私は悠斗さんと再会してから余裕がある時には1人だけでも来るようにしてる。もちろん、悠斗さんに会うために・・・・・・。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
「すみませ~ん!」
「はい、ただいま。」
「お会計お願いしま~す!」
「はい、ただいま。」
でも、悠斗さんは忙しすぎるせいか、なかなか話せずにいた。話せたのは、初めてこの店に来た時だけだった。
「わりぃ!遅くなった!」
「ごめ~ん、悠斗!大丈夫!?」
「大丈夫だよ。そんなに慌てなくていいから。」
今の悠斗さんを見ている限り、私といた頃の悠斗さんとはまるで別人だった。・・・・・・いえ、誰に対しても優しいのは変わらない。変わったとしたら、あの時より一層優しくなっていた。一人称を『僕』と言うぐらいに・・・・・・。
しばらくしたら、カウンターの後ろから剣司さんと優里さんがエプロンを付けて出てきた。
「・・・・・・悠斗、ちょっと休憩してきたら?」
「えっ?いや、僕はまだ──」
「そう言うなって!お嬢さんが待ってるぜ?」
「・・・・・・そう言うなら、お言葉に甘えさせてもらうね。」
「おう!」「任せて♪」
剣司さんたちに言われて一度お店の裏に行った悠斗さんは、エプロンを取って私のところに来た。
「ごめんね、今まで話せなくて。」
「い、いえ・・・。皆さん、忙しいんですね・・・・・・?」
「まぁ、そうとも言えるかな?剣司と優里は大学がある。この店は僕の父さんの友人が経営しているんだけど、どうやら体にガタが出始めたらしくて、僕たちがこの店を継ぐことになったんだ。」
「そ、そうなんですね・・・・・・。」
「でも、昔から言ってた『大人になったらやりたいこと』の一つだから特に問題はないよ。『3人で仲良くカフェ兼何かっていう店をやりたい』って。」
すると悠斗さんは剣司さんから渡されたコーヒーを持って私の向かいの席に座った。
「っ・・・・・・。」
「・・・・・・正直、僕の記憶だけで考えれば、君は『トラックに引かれそうになった娘』という印象しかない。」
「っ!」
互いに飲み物を一口飲んで沈黙が生まれたけど、その沈黙を破ったのは悠斗さんだった。悠斗さんはまず私の印象を伝えてきた。やっぱり、私といた頃の記憶はないみたい・・・。
「でもね、日記を見たんだ。」
「えっ・・・?」
「僕が記憶を失っている間に、その時の僕が書いた日記。記憶喪失だったのは剣司たちに聞いたけど、その間のことはその日記で知ったんだ。君が一生懸命僕の記憶を取り戻そうとしていたこと・・・・・・絵の被写体になってくれたこと・・・・・・僕が君に少なくとも好意を抱いていたことを・・・・・・。」
「そう、なんですね・・・・・・。」
私にとってはこの1年間頑張って考えないようにしていたあの頃の記憶。この人にはその記憶が無くても、そのデータが残っていて、それを見て知っている。日記の中に書いてあったことを『僕』と言って説明してくれるけど、それは『
「わ、私は・・・・・・!」
「うん?」
「わた、しは・・・・・・悠斗さんが・・・・・・す、好きでした・・・・・・。自分が大変な目に遭ったのに、他人のことを心配してるとことか・・・・・・真剣になって絵を描いてるとことか・・・・・・悠斗さんと居た時間は、私にとってはとてもステキで、かけがえのない時間で好きでした・・・・・・!」
「・・・・・・そっか。」
私は、最後の方は勢いに任せてあの手紙の返信をした。大声になってしまい、周りの目が気になって恥ずかしくなったけど、ようやくあの時の思い出に区切りをつけることができた。
「・・・・・・ねぇ、倉田さん。」
「っ・・・・・・!」
「今でも、
「えっ?・・・・・・わ、わから、ないです・・・・・・。」
唐突に告げられた悠斗さんからの質問に、私はただ『分からない』としか答えれなかった。
「良かったら・・・・・・また僕に会いに来てくれる?」
「えっ・・・?」
「ちょっと、あの頃の僕に負けた気がして悔しいから。君には『
「え・・・!?」///
「それに、君を被写体にした絵はとても素敵で素晴らしくなりそうだから。絶対に堕とさせてもらうよ。」
「えぇえええええ!?」
悠斗さんの告白に、私は驚いて固まってしまった。正気を取り戻した後に、『通うけど、考えさせて』と返した。でも、顔が同じ人から迫られたら、おそらく付き合うことになると思う・・・・・・。
それにしても、独占欲強くない・・・?
ここまでが、私と俺の境界。どうやったって俺が知ることのない未来。
でも、私と僕の未来はまだ続いている。世間からしたら私たちははみ出し者。でも、はみ出したとしても、そこから交わって重なることだってできる。僕たちなら、夜を越えてまた次の朝に会うことができる。ここから、足跡を残して行けばいい。
これにて、『Trace / トレース』は完結です。読んでいただきありがとうございました。
久しぶりに書いたけど、あんまり上手く書けてない自信しかないです(笑)。でも、小説一つ分を最後まで書けて満足はしてます。『完結させることができた』と言う部分は(笑)。
そのうち、他の小説も再開させていこうとは考えています。あと、新作も・・・。それまでは忘れる程度にのんびりお待ちいただければと思います。
それでは、また。
最近は原神にハマりまくってま~す!恒常以外の星5は基本無凸縛りです。