砲、千束ちゃんは悠々と全弾回避そして弾切れ、そして銃を奪いタックルからの数発撃って無力化、残るはファースト同士の勝負、

 

 「うおおおおぉー!」

 

 今までどこに居たのか、たきなちゃんが叫び声を上げつつ突入してきた。そして残るファーストを撃…たずに殴った!?グーで!?ファーストはへたり込み、たきなちゃんは勢い余って壁際に、間に千束ちゃんを挟む格好となったが構わず発砲、千束ちゃんはそれを回避、背後のファーストに命中、勝敗はついた。

 

 避けられると思ったから躊躇わず撃ったんだろうな、いいコンビになりそうじゃないか。今日は面白いものが見られた、さて帰るとするか。

 

 「あっ、月岡ちょっと帰る前に装備部寄って、警官用拳銃(ニューナンブM60)受け取ってこい。日本の警官があんなもん(コルト・ウッズマン)吊ってんのは不自然だからな。」

 

 まあ、『森の人』は不自然だろうな、大人しく警察のお古を貰うとしますか。しかし831の弾種がまた増えてしまうな、自分のわがままだからしょうがないか。

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