ケラルトは考える。こういった考え事は苦手だという自覚を、泥のように溜め込みながらだ。
ギーハという人物の暗殺方法について考えているのだが、彼女はどちらかというと政争の類に生きてきた人間なので、こうした現場レベルの方策には考えが上手くまとまらない。
依頼者のハゴからの情報を元に組み立てるしかない。幸いなことにギーハは首都でも入り口近くに居を構えている。殺すこと自体は簡単だ。
問題はこれを“金鎖”全員で……叶うならセシルを除いた三人でやることだ。
「魔法で手数を増やして……退路の確保を私とカル様でやることになりますね。トロールを一撃で無力化できるかが問題ですね」
考えたところで方策は一つしか無いと分かってはいた。セシルに頼っても同じことだ。やれやれ、これで自分も野蛮人の仲間入りかと思うと……ケラルトは実のところ少し嬉しかったりする。
カストディオ姉妹の裏方としてケラルトは動いてきた。その分、相手も自分も汚れていく。手の汚れを嫌悪してきたわけではないけれど、好きでやってきたわけでもない。
皆で仲良く泥遊びだ。聖王国を抜けてからはセシルに色々と押し付けすぎた。それが最適解だから……だが、今回は違う。理屈ではなく感情だ。精神的にも、実質的にも頼れるのだと証明するためにいざ。
「それで、この方法か。確かに攻撃時は問題無いな。理想的にことが運んだらだけど」
「ええ。だから今回は支援に徹してください。レイナースさんも連れていきませんから、完全に“金鎖”だけですね」
「……分かった。死にそうなら突入するからな。何か合図をくれ」
信用ないなと思いながら、今のケラルトは空にいる。
トロール国の首都が迫る。トロールの国は帝国とは違って、
城に迫る航空戦力を叩き落とすソレは、しかし効果を発揮しない。なぜなら対象が門の近くに留まったからだ。そこで天使は持っていたテントを手放した。
「ハハハッ! 着地成功! 〈剛撃〉!」
飛び出したレメディオスが目標の屋根を叩き壊した。そこまでの身体能力はないカルカとケラルトは無難に、しっかりと足を踏み出した。帰りのために
カルカとケラルトが中に入ったときには、そこは既に修羅場だった。
レメディオスは中の警備兵と既に戦って、二体を斬り伏せていた。一番奥で守られているのがギーハだ。
「姉様! 目的を!」
「
「〈斬撃〉!」
一瞬の隙をついて、レメディオスがギーハの首を切り落とした。そこに天使たちから
目的を見失った兵たちもカルカとケラルトの
反対に目的を達したカルカたちはさっさと撤退を開始する。天使たちがカルカたちを抱えて屋外に出ていく。そして再び
何が目的だったか分からない。それも食糧であるはずの人間種の襲撃にトロールたちは困惑しながら、事態は終わった。
「驚いた……本当に俺の出番なしで終わらせるとはな」
「セシルさんは私たちを甘く見すぎです」
「どうだ? 分かっただろう!
「小さな作戦を立てるのも悪くありませんでしたね。といってもあまり頻繁にはゴメンですが」
仲間たちはセシルに静かな反省を促した。セシルも結果で示されれば文句も言えない。カルカたちはセシルにこそ小さな勝利をしたのであった。
セシルはさっそくハゴのもとを訪れた。今回は前回と違って安全なルートを案内されてのことだった。
「確認が取れた。やってくれたようだな。これで御用商人の道が切り開かれた……あいつの首を持ってこなかったことが不思議だがよ」
「確かに依頼達成の証としては塩漬けが最高だが、そこから足がつくことだってあるだろう。トロールにだって
「そんな馬鹿げた位階の
渡された地図はごわごわとした皮に書かれており、羊皮紙には見えない。
「信用しよう。人間百人だが、目立たず通れる道はあるのか?」
「完全にってのは無いが、約束の護衛が案内する。食糧に紛れさせちまえばバレずに済む可能性も高くなるしな。まぁ道に関しては報酬に入ってなかっただろ?」
「……やられた。あんたは本当に商人なんだな。だが……追ってくるなら地獄を見ると仲間に伝えるぐらいはしたほうが良いと思うがね」
こうして、セシルは情報と解放された人々を手に入れた。
だが、この時味方側が蠢動しているとは、セシルたちも気付いていなかった。
私の力不足で需要も大分下がってしまいました。
新刊が出るまで続かないかもしれません。
申し訳ないです。