「そうですか…、本人には、…ええわかりました。ではまた後ほど。…失礼します。」
「つっきーどうだった?」
「異動はもう決定だそうだ。こればっかりはボクではどうにもならないよ。」
「そう…。」
今の電話の相手は
今回の失態は大きすぎた、リコリスの損害がないことや途中通信障害があったいうことを差し引いてもだ。
実際、司令部は現場に狙撃手を配置していたし、増援も到着間近だった。
過ぎたことに対するたらればだが、人質のセカンドリコリス一人と武器ルートの情報、どちらが重かったのだろうか?上層部は後者が重いと考えたらしい。それに対する答えがこの処分だ。
ファーストへの推薦はなかったことに、そして本部リコリスから支部リコリスへの降格と配置転換。実は831所属のリコリスは存在しない、全員本部からのローテーションだ。実際彼女たちの
「本人にはもう伝えてあるらしい。夕方には私物を取りに来るそうだ。」
ミシリ、と椅子を軋ませ背伸びをする。
「まったく、税関の連中は仕事をしていたのかねぇ…さて、そろそろお昼にしようか。」
八つ当たりめいたことを呟きつつ、机の上の書類を適当にまとめて、ココアシガレットを咥え椅子から立ちあがる。 窓の外には満開の桜、春は出会いと別れの季節というけれどこんな形になってしまうとは、彼女とは本当に短い付き合いだったな…。
「リリベルが出張ってこないだけマシと考えるか…。」
「リリベル?」
「ああ…いやなんでもない。」
適当に手を振って誤魔化す。君たちはまだ知らなくてもいいことだ。
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「短い間ですがお世話になりました。」
作戦中の怪我か頬に絆創膏を貼った彼女は、マグカップなどの僅かな私物をまとめそんな挨拶をした。
「うん、次の場所でも元気でね。ところでどこに配属の予定なのかな?」
彼女は黙って個人用端末の画面を見せてきた。画面には電子生徒手帳、
「310か、悪いところじゃないよ、あそこは。ちょっと賑やかかもしれないけどね。それに…あそこには『歴代最強のリコリス』もいる、勉強になることもあるかもしれないよ。」
「そうですか…。」
「あと、酔っ払いに『飲みすぎるな』って伝えてほしいかな。」
「はい…。それでは。」
「じゃあ、元気で。」
これが831での最後の会話だった。彼女の前途に幸あらんことを。