【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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モテ要素が重要と聞いたので


明日はきっと良い日

 ナザリックから出たセシルは、意外と時間が経っていることに気付いた。月の位置で判断するしか無いが、皆もう宿に戻ったであろう。

 そう思い、足を元の酒場近くに向けると、やかましい鎧の音が聞こえた。次にその音とともにカルカの顔が見えた。カルカは驚いた顔をした後、胸に体当たりをするように飛び込んできた。

 

 

「セシルさん! 良かったです! てっきりいなくなってしまったかと」

「カル様! 見つけましたか……おい、訓練兵どういうつもりだ。一人でほっつき歩いて」

「どういうつもりかって、あー、途中で用事ができただけだが」

 

 

 最後にケラルトも加わり、非難轟々の大合唱だ。セシルは最初、まったく訳が分からなかったが、中座した後に一向に戻ってこないので随分と心配をかけたらしい。

 

 

「子供じゃないんだ。ちゃんと帰ってくるさ」

「そうではなく……」

「うっふっふ。この自覚の無さ。首に鎖をかけましょうか」

 

 

 子供じゃないと言ったが、彼女達も子供ではない。わざわざ走り回って探す必要は無いと思うのだが……そこは蘇生したことが関係しているのかとセシルは考えた。彼女達にとって自分は生の象徴になっているのではないかとセシルは推測した。

 

 

「参ったな……どうすれば許してくれる?」

「もう勝手にどこへも行かないでください……行き先をちゃんと告げて」

「親子かよ」

 

 

 ケラルトが涙目のカルカの肩に手を置いて慰めているのを見ると、なんとなく気まずくなる。そこに腕を組んで横目でじろっと睨んでくるレメディオスに気がついた。

 

 

「それで? それほど大切な用事とやらは何だったんだ?」

「ああ……追手と出くわしたんだが、毎回殺すのも芸が無いんでな。隠れて話を聞いていたんだが、北を調べて撤収すると言っていた」

「何だと? それは本当か?」

「本当、本当。だから東のエ・レエブルに向かうのはどうかと思ってな。王都だと流石にカルが目立つだろう?」

 

 

 口からでまかせがべらべらと出てくることにセシルは驚いていた。先のアインズとの会話で舌が回るようになったのだろうか?

 

 

「エ・レエブルですか……六大貴族の一人、レエブン侯の領地ですね。治安は良いはず。近くに大森林もありますし、いざという時の逃げ場所にもなるでしょう。悪くないかと」

 

 

 ケラルトの発言に頷きつつも、へぇそうなんだと内心で思いながらセシルは鉄面皮を貫いた。セシルとしては魔導王の出した条件に従って発言しただけなので、実は知識が無い。地図で見た立地ぐらいだ。

 どちらかと言えば大森林に住んだ方が隠者的には好みだが、約束なので仕方がない。

 

 

「じゃあ、明日にも出発しましょう。追手の帰り道に出くわしたなんて洒落にもなりません。願わくばそこが安住の地であるように……」

 

 

 リーダーのカルカが話を締めて、お開きとなった。宿屋に戻る途中、セシルはレメディオスに今回のことを散々に当てこすられた。余程気に入らなかったらしいな、とのんびり考えただけだったが。

 

 

 カルカは宿屋に戻ると、いつものように鏡の前に置かれた椅子に座る。鼻、口、と順に調べていく。朝と夜の日課は未だ治っておらず、悪夢を見ることもある。

 

 

「私、どうしてあんなことを……」

 

 

 セシルがいなくなった時の焦燥感。不安に駆られ、街を歩き回った時の感情は迷子になった子供のようだった。そして、見つかった時の安堵感から飛びつくようにしてしまった。

 思い出すと顔から火が出るようだった。だが、決して悪い気分ではなかった。

 

 この生命も顔もセシルが取り戻してくれたものだ。蘇生を拒否する人もいると聞くが、あのような死に方をしたカルカにとってはそうではなかった。

 

 

「私という人間を、かぁ」

 

 

 あの奇妙に浮き世離れした戦士は、ひょっとすると自分の顔が潰れていても気にしないのでは無いのだろうか。彼女は糸のついていない人間を見つけたのかもしれなかった。

 

 

 レメディオスは苛立っていた。部屋の荷物に蹴りをくれて、どっかとベッドに座り込む。カルカとは違い、レメディオスは自分が苛立っている理由を良く分かっていなかった。

 とにもかくにもあの男だ。自分の唯一の部下の顔を思い出すと、また苛立ちが返ってきた。

 あれは自分の立場を分かっているのだろうか? 徴兵した唯一の部下だ。それが好き勝手に動き回っていて、自分には謝罪の一言もない。

 この集団は最も高貴なカルカを筆頭にしたチームなのだ。そして、あの男は自分の部下である。つまり一番の下っ端だ。何か事が起これば自分に意見を具申するべきなのだ。

 

 しかし、癪なことにやつは自分より戦力的に強い。一度立場を分からせる機会が来ないだろうかと、レメディオスはほぞをかむ思いだった。

 

 

 セシルはここに来て、唯一の友人を得たのかもしれない。伝言(メッセージ)を連発する存在を友人と呼ぶのならだ。

 

 

(部下が進めている王国に対する計画がよくわからないんだよな)

(それは部外者の俺に言って良いことなのか?)

(いや、もう勝手に進んでるし)

(よく分からんが、被害とか少ないほうが良いんじゃないか)

(修正案とか無理だ……どこを修正すればいいのかが、まず分からない)

(まぁ穏便にな。巻き込まれてはかなわない。というか伝言(メッセージ)はこっちに指示する時ぐらいにしたらどうなんだ)

(いや、それは……あ、効果時間が切れる。また明日)

 

 

 明日も? とセシルは首を振った。

 

 

 

 

 

 

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