Trace / トレース   作:Topaz_YOU

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第七話

 

 

 

 

 

 悠斗さんの記憶が戻ってから、1年が経った。私も学年が1つ上がった。Morfonicaとしても前よりかは成長できた。でも、プラスなことがすべてではなかった。

 

 あの一件以降、私は悠斗さんとは1回も会っていない。あの後病院には行ったらしいけど、それ以降悠斗さんだけでなく剣司さんたちにも会っていない。ううん、私が怖かったんだと思う。私の事を覚えていない悠斗さんに会ったところで、何かあるのかな・・・って。

 

 

「はぁ~、今日も楽しかったな~。・・・・・・っ。」

 

 

私の視線の先には、机の上の端に置かれたファイルがあった。そう、あれ以降私はあのファイルを開けていなかった。ファイルを開けたら、頑張って避けていた悠斗さんの事を思い出してしまいそうになってた。

 

 

「・・・・・・。」

 

 

部屋には私以外誰もいない。だから、何も音がないのは嫌でも分かる。

 

 あの事件からちょうど1年が経った。だからなのかな、私は頑張って見ないようにしていたファイルにずっと目が行ってしまい、忘れようと努力していた悠斗さんの思い出がよみがえってしまう。

 

 

「っ・・・・・・ちょ、ちょっとだけ・・・・・・。」

 

 

私は手を伸ばして、ファイルを開ける。そして、中に入っている折りたたまれた絵を開いた。そこに写っている私は少しぎこちなくも微笑んでいる。()()()()()()からはそんな感じに見えていたのかな・・・?

 

 

「・・・・・・あれ?」

 

 

ふと足元を見ると、一枚の紙が落ちていた。私の部屋に元から落ちているものじゃないのは分かったから、おそらく悠斗さんが潜ませて入れたのだろう。そのまま紙を拾って、それも折りたたまれたから開いて、中を見る。そこには、悠斗さんからのメッセージが書かれていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 倉田さんへ

 

 この手紙を読んでいる頃にはおそらく、記憶を取り戻して君と会っていないんだろう。と言っても、おそらく君から俺に会わないようにしているんだろうけど。

 この手紙を書いた理由としては、俺のことを必死に忘れようとしているであろう君に伝えたいことがある。忘れてくれても構わない。でも、あの絵を見ては稀にだけでいいから、いつかは思い出してほしい。俺がいたことを・・・・・・君と共にいたことを・・・・・・。

 俺と君との出会いはとても偶然で、世界からしたらとても小さく、誰にも興味を持たれることのないものだろう。でも、俺にとっては、最悪な出会い方だったとしても、運命だったと思える。そう思える程度には、君を描いている時には君への好意があったらしい。

 俺は、もう少し君ときちんと話したいことがあった。でも、君は会う度に緊張したり、反省したりするからあまり話が出来なかった。だから、もしも記憶を取り戻した俺に会ったら伝えてほしい。俺たちがいたあの時間、君は何を思っていたのかを・・・・・・。

 

 P.S. 倉田さんのライブ映像が見れて嬉しかったよ。君の歌声はとても美しいし、ステージ上の倉田さんはアゲハ蝶のようにきれいだったよ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 最後の一文は明らかにあの日に書き足したんだろう。でも、『いつか思い出して』なんて、とても難しい注文だと思ってしまった。悠斗さんといた家以外の場所を外でペンでなぞるように歩いてみても、私にはその足跡が残っていないように見えた。でも、この手紙を見たら、跡が残っていないはずのあの景色に跡が残っているように思い返してしまった。

 

 

「うっ、うぅ・・・・・・!」

 

 

この手紙を読んだ後、私は悠斗さんとの未来は分からなくなっていた。でも、また会いたいと思ってしまった。この手紙の返事をしたくて・・・・・・覚えていなくても、伝えたい・・・・・・。今はまだ無理だけど、悠斗さんが描いて残してくれた絵に愛を込めて手を置いて、涙を流していた・・・・・・。

 

 

 

 

 

私は、きっと悠斗さんが好きだったんだということも知れた・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 それから日にちが経って、私はMorfonicaのみんなで新しく出来たカフェに遊びに行っていた。透子ちゃん曰く、『Morfonicaの作戦会議だから』という。るいさんも、それでなんとか折れてくれたみたい。

 

 

「おぉ~!意外とオシャレだね!」

「そうだね!」

 

「いらっしゃいませ。お客様、何名様でしょうか?」

 

「5人です~。」

「っ・・・・・・!」

「倉田さん?」

 

 

お出迎えをしてくれた店員さんは、丁寧に接客をしてくれる。でも、私にはその丁寧さよりもその顔に意識が向いてしまった。

 

 

「お客様、少しよろしいでしょうか?」

「は、はい・・・。」

「シロ~、いってらっしゃ~い!」

 

 

その店員さんに呼ばれた私だけはカウンターに座った。そして、Morfonicaのみんなとは少し離れて会話が聞こえない程度に・・・・・・。

 

 

「あ、あの・・・・・・?」

「倉田さん、でしょ?」

「えっ・・・?」

「久しぶり。・・・・・・って言っても、覚えていないんだけど。」

 

 

私はどういう理由か分からないけど・・・・・・悠斗さんと再会することが出来た。

 

 

 

 

 

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