【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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黒幕

 追われているという焦燥感とは裏腹に、リ・ロベルでの生活は穏やかに続いた。酒場で飲み食いが毎日できる程度には懐具合に余裕もある。

 そろそろ頃合いと見ていいだろう。河岸を変えるための旅費を目的に仕事をしていたのだから。

 

 

「はっはっはっ! 金級昇進の乾杯だな」

「路銀も貯まってきたし、出発の頃合いかね?」

「うっふっふ。それなんですが社会的信用のために、ミスリル級まで昇ったほうが良くはありませんか? 鑑札の代わりになります」

「でも、ここは聖王国から近すぎるわ」

 

 

 急造の冒険者集団だったが、レメディオスの異常なほど運のいい依頼の引き(・・)によって、一行はトントン拍子にランクを上げていった。

 モンスターや異形種などはセシルとレメディオスの相手にはならない上に、頭を使うようなことがあればケラルトがいる。上がらないほうがおかしいかもしれない。

 

 

「このまま、このように皆でやっていけたら良いですね」

「やれますよ! 訓練兵の言う追手など来ないではないですか!」

「どういうことでしょうね。それを願ってはいましたが、国境を越えた途端に手を出してこなくなるというのは」

「杞憂なら良いが……」

 

 

 正直なところセシルは追手が来ないのではなく、来る意味がないのではないかと思っている。あるいは既に来ており、害が無いと判断されたか。

 こうした場合、最悪を考えるべきだ。そのためセシルは夜も警戒は怠っていない。

 

 酒があまり好きでもないセシルは、腰を上げた。

 

 

「少し酔いを覚ましてくる」

「はっは!この程度の量で!」

「お前は酒も飲ましてはいけないタイプの人間だな!」

 

 

 問題児を置き去りにしてセシルは酒場の外に出て、取り留めもないことを考えながら道を歩いた。冒険者チームとしての名前を考えるべきなのだろうか。あの三人の顔が良いことはバレてるよななど、様々な考えを巡らしている。

 

 だが、人っ子一人いない場所に出た途端、ピタリと歩みを止めた。

 

 

「なるほど、狙いは他の三人より俺だったのか。考えてなかった」

「それはまた、間抜けな話ではありんせん?」

 

 

 突然、舞踏会用のドレスを黒く染めたような格好をした少女が後ろに立っていた。後ろには高位の転移魔法が作り出す黒い穴が広がっている。

 

 

「後ろから殺そうとは思わなかったのか?」

「そのような指示は受けてありんせんから。光栄に思うでありんす。下等な人間の身でありながら我らがナザリックに足を踏み入れることを許可されたのでありんすから」

 

 

 少女の言うナザリックという言葉が記憶の端に引っかかった。どこかで聞いたことがあるような……セシルは長年の隠者生活で思い出すという行為が不得意になっていた。

 

 

「……俺の仲間の命を保証してくれるなら行くよ」

「それはお前の態度次第でありんすね」

 

 

 面倒な相手だ。恐らく自分と似たビルド構成、レベルも同じ最大だろう。ここで本気でぶつかりあえば勝ち負けはともかく、街が更地になりかねない。

 

 

「仕方ないか……分かった。行くよ」

 

 

 このレベルの存在が複数いると思われる場所に行くのは自殺行為に等しかったが、そうしても良いと思うぐらい今の同行者達に情がうつっていた。まさに何でこうなったかねと思いながら、セシルは少女の作った転移門(ゲート)を潜った。

 

 潜った先は光沢のある石材で作られた建造物の中らしかった。目の前に扉があり、そこで自分を追っていた存在と出会うことになるのだろう。

 扉が自然と開かれ、先程の少女と共に部屋に入る。

 

 そこにいたのは美女と骨だった。美女の方は腰から翼が生えているため亜人種なのだろう。

 骨の方は骨といったがスケルトンのような見かけをしているが、雰囲気が違う。着ている服も豪奢なもので、恐らくは死の支配者(オーバーロード)種。

 

 セシルは内心でひどく混乱していた。骨の方、骨の方に凄い見覚えがあるのだ。ずっと昔、この世界に飛ばされる――いや、それより前だ。

 

 

「魔導王、アインズ・ウール・ゴウン陛下の前に伏しなさい。人間」

「――それだ。確か、モモンガ! モモンガじゃないか!」

 

 

 ユグドラシル時代の記憶が蘇ると、堰を切ったように現実のことが思い出される。女が告げた名前、アインズ・ウール・ゴウンは大ギルドの一つとして知られていた。そして、そのプレイスタイルからユグドラシルの暫定ラスボスとまで呼ばれていたのが目の前の死の支配者(オーバーロード)だ。

 

 

「よくも至高の御名を気安く……!」

「ゴホン! やめよ、アルベド! やはりプレイヤーか……しかし、今の私は王でもある。それ相応の態度を取ってもらわねばな」

「あ、はい。こんな感じ……ですか」

 

 

 セシルは素直に片膝をついた。ついでに剣も前に置いて、話し合いのポーズを取る。モモンガは顎をかくんと開いたまま、それを見ていた。

 

 

「ンンっ! 敵対の意思は無いようだな。それと私は今ではアインズ・ウール・ゴウンを名乗っている。モモンガという名は呼ばぬように」

「はぁ……?」

「さて、どこで私の名を知った」

「攻略サイトに載ってました。懐かしいなぁ」

 

 

 そしてセシルは告げる。

 

 

「今回、こちらの世界に飛ばされてきたのは貴方だったんですね」

 

 

 ピクリとアインズ・ウール・ゴウンの体が動いた。

 

 

「ユリ・アルファ達に告げよ。茶の準備をせよとな。さて……茶飲み話とでも行くかね?」

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