【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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計画~最後の救出

 死の軍団とはよく言ったものだ。帝国に置かれた魔導国の軍勢、そしてトロールの軍勢、両方に当てはまる。ただし前者は文字通りの死者の軍団なのに対し、後者は死へ導かれていくソレだ。

 

 

「ただ……まぁ仕方ないんだろうな。相性が悪すぎる」

 

 

 魔法の遠眼鏡で遠くの様子をうかがっていたセシルは呟く。

 死の騎士(デス・ナイト)死の騎兵(デス・キャバリエ)だけなら、トロールの国はそれなりに抵抗できただろう。なにせ彼らには常識破りの再生力がある。トロールは強いというのもまた事実だ。ただの強者と無敵の差があるのでいずれは敗北しただろうが、それなりの時間は稼げたはず。

 それを覆したのが魂喰らい(ソウルイーター)の存在だ。通常は酸や火をもって戦う相手であるトロールを、その特性ごと嘲笑うかのように即死効果を押し付けた。結果としてトロールは何の成果もあげられないまま死んでいく。その暴威は凄まじく既にトロールの第二軍までもが全滅していた。

 

 明日には帝国の()()()()軍団も到着する。今は占領した土地を抑えておくために、アンデッド軍は侵攻を緩めているわずかな期間だ。

 

 

「お師匠、トロールに動きがありましたわ」

「どうやらトロールの王は馬鹿ではなかったようだが……結果的に馬鹿をしたな」

 

 

 レメディオスとレイナースという珍しい組み合わせに、報告を受ける。彼女たちが見張っていたのはトロールの首都だ。アンデッド軍団が攻めるほうが早いかと思ったが、意外に運が良かった。

 この二人は戦闘に関しては頭が回る。レメディオスなぞ日頃との落差に、セシルを少し動揺させるほどだ。

 

 

「そうか。最後の仕事もできそうだな。カルたちと合流して、作戦を決めようか」

 

 

 仮のキャンプ地に戻ってきたセシルたちをカルカたちが出迎える。既に準備は整えられ、あとは話し合うだけとなっている。二人の組合長は顔が強張っている。最後の戦いでは全員に役割があるのだ。最後……つまり首都に残された人間種(食糧)の救出だ。

 

 

「さてレメ、レイナースさん。まずは目にしたことをお話してください」

「カル様。私のことはどうか呼び捨てでお願いしますわ……トロールの首都から大出陣の様子が見受けられました。これまでの行動からトロールは軍勢を二千で分ける習慣があるようですが……見受けられた行軍は十にも分かれていました。つまり……総勢二万の動員ですわ」

 

 

 二万という数を聞いて、一同からほぅ、という音が口から漏れた。帝国なら軍団二つの数だが、個体数がトロールはそれほど多くない。数として見ても単純に多いという印象を与えてくる。

 

 

「うぅむ。亜人種の王だが、果断と言ってよかろうな。大した割り切りの良さだ」

「あら、姉様が亜人を褒めるなんて珍しいですね」

「確かに業腹だが、認めるところは認めねば、勝てるものも勝てなくなるからな」

 

 

 帝国のアンデッド軍団は数としては三百程度。軍団を一つずつぶつけても逐次投入とは馬鹿にされない数だが、トロールの王は敗北を真摯に受け止められるのだろう。一気に敵をすり潰すつもりで十倍の数を投じたのだ。

 ……根本的に質が違いすぎるということはあるが、それは知っている身だからこそ言えることだ。トロール王の判断は間違っていない。もっとも大軍で小勢にどうやって攻撃を加えるのか? そこには興味がある。

 

 

「しかし、王自らの姿は軍勢に確認できたのかね」

「トロールの王がどのような格好をしているのかは分かりかねますけれど、いるようには見受けられませんでしたわね」

「そうなると、王族と近衛ぐらいは残っていると見るべきだな」

 

 

 アインザックとラケシルは思案顔になる。こっそりと忍んで終わらせることができなくなったのだから、当然だ。トロールの種族性からすると、王族が弱いということはないだろう。もちろん近衛もだ。

 

 

「戦闘班がバラけてしまいますね。セシルさん、あのホクトセイクンとかいう召喚術は救出班に回せますか?」

「それしかないか……代わりにラケシル組合長と俺が組んで、王族を巻き込んで大暴れする」

 

 

 トロールのトドメに使う酸や炎を補う予定だったホクトセイクンを、ラケシルと入れ替える。土壇場での変更だが、これはこれで悪くない。救出班の戦力が大きく上がるためだ。

 

 

「その代わり、レメとレイナースの負担が大きくなるな……ウォートロールが出てきたら多少余裕があっても相手にしないよう」

「むしろ……もっと無理やりな方法の方が良いんじゃないでしょうか」

 

 

 カルカが困ったような顔をしながら、提案する。方向性が違うとはいえ、彼女も知恵者だ。その意見は聞くに値する。

 

 

「ええと……まず、我々はトロールに対して恨みがあるわけでもなければ、現在の戦争に加担する必要もありません。だからセシルさんは“好きにしろ”なんて言われてるわけですし」

 

 

 それは確かにその通り。少なくともトロール王の首をとって、喜ぶような趣味は一行にはない。だが、王族たちとの交戦を前提に、突撃・撹乱・救出・撤退と作戦を立てている。

 

 

「だから、別に戦闘班と救出班に分けなくても……全員で救出して、全員で護衛すればバランスを考慮する必要もなくなります」

「確かにソレも有りだな。問題は襲撃した際、人質を取られたりする場合がある。速度がより求められてしまうのが難点だが」

 

 

 カルカの言う通りに運ぶには、既に人間の救出事件が知れ渡っていることが壁となる。ついでに城内の構造を知り尽くしている必要もある。

 人質ごと攻撃して良いのならそれが最良ではあるだろう。

 

 

「駄目ですか……」

「いや、悪くはないんだ。あと一つ……そうか」

 

 

 カルカの案なら確かに退路の確保のために、レメディオスとレイナースが兵士たちを相手にする必要はなくなる。そして、王の地位が高いならば。

 

 

「目には目を歯には歯をっていう言葉知っているか? こういうのはどうだろう……」

「ああ、なんとなくやりたいことが分かりました。確かにそれなら姉様とレイナースさんもこちらに来れますね」

 

 

 汚れ仕事を任せないようにしてきたが、元の作戦でもセシルは玉座へと近づく予定だったのだ。むしろ慈悲かもしれないとケラルトは思った。それにこの男、実はこういうことが好きでやってるのではないかと、今更思った。 




明けましておめでとうございます。
良ければ本年もよろしくお願いします。
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