【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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亡国への足音~アインズ

 エ・ランテルの仮初の王宮。街に対しては大きいという程度の市庁舎の執務室で涼やかな声が紡がれた。声の主は純白のドレスに身を包んだ絶世の美女だった。ただし、頭に生えた角と腰のあたりから生えた黒翼がその印象をアンバランスなものにさせている。

 

 

「アインズ様、御身のなさることに間違いなどあるはずもございませんが……冒険者部門に与えた独自裁量権、今回はいささか大きすぎたのではないでしょうか」

 

 

 美しい声は緊張と申し訳無さがブレンドされていた。なぜなら彼女が語りかける相手こそは絶対者。その命令はどんなに理不尽なものでも叶えなければならない。そして、叶えることこそ彼女たちの誇りですらあった。

 しかし、彼女の主は意見の交換を好む。ならば疑問に思ったのなら、口にすべきなのだ。その結果、首が胴から落ちようと是非もなし。最後まで主と共にあれたことに感謝しながら朽ち果てるだろう。

 

 

「む、そのことかアルベド……」

 

 

 対する絶対者。骨でできた体に重たげなローブを着込んだアインズは言葉を濁らせる。そう。この男、ぶっちゃけ何も考えていなかったのである。

 アインズを頭にいただく魔導国は冒険者部門の遠征を細かく把握していた。追跡させるのが、諜報系の高レベルモンスターであってもセシルは気付くだろう。逆に言えば()()()()()気付かない。ならばセシルがいない間の情報だけ抜き去って、断片を組み上げればあっさりと事態は分かる。

 セシルのしていることは暴走に近い。近いというのが厄介なところで、本人が狙ってやっているのか知らないが、逸脱前にブレーキをかけている。

 

 トロールの国での人間種救出行動。咎めるべきか、次に行うまでに警告すべきか。まぁ普通であれば後者であろう。それほどまでにレベル100のプレイヤーというのは貴重だ。

 

 

「無論、このような事態は想定していた……」

「流石はアインズ様。愚かな質問、お許し下さい。そして差し出がましいことではありますが、その叡智の一端を垣間見せていただけないでしょうか?」

 

 

 アインズは思った。やべぇ、どうしよう。

 正直なところ、トロールの国がどうなろうと知ったことではなかった。無論油断して良いわけではないが、ベットしているコインはアインズの宝物ではない。そして、現時点でトロールの国にプレイヤーがいなければ動く必要もない。

 だからこそ冒険者部門は一種のカナリアとして機能している。

 

 セシルもだ。セシルはアインズにとって希少な友人ではあるが、かけがえのないものではない。アインズは優先順位で動く。そこ行くところ、トップは仲間たちの子とも言えるナザリックのNPC達。個人的な友人など二の次だ。それはこの世界にあってはトップクラスの評価なのだが、過去の思い出には勝てない。

 

 世界征服などという、いつの間にか出来上がった大指針。アルベドから落胆されないようにする答え。そこから導き出す答えは……

 

 

「アルベド、私も時にはミスをすると言ったことがあったな?」

「はい……正直なところ、想像もつきませんが……」

「今がまさにその時だ。セシルが人間種可愛さに暴走気味? いやいや、まさかその程度で済んでしまうとは……そう彼の心情を読み損なった。そのために裁量権を大きく持たせたというのに、これでは台無しだ」

「なるほど……そのように企図しておいでだったのですか……不肖の身をお許し下さい」

 

 

 アインズはジルクニフから身につけた王者の仕草で、手でローブを跳ね上げた。そして、アルベドに手で頭を上げることを命じるような仕草をした。

 

 

「セシルがお前やデミウルゴスのように、我が意を汲んでくれる……そう考えたのが間違いだったのだ。ナザリック屈指の頭脳と、何より挺身の覚悟を持ってくれる存在などいるはずがないというのにな」

 

 

 守護者たちがセシルに対して、良い感情を持っていないことはアインズにも分かっている。ナザリックの結束の固さの弊害だ。外から来た存在がアインズに対して、気を遣われる存在になっていること自体が不服なのだろう。

かつてはそれを戒めもしたが……ここであえて落とす!

 そうすることによって守護者たちの機嫌を確保しながら、セシルも擁護していく必要もある。二の次とは言っても、全く無関係の組織や人物よりも大事なことは、天と地ほどの差がある。

 

 

「セシルも悪いとは言い切れない。基本的なところはわきまえているようでもあるし、トロールの国に派遣できる守護者はいないからな」

「ではトロールの国に対して派兵する必要がありますね。陥落させるのはセシルに一言囁くだけで済みますが、維持するのは容易ではない……ああっ! 事前に兵力の準備をしておかなかったこと、お許し下さい!」

「えっ、うん、ああ……アルベドが気に病む必要などどこにもないぞ」

 

 

 アインズとしてはセシルの方針を続けさせてやろうという程度の発言だった。アインズもこの頃は学習している。これは何かズレてしまったときの雰囲気だ。

 なんとなくの予想ではあるが、トロールの国は多分、自分が考えていたよりひどいことになる。というか派兵という言葉が出てきたところから戦の匂いしかしない。

 

 

「トロールの能力値から考えて、中級アンデッドの軍でよろしいとは思いますが……ここで帝国の軍団にアンデッド軍を創設させたことが活きて来るのですね! 流石はアインズ様!」

「ははは! そんなことはないぞ。偶然だ」

 

 

 アインズは正直、帝国の属国化にあたって軍の一部をアンデッドに置換する意味も分かっていなかったのだ。アンデッドのレンタル業のために忌避感を薄めるのかな? と考えた程度である。

 

 

「指揮官は〈伝言(メッセージ)〉を使える者が好ましいですね。ソリュシャンかエントマか……二人とも食人種なのが若干不安ですが……」

「ああ……セシルと衝突する可能性があるな……しかし、両名とも指示されたことは完遂できる能力を持っている。悩みどころだが、見事な人選だ、アルベド」

 

 

 もうこの際、乗れるところまで乗ってしまおうとアインズは考えた。トロール自体にはトブの大森林で出会った個体や武王を見ている。生物としてはもう興味もない……しかし、なんでこんなことになったんだろうかとアインズは、心中でアルベドに丸投げした。

 




はぁ…エントマちゃんかわゆ…
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