リコリス・リコイル 〜雑草にだって花は咲く〜   作:シコウ

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強制査察

 

 本部での用事を済ませ、正面のセキュリティゲートを通過しようとしたが、職員用IDカードが見当たらない。どこに仕舞ったものかと、ポケットや鞄の中を漁っていると、黒スーツと、ボディアーマーに防弾大盾(バリスティックシールド)とサブマシンガンを携えた物々しい集団が脇をすり抜けた、リリベルか?ここはリコリス専用施設だぞ、なぜ正面玄関から入ってきた?

 

 「全員そのままそこを動くな!会計検査院特別査察(第六)局だ!」

 

 違ったようだ。辺りへ油断なく銃を向ける隊員の間から、職員や丸腰のリコリスの前へ指揮官らしき男が進み出てきて続ける。

 

 「匿名の通報を受けてきた、これより強制査察を行なう、ここの責任者と話をさせて頂きたい。」

 

 会計検査院…国や政府系機関の収支、会計を監査する機関、そこの第六局か、ここDA本部は国税庁…財務省の施設に擬装されているはず、本来なら第一局の管轄だ。わざわざ第六局が動いたということは、また面倒事になりそうだな。

 DAの活動資金源はフロント企業(各支部)からの収益もあるがほんの雀の涙程度、そのほとんどを国庫に依存している。それがどこかから漏れたらしい。

 駄目だと思うが一応聞いてみるか。

 

 「あのー、民間人なんですけど帰っていいですか?」

 

 「そのまま動かずに居てください。」

 

 近くの隊員に聞いてみたが、そっけなくそう返されてしまった。まいったな、夕飯に間に合わなくなる。さて、どうしようか?そうして、しばらく誰も動けずにいたが、

 

 「お待たせした、私が責任者の楠木だ。たかが研修所一ヵ所の査察に随分と大仰じゃないか。」

 

 「これでも最低限の人員です。しかしまあ、国税庁の研修施設にしては随分と立派な設備ですな。そして職員の方も随分と若い。」

 

 楠木司令に対して、第六局の指揮官はロビーの端に集められたリコリスを見回しそう言った。司令がそれに応える。

 

 「第一局の監査は先月終わったはずだか、今さら六局が何の御用かな?」

 

 「第一局はつい先日、大規模な人事異動(内部粛清)がありましてね。それに伴って担当案件の再調査を命じられたというわけです。一局の連中の目も節穴だったと見える。まさか財務省・国税庁(国家の金庫番)がこのようなことを行っていたとは。」

 

 向こうの内部抗争に巻き込まれて名義貸しがバレてしまったようだ。さてどうする?楠木司令。彼らには穏便にお帰り願いたいものだが。

 

 「前任や上からは何も聞いていないのか?」

 

 「何やら世迷い言を喚いていましたが、彼らなら更迭されましたよ。」

 

 司令は手を上げ、

 

 「そうか何も聞いていないと…では、やれ。」

 

 振り下ろした。

 

 司令の隣には、機関銃を腰だめに構えた…たきなちゃん!?や、やばい!またこの子か!

 

 咄嗟に近くにいた隊員を蹴り飛ばし、持っていた防弾大盾(バリスティックシールド)の影に隠れる。

 刹那に銃弾の嵐、盾に隠れそこねた隊員や黒スーツが穴あきチーズになって倒れる。7.62x54mmR弾は貫通しないだろうな?この盾。

 

 「き、貴様ら、反撃ー!撃ち返せ!」

 

 しまった!後ろはガラ空きだ!あいにく錦木流銃弾回避術など修めていない上に、重い盾を構えていたので伏せるのが遅れた。

 

 腹部に焼けるような熱さを感じ、手を当てるとベッタリと血が付いていた。おお、これは確実に致命傷だな、まさか本部で死ぬとは思わなかった。防弾コート着てくればよかったな、懐の『森の人』も使わずじまいか…。

 

 「月岡!おい月岡!おい起きろ!」

 

 おや、上司じゃないですか。その傍らにはボクのIDカード、やっぱり置き忘れていたようだ、届けに来てくれたのか。

 

 「わざわざすみませんね…。」

 

 それを最後に意識はプッツリと途絶えた。

 

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