Trace / トレース   作:Topaz_YOU

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第八話

 

 

 

 

 

 私は悠斗さんと再会してから余裕がある時には1人だけでも来るようにしてる。もちろん、悠斗さんに会うために・・・・・・。

 

 

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」

「すみませ~ん!」

「はい、ただいま。」

「お会計お願いしま~す!」

「はい、ただいま。」

 

 

でも、悠斗さんは忙しすぎるせいか、なかなか話せずにいた。話せたのは、初めてこの店に来た時だけだった。

 

 

「わりぃ!遅くなった!」

「ごめ~ん、悠斗!大丈夫!?」

「大丈夫だよ。そんなに慌てなくていいから。」

 

 

今の悠斗さんを見ている限り、私といた頃の悠斗さんとはまるで別人だった。・・・・・・いえ、誰に対しても優しいのは変わらない。変わったとしたら、あの時より一層優しくなっていた。一人称を『僕』と言うぐらいに・・・・・・。

 

 しばらくしたら、カウンターの後ろから剣司さんと優里さんがエプロンを付けて出てきた。

 

 

「・・・・・・悠斗、ちょっと休憩してきたら?」

「えっ?いや、僕はまだ──」

「そう言うなって!お嬢さんが待ってるぜ?」

「・・・・・・そう言うなら、お言葉に甘えさせてもらうね。」

「おう!」「任せて♪」

 

 

剣司さんたちに言われて一度お店の裏に行った悠斗さんは、エプロンを取って私のところに来た。

 

 

「ごめんね、今まで話せなくて。」

「い、いえ・・・。皆さん、忙しいんですね・・・・・・?」

「まぁ、そうとも言えるかな?剣司と優里は大学がある。この店は僕の父さんの友人が経営しているんだけど、どうやら体にガタが出始めたらしくて、僕たちがこの店を継ぐことになったんだ。」

「そ、そうなんですね・・・・・・。」

「でも、昔から言ってた『大人になったらやりたいこと』の一つだから特に問題はないよ。『3人で仲良くカフェ兼何かっていう店をやりたい』って。」

 

 

すると悠斗さんは剣司さんから渡されたコーヒーを持って私の向かいの席に座った。

 

 

「っ・・・・・・。」

「・・・・・・正直、僕の記憶だけで考えれば、君は『トラックに引かれそうになった娘』という印象しかない。」

「っ!」

 

 

互いに飲み物を一口飲んで沈黙が生まれたけど、その沈黙を破ったのは悠斗さんだった。悠斗さんはまず私の印象を伝えてきた。やっぱり、私といた頃の記憶はないみたい・・・。

 

 

「でもね、日記を見たんだ。」

「えっ・・・?」

「僕が記憶を失っている間に、その時の僕が書いた日記。記憶喪失だったのは剣司たちに聞いたけど、その間のことはその日記で知ったんだ。君が一生懸命僕の記憶を取り戻そうとしていたこと・・・・・・絵の被写体になってくれたこと・・・・・・僕が君に少なくとも好意を抱いていたことを・・・・・・。」

「そう、なんですね・・・・・・。」

 

 

私にとってはこの1年間頑張って考えないようにしていたあの頃の記憶。この人にはその記憶が無くても、そのデータが残っていて、それを見て知っている。日記の中に書いてあったことを『僕』と言って説明してくれるけど、それは『(悠斗)』であって『(悠斗)』じゃない・・・・・・。

 

 

「わ、私は・・・・・・!」

「うん?」

「わた、しは・・・・・・悠斗さんが・・・・・・す、好きでした・・・・・・。自分が大変な目に遭ったのに、他人のことを心配してるとことか・・・・・・真剣になって絵を描いてるとことか・・・・・・悠斗さんと居た時間は、私にとってはとてもステキで、かけがえのない時間で好きでした・・・・・・!」

「・・・・・・そっか。」

 

 

私は、最後の方は勢いに任せてあの手紙の返信をした。大声になってしまい、周りの目が気になって恥ずかしくなったけど、ようやくあの時の思い出に区切りをつけることができた。

 

 

「・・・・・・ねぇ、倉田さん。」

「っ・・・・・・!」

「今でも、()()のことは好き?」

「えっ?・・・・・・わ、わから、ないです・・・・・・。」

 

 

唐突に告げられた悠斗さんからの質問に、私はただ『分からない』としか答えれなかった。

 

 

「良かったら・・・・・・また僕に会いに来てくれる?」

「えっ・・・?」

「ちょっと、あの頃の僕に負けた気がして悔しいから。君には『(悠斗)の方が良いんだ』ってことを教えたい。」

「え・・・!?」///

「それに、君を被写体にした絵はとても素敵で素晴らしくなりそうだから。絶対に堕とさせてもらうよ。」

「えぇえええええ!?」

 

 

悠斗さんの告白に、私は驚いて固まってしまった。正気を取り戻した後に、『通うけど、考えさせて』と返した。でも、顔が同じ人から迫られたら、おそらく付き合うことになると思う・・・・・・。

 

 それにしても、独占欲強くない・・・?

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 ここまでが、私と俺の境界。どうやったって俺が知ることのない未来。

 

 でも、私と僕の未来はまだ続いている。世間からしたら私たちははみ出し者。でも、はみ出したとしても、そこから交わって重なることだってできる。僕たちなら、夜を越えてまた次の朝に会うことができる。ここから、足跡を残して行けばいい。

 

 

 

 

 




 
 
 これにて、『Trace / トレース』は完結です。読んでいただきありがとうございました。

 久しぶりに書いたけど、あんまり上手く書けてない自信しかないです(笑)。でも、小説一つ分を最後まで書けて満足はしてます。『完結させることができた』と言う部分は(笑)。

 そのうち、他の小説も再開させていこうとは考えています。あと、新作も・・・。それまでは忘れる程度にのんびりお待ちいただければと思います。

 それでは、また。


 最近は原神にハマりまくってま~す!恒常以外の星5は基本無凸縛りです。

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