【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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戦場~後片付け

 アウラの強さは総勢百体にもなるシモベたちによる、圧倒的な数の暴力だ。ただし、今回の任務には六匹しか連れてきていない。しかも相手は数千にもなる軍団であり、その強さは片手落ち……になることはなかった。

 獣身四足獣(ゾーオスティア)たちは凶暴だがプライドの高い戦士であり、指揮官の不在で撤退することはしなかったが、間違いなく後悔のもととなっただろう。

 数の暴力は質の暴力に変わった。アウラの支配下にある獣たちはスキルによって、レベル八十台まで押し上げられ、獣身四足獣(ゾーオスティア)以上の凶暴さをもって襲いかかった。

 

 獣身四足獣(ゾーオスティア)は武装する種族だが、その鎧と守られているはずの血肉を撒き散らす。退かないのも立派なのか、蛮行なのか分からない様である。

 その軍勢はアウラとセシルにも等しく襲いかかったが、こちらの方が楽に死ねて良かったかも知れない。弓を背に戻し、鞭へと装備を切り替えたアウラがそれをひと振りするだけで敵は弾け飛ぶ。

 セシルに向かった者たちはさらに幸運だったろう。彼は攻撃を小盾で受けた後、綺麗に首を刎ねてくれる。衝撃波で後ろの列まで首が飛んでいるが、最後まで何が起きたか理解できなかったはずだ。

 

 

「あちらは別世界ですわね。吸い込まれるように集まって、敵が減っていきますわ」

「なら、こっちの世界に集中しろ! 合間を縫って来た連中ぐらい減らさんと、なんのために来たのか分からんぞ! ええい、ケラ! カル様! 援護を!」

 

 

 槍で守勢に回るレイナースと攻撃を担当するレメディオスが、即席でありながら完璧な連携を見せる。

 獣身四足獣(ゾーオスティア)が狂奔しているため、最後衛にいたレメディオスたちにも敵は回ってきた。アウラと配下の六体、それにセシルたちの合間を運良くくぐり抜けた連中であるため数は少ない。だが、獣身四足獣(ゾーオスティア)はオリハルコン級冒険者に匹敵する強敵だ。十数体であっても油断はできない。ここが一番真っ当な戦場だろう。

 

 

「うっふっふ。まぁ、もう政治の世界にいるわけじゃありませんからね。たまには本気を出しましょうか」

 

 

 ともすれば知識担当になりがちなケラルトが一歩先へ出た。いざとなればセシルが助けてくれるだろうが、それを待つのは女が廃るというもの。

 

 

「〈第5位階天使召喚(サモン・エンジェル・5th)〉!」

 

 

 唱えた魔法は信仰系魔法詠唱者(マジックキャスター)が聞いたならば、度肝を抜かれるような代物だった。無論、逸脱者たちすら超えた怪物たちにとっては少し見直す程度だろうが……光とともに現れたのはメイスにも似た(しゃく)を持つ異形の天使。統治の主天使(ドミニオンズ・ガバナンス)だ。

 その能力は万能型であり、物理攻撃も魔法攻撃も等しくこなしてみせる。

 公的には第四位階まで使用可能とされているが、ケラルトは第五位階をも行使する。かつては周辺国家最強の信仰系魔法詠唱者(マジックキャスター)だったのだ。

 

 

「もう……いつも発揮しても良いのに。〈魔法二重化(ツインマジック)聖なる光線(ホーリーレイ)〉!」

 

 

 カルカも敵の数を減らすべく、貫通する光線系の魔法を打ち込む。後ろから攻撃魔法が飛んでくることになるが、レメディオスは少しも見ようとはしない。カルカであればフレンドリーファイアなど無いと、信じているのだ。

 

 狼の咆哮が空気を揺らす。

 カメレオンとイグアナを合わせたような神獣が敵を丸ごと飲み込む。

 猟犬が喉を食いちぎる。

 太古の恐竜がその巨体で軍勢を踏み潰し、麒麟が雷を放射した。

 バジリスクが敵をまとめて石化させた。

 英雄たちが黙々と数を減らす。

 

 これらが超高速で行われていき……獣身四足獣(ゾーオスティア)は正気に戻る時間が訪れた。だが、その少数も同胞たちと同じところに行くことになる。

 こうして騎馬王の軍勢は全滅した。後に残ったのは騎馬王の馬だけだった。

 

 

「ご苦労だったな、二人とも」

「はい! アインズ様! 騎馬王とか言うやつの死体も回収してきました!」

「ははは。アウラは気が利くな。実際に遺体があれば東ガイツの代表も納得せざるを得まい。ふむ、それにしてもこの者の装備は……セシル、後で話せるか?」

「御意に」

 

 

 本当はレメディオスたち四人も労って欲しいところだが、あまりアインズは意識していないのだろう。そう考えたセシルは短い返答で気分を表すことにした。

 それにしても移動に一日と少々で、戦闘自体は半日もかかっていないことから戻って来るまでにわずか三日しかかかっていない。普通ならば信じられないだろう。

 東ガイツの代表が直に確認するまでは時間がかかる。思っていたより時間がかかるような、短すぎるような相反する感覚だ。騎馬王の領域を誰が支配するかの問題もあった。

 

 

「さて……これから内密の話をする。アウラをないがしろにするわけではないが、少しの間下がっていてくれないか?」

「アインズ様がお気になさる必要はありません! ご命令の通りに!」

「ありがとう。ソリュシャンに言って部屋を用意してもらうと良い。お前は本当に良く働いてくれた」

「へへっ……それでは、失礼しまっす!」

 

 

 頭をひと撫でされると、アウラは上機嫌で退室した。子どもを大切に扱うような仕草で、セシルは意外とアインズも素でそういった真似ができるのだなと意外に思う。

 

 

「さて……セシル。この騎馬王の鎧ってアレだよな? 昔の映画に出てくる?」 

「ロリカ……なんだったか。まぁとにかく古代ローマ風だな」

 

 

 二人の記憶からは抜け落ちているが、騎馬王が装備していたのはロリカ・セグメンタタと呼ばれる板札鎧(いたざねよろい)である。古代ローマ軍団兵のイメージになった代物だが、実際に使われていた時期などは諸説ある。

 ともあれ、この世界にローマという国があったはずはなく、やや世界から浮いている。

 

 

「だが、この鎧はプレイヤーが使っていたような高性能ではないんだろう?」

「ああ。込められているデータ量はせいぜいレベル二十台クラスのものだ。つまりは……かつてプレイヤーから影響を受けて作られたということが考えられるな」

「そこまで深く考えると、その辺の連中が使っている剣だって、元の世界から影響を受けていることになるんじゃないか」

 

 

 そもそも論で行くとこの世界全体が怪しくなるのだから、気にしても仕方がないという思いがセシルにはある。バハルス帝国の闘技場ではカットラスを用いる戦士を見たことがあったし、メイスやモーニングスターもある。

 

 

「確かにそうなんだが、コレだけは余りにもそれらし過ぎる」

「じゃあ、交渉している間に騎馬王の領域を探索すればいいのか?」

「うん。それで行こう。正式に依頼を出す形になるが、エ・ランテルの仕事も溜まっているのでこちらの期日に合わせて帰還してくれ。プレイヤーを見つけた場合は、無理に接触せず報告だけでいい」

 

 

 流石のアインズもセシルにワールドアイテムを貸し与えることはできない。慎重な対策だけでお茶を濁す他はなかった。

 当のセシルは【大議論】に巻き込まれず、良い暇つぶしができたと喜んだ。結果として意外にも手がかりを掴むことになるのだが、本格的な探索はエ・ランテルに帰還後に持ち込まれた。

 

 




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