悠斗さんが朝食を食べ終えたのは10時半。お昼御飯まであと1時間半しかなかったから、のんびりとテレビを見ていた。3人で見てるんだけど、やっぱり緊張する・・・・・・。
「そうだ〜!」
「・・・・・・何、そんな白々しく。」
「わたし、見たい番組があったんだった〜!それ見てもいい?」
「俺はいいよ。倉田さんは?」
「わ、私も・・・・・・。」
「それじゃあ・・・・・・。」
悠斗さんのお母さんは私たちの了承を得たら、どこからかDVDを取り出して、レコーダーにディスクを入れて画面を操作してテレビ画面にはDVDに収録されている映像が流れ始めてた。
「これ、なんのライブ映像?」
「うん?『
「これって・・・・・・!」///
客観的に見るのは初めてだったけど、薄暗いところから始まる演奏には聴き覚えがあった。そして、画面の奥で演奏している人たちにも見覚えもあった。
「そう!『Morfonica』っていうバンドの映像なのよ!職場の若い子がそういう話をしていて、わたしに布教してきたのよ~!オススメしてきたバンドは7バンドぐらいあったんだけど、その中で気になったのはMorfonicaなのよね~!」
「うぅ・・・・・・!」
「へぇー。あれ?このバンドのボーカルって・・・・・・?」
画面の奥では照明が明るくなってメンバー全員を照らしている。悠斗さんはボーカルを見てすぐに私の方を見てくる。そして、流した張本人はニヤニヤと私の方を見てくる。
「悠くん悠くん、どう思う?」
「・・・・・・ちょっと、不慣れな感じはするけど・・・・・・綺麗な声、してるね。」
「へっ!?」///
「でしょでしょ~!わたしもそう思ったのよ~!」
「ところでさ、倉田さん。・・・・・・倉田さん?」
「・・・・・・。」
「倉田さ~ん?」
「は、ひゃい・・・!」///
「透子って人は誰・・・?」
「へっ?え、えっと・・・・・・この、ギターの子です・・・。」
「ギター?・・・・・・あぁ、確かに言いそうだな・・・。」
綺麗と言われた私は、悠斗さんに呼ばれるまで固まってしまっていた。悠斗さんが気にかけていたであろう透子ちゃんのことを教えたら、「やっぱり・・・。」みたいな顔をしていた。見た目だけで察したのだろう・・・。透子ちゃん、ごめんね・・・。
『Morfonicaのライブ映像』という私への辱めを受け続けられた後、昼食を取って悠斗さんの部屋に向かって悠斗さんは絵を描き始めた。
「・・・・・・。」
「っ・・・・・・。」///
「・・・・・・倉田さん、顔赤くない?」
「へっ?そんなことないです・・・・・・!」///
「昼前のこと?」
「え、えっと・・・・・・。」
「まぁいいよ。」
軽く雑談をしながらも悠斗さんは筆を進める。
「・・・・・・よし、出来た。」
「ほ、ほんとに・・・?」
「うん。見る?」
「うん──あ、ちょっと待って。身体が・・・!」
「あ、そっか。ごめんね、ずっと同じポーズさせて。」
「休んでていいよ」と言われた私は楽な体制をとる。悠斗さんはというと、書いたイラストを折りたたんでファイルに入れて私に渡す準備をしているようだった。
結局私は出来た絵を見ることなく、夜近くになってきたので帰ることにした。
「ご、ごめんなさい。結局絵を観れなくて・・・・・・。」
「俺が無理させたんだから仕方ないよ。帰ったら改めてちゃんと見て。」
「う、うん・・・!」
「お、悠斗~!」
帰っている最中、前から剣司さんと優里さんがやって来た。目の前には横断歩道があったから普通に渡ろうとする。でも、そんな時だった・・・・・・。
「って、ましろちゃん!危ない!」
「っ!倉田さん!!」
「えっ?」
信号が赤を示しているはずの道から、スポーツタイプの車が猛スピードで迫って来ていた。私は身体が固まってしまって目を閉じた。
でも、少し前に起きた事件と同じことが起きていると一瞬だけ思ってしまった。今回は突き飛ばされることはなかったが、勢いよく引っ張られてしまった。
「悠斗!ましろちゃん!大丈夫か!?」
「悠斗!ましろちゃんも!しっかりして!!」
「は、悠斗さん・・・?」
目を開けると私と悠斗さんを心配してくれる2人の姿が映った。そして、私は誰かの上にいることが分かって、そっちに向けると悠斗さんが倒れていた。
「テメェ!どこ見てんだよ!?」
「・・・・・・あぁ!?」
「ガキがっ!こんな時間にふらついてんじゃねぇよ!」
「あんたらが信号を無視してるのが悪いんでしょ!?」
「ガキ・・・・・・舐めてると痛い目見るぞ!!」
「上等だ、クズ・・・!」
それから、私は逃げたかったけど、目の前のことから目が離せなかった。柄の悪そうな男性たちが剣司さんたちを殴りかかったけど、むしろ男性たちがボコボコにされていた。さすがは剣術道場に通っているだけのことがあるな・・・と思ってしまう。剣司さんならまだしも、まさかの優里さんまでボコボコにしていた。
「クソッ!テメェら、こんなことしてタダで済むと思ってんのか!?」
「お前らよりかは平和な生活送れるよ。」
「すぐ警察呼んで、テメェらを突き出し──」
「お呼びかね?」
「って、誰だおっさん?」
「おぉ~!相変わらず鼻がいいね、おっさん!」
「おっさん言うな。これでも警察なんだぞ?課長なんだぞ!言葉使いに気を付けろよ!」
「「け、警察・・・!?」」
「さて~!とりあえず手錠かけるね~。」
「「は・・・?」」
「ごめんな~。一部始終見てたからさ。」
男性たちはあっという間に連行されていった。乗っていた車も後から来た警察の人たちが回収されていった。
そして、私たちはというと・・・・・・。
「悠斗は大丈夫か?」
「見た感じ外傷は無いんだけどな・・・。」
「もしかしたら、頭を打ったのかもしれない・・・。」
「ごめんなさい、私のせいで・・・・・・。」
「倉田さんのせいじゃない。」
思い出した、この警察の人は私に現場の状況を知りたいと言って話しかけてきた警察の人だった。もしかして、悠斗さんたちと知り合いなのかな・・・・・・?
「うっ・・・?」
「は、悠斗・・・!?」
「大丈夫か?」
「う、うん・・・・・・あっ!君、大丈夫か!?」
「へっ!?は、はい・・・。」
『君』と言って向けた視線の先には私がいた。でも、どうして『倉田さん』と言わないんだろう・・・?急いでいるからかな?
「良かった~!
「・・・・・・えっ?」
「は、悠斗・・・?」
そう・・・・・・記憶が戻るイベントは、唐突に起きた・・・・・・。