【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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路銀稼ぎの開始

 首に付けた小さな銅板を、セシルはピンと指で弾いた。まるで首輪のようだと思う。冒険者ギルドに登録した証だ。新入りなので当然最下級を意味する。

 最初は半分無法者のようなワーカーになろうとした。他者を無償で癒やしてはいけないという、ルールが冒険者ギルドにはある。それがカルカのような人間にとって、心苦しいことだろうからだ。

 

 ところが、ワーカーというのは依頼も自分で探したり、依頼者が指名してくれないといけない。ここ、リ・ロベルでの職業はあくまで更に逃げるための腰掛けだ。裏社会での生き方などを学んでいる時間は惜しい。

 

 結局、選択したのは冒険者というわけだ。これでも受けられる依頼のランクが大分低いので多少、節制が必要だろう。

 

 

「それにしても、カル、ケラ、レメか……実に安直だ」

 

 

 登録の際、名前が必要だったが、まさかカルカ・ベサーレスと大書するわけにもいかず、このようなことになった。

 

 

「うるさい! お前だけ本名なのはずるいぞ! 大体、カル――様が遠慮をしなければならないなど、そちらの方がおかしいのだ!」

「まぁ、大丈夫よ。あだ名が付いたようで嬉しいわ、レメ」

「うふっ。ところで、このような話を大通りですれば、名前の意味がありませんよ姉様」

 

 

 セシルが三人に見た目だけ地味な軽い金属の鎧と兜を渡したため、かなり異様な光景だ。完全武装の女性三人を連れたセシルはギルドでかなり奇異に見られた。

 

 

「しかし、良く見つけたな。現状で受けられる最高の任務か」

 

 

 掲示板に貼り付けられた依頼から、シー・ナーガの討伐を見つけてきたのはレメディオスだった。おまけに難易度が書かれていない。普通ならもっと上のランクがやる仕事だろう。

 

 

「ふふん。シー・ナーガは聖王国の海岸にも出没するからな。海沿いの街ならあっても不思議ではない」

「シー・ナーガって強いのか?」

「まぁ個体によってピンキリです。それとセシルさんには分からないかもしれませんが、私達も冒険者に換算すれば最高位のアダマンタイト級です。苦戦するようなことはありませんよ」

「さぁ、それでは海岸に向けて出発しましょう」

 

 

 一行を引っ張っていくのはレメディオスだが、リーダーはそのレメディオスが信奉するカルカになっている。前聖王として考えれば、リーダーシップの面で申し分ない。サブリーダーは聖王国の貴族を恐れさせたケラルトだ。もし手を汚すような場合があれば、彼女がセシルに命じれば良い。

 強さで言えば圧倒的なセシルだが、人の上に立つようにはできていない。隠者気質で事態に関心が薄いからである。

 

 難易度が書かれていないのには理由があった。亜人種狩りが激化した聖王国近辺から流れてきたであろうシー・ナーガだったが、リ・ロベルには姿を表すことが少ない。

 指標となる強さが無かったということだ。それで冒険者達も敬遠して、残ったままになっていた。

 

 リ・ロベルから離れて北を行く。海岸線沿いにシー・ナーガはいるはず。人間の街から離れるぐらいには判断力のある連中のようだ。つまり自分たちの個体数では人間の都市を襲えないと考えている。

 

 

「一方的な殺戮にならなきゃいいけど」

「亜人種にかける情けは無いぞ、訓練兵」

「俺はいつまで訓練を続けなきゃならんのだ」

「カル――様に仕えるには強さ以外にも、品位がなくてはな。お前にはそれが欠けている」

「自分でブーメラン投げてないか?」

「ブーメランとはあの狩猟用具か? 私が下品だとでも言いたいのか?」

「いや、もういい」

 

 

 程なくして海岸の岩場にたむろするシー・ナーガをセシルは見つけた。上半身は人間で、下半身は蛇という分かりやすい姿だ。海に住む種族なためか、尖ったヒレのような部分も見える。

 

 一行は近くの岩場に隠れ、話し合った手順を確認した。

 相手の数は10体ほど。海に逃げられては面倒なので一気にかたをつける作戦だ。

 

 

「「魔法二重化・聖なる光線(ツインマジック・ホーリーレイ)」」

 

 

 カルカとケラルトから光線が走り、シー・ナーガを撃ち貫く。シー・ナーガ達が警戒と威嚇の鳴き声を発する時には既にセシルは後ろに回り込み、レメディオスは前を塞いでいた。

 

 

「バフもスキルも要らないな」

 

 

 言葉と共に、放たれた横薙ぎで五体の首が胴体と泣き別れした。続いてもう一体を唐竹割りにし、周りを見るとレメディオスが二体のシー・ナーガを倒したところだった。

 

 正直なところセシル一人で一撃で全滅させられる集団だった。それでもわざわざ作戦など立てたのはレメディオス達の力と連携を見るためでもあり、久方ぶりにチームプレイを楽しみたかったためである。

 

 終わって見れば、レメディオス達はこの世界の存在から充分自衛できる力を持っていることが分かった。これならセシルが一人で離れなくてはならない時でも、大丈夫だろう。

 

 

「ところで、依頼達成の証はやはり俺がやるのか」

「ええっと、ちょっとお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

 

 カルカの控えめな言葉が決定だった。戦士としてリーダーの言葉には従うべきだろう。

 セシルは嫌な顔をしながらシー・ナーガ達の右耳を切り落としていった。

 

 これが冒険者としての初仕事だった。

 

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