【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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帰還~帝国へ

 セシルたちの活動により、トロール軍は一層の混乱を味わうだろう。だが、人間種の確保はトロール王殺しに比べて大勢に関わりない。この活動を持って、魔導国からの冒険者派遣は終わりを迎えることとなる。

 

 

「まぁやれることはやったか。トロールの国は滅びて、魔導国はこのあたりまで影響力を持つようになる」

「ええ。全てを救うことはできませんでしたが……」

 

 

 カルカは眉を困ったようにひそめながら、相槌を打つ。彼女のことだ。残ることを選んだ人間たちを憐れんでいるのか、ひょっとするとトロールのことすら案じているのかもしれない。

 仕方ないことだ。全員がセシルのようなレベルを持つわけではない。そのセシルですら完全に自由とはいきかねるのが現状である。いや、あのアインズですら何かに縛られているのかもしれない。

 結局どこまでいっても、その場で最善を目指すしかないのだ。

 

 

「カル。一旦、帝国に帰ろう。いや、あそこが帰る場所というわけではないが……少なくとも俺たちには休息が必要だ。クーデリカとウレイリカの様子も確かめないといけないしな」

「はい。セシルさん」

 

 

 ようやく微笑んでくれたカルカと共に仲間たちのもとへと足を運ぶ。そこでは騒がしく拠点の撤去が行われている。ともあれ全員無事だった。そのことを喜ぼう。そう、この地での戦争にもう我々は関わらないのだから。

 

 

 一方、エントマは将軍ステファノが死なないようにしながら、セシルたちが魔導国の許可の範疇に収まったことをナザリックに報告していた。偉大な主人はそれを予測していたようで、敬意が心に広がる。

 眼前には敵の死骸で埋め尽くされた平野が広がっていた。それらは外傷もなく死んでいるものがほとんど、たまに焼けた肉があるだけだ。

 

 

「それにしてもぉ、トロールのおかげで人のお肉も手に入って良かったぁ」

「ははっ、そうですな」

 

 

 エントマは人間の足を口に運んでいた。それはセシルたちの救出を拒んだ人間のものだった。流石は人食いの国だけあって、程よく締まった肉はエントマの口にもあった。

 それを何の感慨もなく見ている自分は既に壊れているのだろうな。そう思いながらステファノは軍を進める。暴力に誇りを持つトロールたちですら、ここ最近は当たりが弱くなっていた。決死の攻撃が何の効果ももたらさないというのは、心をへし折る。自分の死で仲間が進めるならば良いが、それすら望めないのだ。

 だがそんな心情に対する共感などステファノにはもう必要ない。この遠征でステファノはアンデッド軍を効果的に動かす恐るべき……慈悲なき指揮官と化していた。

 

 

魂喰らい(ソウルイーター)を横一列に並べろ。死の騎士(デス・ナイト)はその前方で盾を構え、死の騎兵(デス・キャバリエ)は右翼と左翼に分かれて待機」

 

 

 死の騎士(デス・ナイト)の巨体と盾で魂喰らい(ソウルイーター)を隠す。後は敵が突っ込んできたところを魂喰らい(ソウルイーター)の〈魂喰らい〉で即死させる。何らかの理由でその運命を避けた敵は、死の騎兵(デス・キャバリエ)の挟み撃ちでおしまいだ。

 時間はかかるだろうが、ここにトロールの国は終わりを迎える。

 

 

 そんな歴史を背に、セシルたち一行は帝国へと戻って来た。帝国陣地にはトロールの国から出された人々がいて、彼らはとりあえず人足として生活しているらしい。

 バルテルス指揮官から預けていた粗末な荷馬車を返してもらい、馬との再会を喜んだ。もっともちゃんとした馬丁のいるここのほうが馬たちにとっては良いかもしれないが。

 

 

「ミノタウロスの国までの探索にはならなかったですね。それにしてもこれでようやく真っ当な日々に戻れますわ」

「レイナースは冒険者にあまり向いていないか?」

「どうでしょう。騎士であったときは、きれいな場所にいることが多かったですからね。確かにずっと遠征のような日々には慣れていないかもしれませんわ」

 

 

 そのあたりカルカたちから文句がでたことはない。しかし、考えてみれば女性が野に伏せ、土に塗れるということは中々に大変かもしれない。もっとも清潔(クリーン)の魔法がある以上、一時的な気分の問題だが。

 

 

「レイナースの修行はこれからだな……まずはレメに勝てることを目標にしてみるのはどうだ?」

「ほほう……私にか。良いぞ、いつでも挑戦は受けてやる」

「いえ、レメさんってストロノーフさんぐらい強いですわよ!?」

「そのストロノーフさんがどれだけ強いか、分からんが大丈夫だろう」

 

 

 目標があるのは良いことだ。レメディオスとレイナースの差は丁度壁一枚ぐらいだろう。皮一枚ではないので壊すのに時間はかかるが、“今の”レメディオスならレイナースも時間をかければ追いつけるだろう。

 この世界の人間にとって、ユグドラシル時代のような適正狩場などはない。レメディオスたちを見る限り、成長はするようだがどこで経験値が入っているのか……イマイチ法則性が分からない。任務などが文字通りクエストとなって経験値になっているのかも知れない。

 ただ、救いなのは逆にユグドラシル時代になかった要素として、素振りや組み手でも成長の糧になるのは幸運だったと言える。木人や藁人形相手の戦闘トレーニングはあったが、主にプレイヤースキルを上げるためのものだ。

 

 

「組合長たちも疲れたでしょう」

「軽い気持ちで東への遠征を計画したんだが、復帰には少しばかり荷が重かったよ」

「まったく。だが、必須の魔法があったから完全な足手まといにならずに安心したよ……特にトロールの城に向かった後は調子が良いくらいだ」

「……なるほど」

 

 

 セシルは一つ頷いた。

 そう言えばトロールの近衛や、トロール王のとどめはラケシルに任せていた。ダメージ配分やファーストアタックの権利は不明だが、ラケシルのレベルが上っていてもおかしくはない。

 

 

「いずれにせよ、しばらくは切った張ったはゴメンですね。野宿は好きですが……」

「そうですねー。報告書作りなどを皆さんが忘れていなければ良いのですが」

 

 

 うっふっふと、それらを任されがちなケラルトが笑った。カルカとレイナースは苦笑していたが、レメディオスは完全に目をそらしていた。

 馬車は向かう。懐かしい人間の街へ。




これからはもっと自由に書いていこうかな…
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