【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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日常への帰還~エ・ランテル

 エ・ランテルに帰還した一行は、まさに帰ってきた気分になっていた。レメディオスたちにとっては故郷とは聖王国を指すのだが、住めば都とでも言うのか一仕事終えた感がある。

 

 

「では俺たちはここまでだな。色々と世話になった」

「何もしてないというか、こっちから侵略に行った感じになってしまったが……大使、お疲れ様でしたね。そちらに行くことがあれば、今度はよろしく頼むよ」

 

 

 ザリュースたち蜥蜴人(リザードマン)とも別れた。人間種の騎兵たちも自分たちの所属部署に戻っていく。ソリュシャンにアウラ、そしてアインズはとっくに〈転移門(ゲート)〉で帰還しているはずだ。使節団の大半が陸路を通ってきたのはあいさつ回りを兼ねてのことだ。

 特にバハルス帝国への説明は面倒だった。面倒だったがセシルが苦労したわけではない。ただ、カルサナス都市国家連合が瓦解したことで、いよいよ帝国は魔導国に服従するしかなくなった。最後に見た皇帝ジルクニフの顔はむしろ清々しかった。

 

 

「先に家に帰るか? それとも今日からもう冒険者組合に顔を出すか?」

「そうですね……旅装を解いて、お茶でもしてから組合には行きましょう。本当は休んでも良いんでしょうが、魔導王陛下まで組合の仕事が滞っていると仰っていましたから」

「助かりますわ。冒険者の仕事がこれほど長く拘束されるものだとは……」

 

 

 リーダーのカルカがそう判断すると、一行は拠点に向かった。“金鎖”は城壁内周部の小ぢんまりとした屋敷を一つ借りている。バハルス帝国では高級住宅街に屋敷を持っていたが、こちらでは都市内の建築事情によりツーランクほど下がる。

 装備を一旦外し、武器を置くと得も言われぬ開放感があった。重さも気にならないセシルとて例外ではない。勿論、盗まれないようにこの後でインベントリに突っ込んだ。

 

 

「クーデとウレイを預けた孤児院もここにあるんだったな」

「そこも確認しないとな。魔導国は建前を守ることに腐心してるから、いい暮らしをしているだろうけど……やることが山積みだ」

「だから今は大人しくお茶をしましょうよ。準備をカル様にお願いするのも心苦しいですけれど」

 

 

 お茶を淹れる腕前はやはりというかカルカが一番だった。二番手のケラルトでようやく普通レベルというのが救えない。セシルは隠遁生活により薬草茶などは得意だが。

 茶の準備が整うと、セシルは虚空から茶菓子を取り出して提供した。

 

 

「あー、不思議だ。そんなこと無いのに久しぶりに座った気分だ」

「フフフ、意外と軟弱なところがあるな」

「姉様はこれで警護の任務とか慣れていますからね。レイナースも立ち仕事は慣れているでしょう。私やカル様は儀式で長時間立つのは普通でしたし」

 

 

 さして高級でもない茶と菓子が美味いと感じる。カルカの腕前もあるだろうが、やはり長く遠征していたからだろう。早く行かないとアインザックが泣くな、と思いながら予定より長時間の休憩を楽しんだ。

 

 平服に帯剣だけして一行は冒険者組合に顔を出し、執務スペースで台に突っ伏している白アフロを目にした。

 

 

「なにコレ。いや、何かは分かっているけどなにコレ」

「どうやら書類仕事ができるのが自分だけになって、腐ってしまったのでしょう。というか、そろそろ“虹”や他のチームも報告書ぐらいは書けるようになって欲しいものですが」

 

 

 こういう時に一番こき使われるケラルトが愚痴る。とにかく現場を整理してしまいたいのだが、久しぶりの冒険者組合はどうにも調度品まで乱雑になっている。

 

 

「おい、セシル。こっちに来い。なんとも言えないことになってるぞ」

「レメに名前で呼ばれるのも珍しいな……ってコレは、というかコイツは……」

 

 

 受付台に半ば隠れるようにしゃがんでいるのは、クレマンティーヌだった。なんだか頬がそげているが、間違いない。

 

 

「ひっ。す、すいません。あの時は調子に乗って……」

 

 

 長い牢屋暮らしにも不敵な態度を崩さなかった女が、小さな物音にもビクつくようになっていた。一体、魔導国でどんな罰を受けたのか。あまり聞きたくなかったので、セシルはその通りにした。

 

 

「受付嬢になったのか。それとも受付台に隠れているだけか?」

「へへ……はい……私は受付です……」

 

 

 更生したのは良いことだが、持ち前のふざけた気性が綺麗さっぱり消えている。この様子ではあの戦闘能力も、ただ持っているだけになってしまっているだろう。セシルもレメディオスもそこは少し惜しいと思った。

 

 

「ふん。まぁ今度からは受付として扱ってやろう。一応は味方なのだから、余計なことは考えないことだ」

「な、なにも考えていない……」

 

 

 本当に味方になっていたのならば、武技を教えて欲しいところだ。少しずつ真っ当な方向で親交を深めていくことを決めたセシルだったが、目を覚ましたアインザックに泣きつかれてカルカたちに合流した。

 

 

「セシル君! よく帰ってきてくれた! 書類が溜まりに溜まって……ずさんな出来だと行政官のエルダーリッチに突き返されるし……」

「はいはい。仮眠してきたらどうですか、組合長。どのみち都市国家連合での活動と地理も、報告を上げなければならないんですし。我々が分かるものだけ、処理していきますから」

「頼む……頼んだ」

 

 

 セシルはアインザックを優しく扱った。元いた世界のサラリーマンのようになってしまっていて、見るにたえなかったのだ。

 書類を束ねて二階の執務室へと移動した。一階はアウェイのような雰囲気で、居心地が悪く、仲間内だけで処理することにした。

 

 

「新人というか見慣れないのが増えていたな。魔導王の宣伝が上手く行ってるのか? 帝国などでも派手に告知したとか噂に聞いたが」

「ああ、その話は私も元同僚から聞きましたわね。でも結構前のことですし、違うのでは?」

「調査もこれからは連中に任せることになるのか……俺、指揮とか苦手なんだよな。ただでさえお前たちみたいな美人に男一人で恨まれてるし」

「……たまにさらっと褒めてくるから困りますね」

「事実だし。定期的に言わないといけないだろう? それは置いておいてレメも書類仕事は苦手だろうし、一階の連中のマウントを取って、掃除でもさせてくれ。その辺から乱れてると、ならず者に思われるからな」

「了解だ。クレマンティーヌがあの様子だから、舐められているんだろう」

 

 

 新しい冒険者たちの報告を束ねて紙にして、前回の地図を更新していく。報告者によって書式が違うなど、問題はやはり山積みだった。セシルたちは毎日徹夜を強いられることになる。

 次に“金鎖”の力が必要とされる時まで……

 




感想・応援いつもありがとうございます。

とりあえずここで一区切りです。
需要があればゆっくり更新しますがどうしてもオリ展開に……
新刊が出ることを信じて!
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