【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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爆弾発言~アインズ

 現れた骸骨は言わずもがなアインズ・ウール・ゴウンであり、今日はいつもの黒いローブ姿ではなく白を基調とした輝かしいものだ。

 供回りの少女はアウラ・ベラ・フィオーラという闇妖精(ダークエルフ)である。階層守護者の中では比較的常識があるので、説得を重視したようにも思えた。

 

 来て悪い二人では無いものの、何をしにきたのかという点について議場内の全ての者が考える。“金鎖”も考える。そして、セシルは答えを既に出していた。絶対に何も考えていないなと。

 

 

「フフフ、静かにせよ、とは言えないな。ご苦労、ソリュシャン。他の者も楽にしてくれ。さて、魔導国の席はここかな?」

「は。しかし、御身を他の者と同じ椅子には……」

「私は気にしないが……ならばこうしよう。〈上位道具創造(クリエイト・グレーター・アイテム)〉!」

 

 

 魔法の発動と同時に黒曜石の玉座が出現する。装飾も施されており、皆が対等であるという画一的な石の椅子はその意味を失う。今や議長席などよりコチラのほうが明らかに()()であった。

 元の椅子にはアウラが腰掛け、作り出された玉座にはアインズが座る。自然と行われた一幕に議場の面々は声も出ない。

 一国の君主が突然現れ、まるで当然のような顔をして議論に参加する姿勢を見せているのだから当然だ。だが、確かにいかなる条件にも同意する権限を持った人物でもある。

 

 しかし、セシルの予想に反してアインズは何も考えていないわけでもなかった。ここ最近、アインズは机にかじりついていた。帝国の扱いに関してはアルベドが対応してくれるので問題ない。問題は属国化を目指す王国との折衝と、トロールの国の整備だ。

 全くやったことのない分野の処理にアインズのストレスはじわじわと溜まった。そこに来て都市国家連合のまとめ役がいないという話になる。これ幸いと外出することにしたのだ。

 仕事を放り投げて逃げてきたようにも感じられるが、アインズとて行った先でも仕事があると理解している。ただそちらの方が自分向きだと考えているのだ。

 

 

「さてさて、状況は見たまま。我々の出した条件を呑むか呑まないか。あるいはその先も見据えた者たちで争いが生じている。ふむ。実にありきたりな展開だ」

「仰られている通りです。流石はアインズ様」

 

 

 膝をついた姿勢から立ち上がったソリュシャンが頷く。

 セシルたちも膝をついていたが、立ち上がる。レメディオスは顔を真っ赤にして、屈辱に耐えていた。どうやら聖王国以来の確執を飲み込めるぐらいには精神的成長を遂げているらしい。

 

 アインズはこの展開を予想していた。兎にも角にも統一されていたバハルス帝国とは違うのだ。各都市が足並みを揃えるはずなどありはしない。事実として連合という形に持っていくのにも前回の【大議論】が必要だったのだから。

 アインズは考えた。ならば何も……足並みを揃えさせる必要など無いのではないか?

 

 

「私はアインズ・ウール・ゴウン魔導王である。突然だが、議論に参加させてもらおう。なに、敵対的な行為など取りはしない。ただ条約の締結に使者では権限が不足していたのでな。急遽参加を決めたのだよ。フフフ……なに、国には頼りになる部下が揃っているので気遣いは不要だよ」

 

 

 この言葉を議員たちは今、軍をもって攻めても無意味だと言われていると解釈した。カルサナス都市国家連合との軍事力差を思えば当然だ。そもそも議論自体それが根底にある。

 

 

「俺たちの出番はもう無さそうだな。【大議論】に口出しする気はもともと無かったわけだし」

「出るなら最初から出てきて欲しかったものだな」

 

 

 もう物は飛んでこない。そんなことをすれば、どうなるか。骸骨の眼窩が赤く光っている。その明かりは死を表している。

 実際のところアインズにはそんな気が無い事はセシルも知っている。だが、闇妖精(ダークエルフ)の少女の怒りを買ってしまう以上、結果は同じだ。

 

 議場は静かなまま、何の動きも見せなくなってしまっている。誰もが佇んで超越者の注目を避けていた。

 

 

「アインズ様ー。あいつら動かなくなっちゃいましたよ」

「ふむ、場をしらけさせてしまったかな? ではお詫びに話題を提供しよう。こちらが出した交流の条件……あるいはそれ以外の提案。より早く締結したものを優遇しよう」

 

 

 は?

 

 

 場が止まったどころではない。セシルですら顔を覆いたくなる提案だ。カルサナス都市国家連合は……その一言で崩壊した。

 それは愚者の行い。ただし、その愚者が比類なき力を持っていた場合、話は逆転して、とんでもない威力の爆発物と化す。

 

 

「アインズ様。大リスタランは既に賛意を示していましたが、どう致しましょうか」

「おお、そうか」

 

 

 アインズはどこからか様子を見ていたのだろう。ラ・ヴァーリエの方を向いて一言。

 

 

()()()()()。君たちの都市とは条約もあらためて、できる限り対等の国交を築くとしよう。そのあたりの条件は書面でやり取りをしようではないか」

「「「「――!?」」」」

 

 

 あまりにもあっさりと下された判決……すなわち破裂した爆弾。一つの都市だけが都市の形を保ったまま、友好都市として迎え入れられた。ならば次はどれだけ優遇されて、一番遅れた都市はどうなるのか?

 そしてそれですら最悪の未来には程遠い。どこかの都市が一番に属国化を願い出た瞬間、全ては終わる。カルサナス都市国家連合という形はそれで()()()()()()()()

 もたらされるのは数百年の退行。大国から地方の小国家としての分裂。都市という形に慣れてしまった今、どれだけの都市が自国を制御できるか。それすら分からない。

 

 アインズが来訪するまでの活気はどこに行ったのか。【大議論】は他の都市を牽制しながら、静かに進む。もはやただの敗戦処理に近い。どこが貧乏くじを引くか、消極的に押し付け合う。

 なに、属国を選ばなければ国の形は保てる。せめて都市間の戦争は避けるために話し合いは続く。

 

 この日、カルサナス都市国家連合は魔導国の望む形での関係を結ぶことになるだろう。内側に火種を植え付けられて……

 

 

 




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