【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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武技への挑戦~セシル

 セシルは思考する。プレイヤーが武技を使えるようになるにはどうしたら良いか? 恐らく転移してきたプレイヤーの中でも真剣に試行錯誤した者はいないだろう。なぜならプレイヤーには強力なスキルが存在している。取得した職業レベルに応じて習得できる特殊技術は、正直なところ武技と変わることがない。高レベルプレイヤーの転移なら今更武技を習得する必要すらないだろう。

 そこに今回、取り組んだのがアインズという存在だ。アインズはこの世界本来の魔法を習得したいと考えている。その派生として武技の習得という挑戦も行われるようになったのだ。

 

 

「とは言ってもな……」

「〈剛撃〉!」

「くっ……! 〈重要塞〉!」

 

 

 現在、セシルたちは帝国闘技場に付属している訓練場を借りて試合を行っている。古くなった鎧をつけた藁人形も周囲に用意されているが、誰もそこで訓練をしていない。

 いかにも戦闘を生業にしているという格好の人々は、今行われているレメディオスとレイナースの試合に目が釘付けになっている。二人はプレイヤーが絡んでいない人間の中では上位の実力者だ。単なる観戦ではなく、見稽古を兼ねているのだろう。

 かくいうセシル自身も二人の武技を観察しているのだが……正攻法で努力するのは早々に諦めた。〈斬撃〉や〈剛撃〉は力を込めた一撃にしか見えないし、〈要塞〉なども防御の構えを取っているようにしか見えない。だが、不思議なことにキチンと効果は出ているらしい。

 普通なら習得に一年かかるといっても、先人の模倣でなんとかなるならば、セシルだって〈斬撃〉や〈貫通〉ぐらいは覚えていないとおかしい。習得できるとしても明らかにやり方は別の角度から考えるべきだ。

 

 

「……お見事ですわ」

「お前も、思っていた以上にやるな!」

 

 

 レイナースの喉元に剣が突きつけられ、試合は終了した。それと同時に観客から歓声があがる。興行的には最高ランクの試合が無料で見られたのだ。それに加えて、ここにいるのは戦いを知るもので、()()()()()()()のだ。その興奮は理解できる。

 

 

「どう考えても俺が師匠というより、レメが師匠だな」

「なんだ、妬いているのか?」

「少しな」

 

 

 セシルが相手をすると、どうしても手加減した形になってしまう。だからといって少し力を込めれば武器ごと粉砕してしまう。そのあたりの調整ができるようになるまで、レイナースはレベルが一回り高いレメディオスに教わる方が効率が良い。レイナースは槍を使うので、リーチに優れていて一蹴されるようなこともない。

 

 

「さて、今日の残りの修行は任せたぞ。レメ師匠」

「ん? 何かあるのか?」

「北市場にあるマジックアイテムの露店巡りだ。というか、朝の予定確認で話したろうに」

 

 

 口には出さなかったが、装備が大幅に低質化したレイナースのマジックアイテムを探すためだ。北市場では、引退した冒険者の所持品や、装備更新で不要になったアイテムが売りに出されている。後は掘り出し物があればいいなという儚い希望も持っている。

 

 

「では行ってくる。あまり厳しくするなよ」

「そんなこと、するわけ無いだろう。これでも昔は一団の長だったんだぞ」

「だから心配なんだが……」

 

 

 まぁいいや、とセシルは切り替えて闘技場を出ていく。仮に大怪我をしたとしても自分の魔法で治せる……自分の魔法? とそこで少し引っかかりを覚えたが、外で待っていたケラルトと合流して思考は中断された。

 

 

「少し待たせたか?」

「いえ、私が少し早かったかもしれません。これでも魔法詠唱者(マジックキャスター)ですから、マジックアイテムに対する興味はあります」

「そうか。まぁ予算はあるから、何か買うのもいいだろう」

 

 

 皮肉なことだが……ほぼ常に何らかの任務を受けているアダマンタイト級冒険者“金鎖”に払われている報酬は、この世界の通貨に限って言えばアインズのポケットマネーより多い。

 新しい冒険者の形を標榜する魔導国が、冒険者に対する報酬で、旧制度に負けるわけにはいかないのだ。

 

 北市場では厳つい店主たちが数点の道具を並べて腕組みをしていた。流石は帝都でもっとも治安が良いとされているだけある。だが、かつての様子を知る者がいればおかしいと思っただろう。品数が昔より遥かに多いのだ。

 帝国はアンデッド軍団を作ってから、街道に出てくるようなモンスターの討伐速度が加速した。つまり、騎士が多い帝国においてただでさえ低かった冒険者の需要が、更に減ったのだ。

 今では冒険者を引退して、一生を過ごす金銭のために装備一式を店頭に出している者さえいる状況だ。そうでない者はカルサナス都市国家連合に移籍するなどしている。

 

 

「何を目当てに選びましょうか」

「自分が気に入った物以外では、指輪とかの装身具だな。槍と鎧は……多分、後回しになるだろう」

「分かりました。効果は?」

「鈍足や麻痺を防ぐ物が良いな。俺とケラの魔法で死亡すら何とかできるが、弱体化は避けられんからな。そんな事態を避けることができるように妨害効果を防ぎたい」

「それなら有りそうですね。攻撃向けの装身具は後回しにしましょう」

 

 

 一つ一つ丁寧に見て回った結果、目的の物は揃った。揃うことまではいかないと二人は考えていたので嬉しい誤算だった。

 鈍足妨害と平地での速さを向上させる馬の首飾り(ネックレスオブホース)、麻痺と束縛に対する耐性を与える柔らかい指輪(ソフト・リング)、盲目を無効化する背中の目(アイズ・オン・ザ・バック)というマント。

 相応の金額だったが、必要経費だと思うことにする。しかし、これだけの物を装備することになる銅級(カッパー)冒険者とは贅沢な話である。

 

 

「それからこれは、ケラに」

「これは……」

 

 

 くすんだ銀の指輪がケラルトに手渡された。警戒の指輪(リング・オブ・コーション)。敵が近づいてきた時に光るとされている指輪だ。

 

 

「まったく……女性に指輪を送る意味ぐらい、少しは考えて欲しいものです」

「ん? 気に入らなかったか」

「そうは言ってません!」

 

 

 そう言いつつもどの指にはめるべきか、迷うケラルトだった。

 

 

「それで? ご自分は? 武技に関わるアイテムとか買わないんですか?」

「そもそも使えんしな……」

「まぁ【戦士の魔法】ですものね。あなたの場合使えないぐらいで丁度良い気がします」

「【戦士の魔法】……」

 

 

 途端に思考が繋がった。それはかつてアインズが抱いたものと同じ疑問。なぜ、この世界の住人が位階魔法を使えるのか? そして、なぜ自分たちも使えるままなのか。

 

 

「なぁ……ケラ。どうやって魔法を使えるようになった?」

「どうと言われましても……同じですよ。【世界へ接続】して、それからは地道な努力です」

「【世界へ接続】……」

 

 

 セシルにそこまでの知識は無かったが、位階魔法は八欲王が広めたものだ。それでもこの世界には本来の魔法が存在していることは知っている。位階魔法は後付らしいと。

 仮にその【世界】とやらがユグドラシルと関係があるとすれば? この世界の住人はユグドラシルに関する何かへと【接続】する。

 

 その点で様々な疑問が生まれるがそれはこの際、無視だ。セシルに思いつきが生まれる。

 つまり……この世界特有の武技を使えるようになるには、プレイヤーが【この世界】に接続すれば良いのではないか?




思い切って独自解釈だ!

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