都内某所の住宅街その一角に佇む、門柱に『月岡学習塾(アイギス女子学園提携校)』『月岡設計事務所』の小さなプレートを下げた洋館、DA831支部。朝早くから外せない用事があったらしく、その日は珍しいことに管理人は家を空けていた。しかしリコリスたちも不在というわけではない。
管理人に言わせれば『ボクなんてご近所さんへの世間体を考えて配置されているだけ、いなくても彼女たちで十分まわるよ。』とのことだ。実際、彼にリコリスたちへの指揮権はない。
831支部の中では勤務中のリコリス達が暇を持て余していた。
日課の本部とのリモート授業は講師の都合で午前中は休み、体力トレーニングも831支部には残念ながら設備がない。射撃訓練も一月に撃てる数は決まっている。防諜対策から情報端末からアクセスできるサイトも限られている。暇を持て余していたリコリスの一人がこんなことをつぶやいた。
「ねえ…つっきーの部屋って入ったことある?」
「いっつも散らかってるよね〜あそこ。」
「違う、違うその奥。」
リコリス達が密かにゴミ部屋と呼んでいる管理人の
「『家宅捜索』してみない?」
サードの制服の少女は悪戯っぽい笑顔を浮かべ、そんなことをいった。
「人の部屋に勝手に入っていいんですか?」
こちらはセカンドの制服の真面目そうな顔をした少女。
「たきなも気にならない?つっきーがいつも引きこもってる部屋。」
管理人は食事とリコリスの送迎時以外は大抵この仕事部屋で死んだ目でマウスかペンを握っている。ここはまではリコリスたちもよく行く。
しかし、その奥となると入ったことのあるものはいない。
「まあ、一日中引きこもって何をしているかはよく知りませんけど…」
「でしょ?」
結局流されるようについてきた、たきなを含めリコリス全員がドアの前に集まった。
「鍵はかかってない、トラップの類いもなし、と。」
慎重に書斎に入るリコリスたち、
「相変わらず散らかってるな〜。」
そのへんの図面をパラパラとめくって机の上や棚を見回すサードのリコリス。
コの字形の机の上は書類や図面で埋まっていた。かろうじて『未』と『済』に分けられた図面の山、『裏紙』と書かれた箱からあふれる紙の束、付箋まみれの専門書、パソコンのモニターにすらメモがベタベタと貼られている。
机の上は悲惨の一言に尽きた。飲みかけのマグカップすら放置されている。
「ねえ、これって本部じゃない?」
一人のリコリスが手にしているファイルには『国税庁 山梨研修所整備計画(倉庫棟)』の文字、
「今度立て替えるって聞いてたけど、つっきーがやってたとはね。」
普段、DA関連施設は『私立アイギス女子学園』の名義に偽装されている。しかし本部は国有地の中にあるため、国の施設に偽装しているようだった。
他にも『アイギス女子学園品川キャンパス』、『押上再開発計画Cー3街区』などのファイルが棚には並んでいた。全てDAや元の勤め先から押し付けられたものだろう。
「さて、ここはいいとして奥行くよ、奥。」
お待ちかねといった様子で手をワキワキとさせつつ、にやつくサードのリコリス。
「いいんですかねぇ…」
不安そうな顔をするたきな
「鍵はかかってるかな〜?」
三人称の練習