【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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騎馬王~一矢

 【大議論】は一応まだ続いている。だが、カルサナス都市国家連合を構成する十二都市の内、五つが属国化を選び、七が条約の締結の方向へと動いている。

 ここで問題となるのは属国化を希望する国が出てきたところである。当たり前の話だが都市国家連合は十二の都市が連携することによって、大国の形を成してきた。それが崩れれば問題は噴出する。これもその一つだ。

 

 

「騎馬王?」

「はい。我ら東ガイツは連合の東端に存在するのですが、さらに東には草原が広がり、そこを騎馬王という存在が治めています。この勢力は現状でも敵対関係にあります。我々が魔導王陛下の傘下に加わるに当たって、これが邪魔な存在となります」

「ほう……つまりは属国となる報酬として外敵を排除することを望むのか」

「あくまで、お願いしに参ったというところでして……ただ、我ら単独では対抗するのに無理が生じますから」

 

 

 まぁ納得の行く話ではあった。こうして真っ先に会いに来たというのは、アインズの優遇措置に合致するものである。察するに東に位置するというだけで、東ガイツは騎馬王との戦において最前線を張らされて来たのだろう。分裂した国に残るより、敵が排除された状態の方が利益が大きいというわけだ。

 アインズの眼窩が赤く輝く。

 

 

「魔導国を利用しようというわけだ。ふふふ……嫌いではないぞ、その姿勢。いや、そうでなくてはならない」

「では……」

「我が国の者たちが、文字通りの万夫不当であることを知ってもらういい機会となるだろう」

 

 

 アインズの内心をセシルは推察する。彼は交換条件があることをむしろ喜んでいるだろう。小市民的な感覚からすると、無料でひれ伏すという方が信じられない。それに加えて、騎馬王とやらの支配地域まで手に入るかもしれないという欲もある。

 

 

「セシル、アウラ、行ってくれるな?」

「もっちろんです! アインズ様の威光を見せつけてやりますよ!」

「……了解しました」

 

 

 “金鎖”とアウラという現有戦力だけで、騎馬王という存在を下す。実に単純な計算だが、東ガイツの使者は目をみはってアインズたちの正気を疑っている。

 

 

「色々と手間だからな。ソリュシャンは手元に残す。ああ、その騎馬王とやらが従順なようなら……いや、不和が残るだけか。そいつがマジックアイテムを持っているようなら、取っておいてくれ」

 

 

 油断しないのがアインズの基本方針ではあるが、都市国家連合を一つも落とせていないところから、ある程度の推察はできる。典型的な“この世界の実力者”だろう。

 だからこそ、アインズも安心して部下を送り出すことができる。こうしてアウラとセシルたちは東の草原に向かった。アインズが行ったことのある場所なら〈上位転移(グレーター・テレポーテーション)〉で安全に送り出すこともできたのだが、今回は目印になるものがない。

 

 アウラが呼び出した魔獣に乗って、一行は凄まじい速度で移動を開始した。背に乗せてくれてはいるが、従う気はないようで、レメディオスたちは単に運ばれているだけの状態だ。

 

 

「ところで……以前、階層守護者たちから立場を認められたが、今の俺は冒険者部門の一所属員でもある。どっちの立場で接したら良いんだ?」

「どっちでも良いじゃん、そんなこと。結局は最後にアインズ様のお役に立てれば良いんだから」

「あー、面倒だから真面目にやるとします」

 

 

 玉虫色の返事を投げ返したセシルは、自分を背にしている魔獣の姿を見た。犬のような姿をしているが、そのレベルは七十台はあった覚えがある。

 他の仲間が乗る、というか載せられている魔獣神獣の類も同格だった記憶がうっすらと残っていた。

 これでは人質を取られているようなものである。セシルが相手をした場合は問題ないが、斬り伏せるまでに“金鎖”の面々に一撃入れるぐらいの時間は取られるはず。

 やはり真面目にやったほうが良い。

 

 

「騎馬王か……長年敵対していたということは、それなりの手下がいるのかな」

「都市で集めた情報によりますと、人間種でありながら亜人の一種である獣身四足獣(ゾーオスティア)を従える傑物とのことでした。獣身四足獣(ゾーオスティア)は獣人の上半身と肉食獣の下半身を持つ種族で、強力かつ誇り高い面がありますから噂に偽りは無いと見て良いかと」

 

 

 ケラルトは事前に調べていたらしい。亜人種に脅かされてきた聖王国の出自とあって、警戒の念が強かったのだ。彼女はレメディオスのように敵意を滲ませてはいなかったが、都市国家連合ではストレスを溜め込んでいたのである。発散するタイプではないが、やはり姉妹だけあって、その情念は深い性質を持っていた。

 

 

獣身四足獣(ゾーオスティア)か。奴らは正面から戦えば、かなり強い。腕の見せ所だが……あの凶暴な連中がよく人間種に従っている。都市国家連合も奴らの襲撃を防いできたとはやるではないか」

「レメ。彼らが相手というのなら油断は禁物ですよ。私たちは四人で連携して、セシルさんの足手まといにならないようにしましょう」

「カル様のおっしゃることなら従いますが……そう言えば今回あいつは珍しく盾を持っていますね」

「お師匠、盾使えるんですね」

 

 

 後ろから聞こえてくる会話にセシルは苦笑しながら、左腕を見た。サイズ的にはもうバックラーと言って良いような小盾を装備している。軽快さを発揮するため、日頃は使わない。ビルド的にも合っているとは言い難い戦い方だが、セシルは今回の戦いで、できるだけ相手の攻撃を受けながら戦うつもりでいた。

 武技の一つ、〈要塞〉を習得するためだ。直刀シチセイも棒かなにかに変えようとも思ったが、流石に不用心過ぎるかと思いやめておいた。

 シチセイで相手の刃を受けると、ただそれだけで敵の武器が壊れてしまい、武技の経験値とはならないかも知れないと考えての小盾装備。だが、正直言って機会に恵まれるかどうか。

 同行者であるアウラは数で攻めるビーストテイマー。彼女が参戦するからには乱戦となってしまうだろう。セシルも“金鎖”の看板を背負っている。あまり活躍せず……というのも避けたいのだ。

 

 都市は経由せずに郊外を突き進むこと一日あまり。レメディオスたちも強靭だが、寝不足による疲れが出てきていた。食事などは騎乗状態で済ませられても、自分のものでない騎乗物の上では流石に深く眠ることはできなかった。

 そこを斟酌してくれるアウラではない。一気に東の草原にたどり着いた。

 

 そこに待ち受けていたのは軍勢だった。騎馬王は噂通りの傑物で、【大議論】が行われているという隙を逃すはずは無かったのだ。数は万には届かない。獣身四足獣(ゾーオスティア)は強力であるがゆえ、子どもを大量に生む生物ではないのだった。それでも数千の数は中々の威容。

 

 先頭で見事な悍馬に乗った、ローマ風の格好をした戦士。彼が騎馬王その人であった。

 

 

「そこの者たち――!」

 

 

 何事かを叫ぼうとした騎馬王の頭がザクロのように弾けた。いつの間にかアウラが弓矢を構えていたのだ。

 

 

「今のを避けられないなら、聞いても無駄! 行くよ、皆! あ、そいつの装備は取っておくから食べちゃ駄目だよ」

「それじゃあ行くとしますかね」

 

 

 獣身四足獣(ゾーオスティア)が見たこともない怪物たちの進撃が始まった。




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