【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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モチャ回避

 リ・ロベルから東へ向かい、王都を抜けて、エ・レエブルに向かうのが今度の旅だ。実は既に急ぐ旅では無くなっているのだが、レメディオスやケラルト達は急いでいるようだった。

 刺客の話などするんじゃなかったかなと思いつつ、セシルはその歩調に合わせて行った。レメディオスは分かるが、ケラルトやカルカも思ったより健脚だ。これがこの世界で強い方の者だという証明だった。

 

 セシルも一応、三人にことさら過保護に接する必要は無いということは理解したが、それでもレベル差がある彼女達を気遣いたくなる。これは傲慢なのだろうが……どうにも癖になっているようだ。

 

 

「遅いぞ、訓練兵! もっと速く動け!」

「そこまで急ぐ旅か、コレ?」

「刺客が諦めたとしても、リ・ロベルからできるだけ急いで離れた方が良いでしょう。何かの拍子で見つかるかも知れません」

 

 

 まさか、もう話は付けてあるとも言い出せずに急ぐことになった。リーダーであるカルカが文句無いのであれば、仕方が無いだろう。後ろを振り返ると当のカルカが、何か物思いに耽っていた。

 

 

「おい、カル?」

「はいっ!?」

「何か考えるのは良いが、このままだと置いていかれてしまうぞ」

 

 

 慌ててカルカが小走りで横に並ぶ。リーダーが殿というのもよろしくないので、もう少し前に行って欲しいものである。カルカもこの世界では相当な実力者だが、マジックキャスターなので物理防御に難があるなと要らぬ心配をしてしまう。

 

 

「あのう……セシルさんはご結婚とかなされていますか?」

「何だいきなり。してないよ。そういう人間関係は森で暮らすようになった時に捨てた」

 

 

 カルカは小さくガッツポーズをしていた。セシルからすると、意味不明である。人が結婚してないのが、そんなに嬉しいか。上流階級では結婚していた方が有利と聞いた覚えはあるが、これから先、上流階級のお世話になることも無いので別にどうでも良いことである。

 

 こうして着実に目的地へ近づく中、夜のねぐらを探して植林地近くの道沿いに野営の準備をした。セシルとレメディオスで見張りを交代で行うことにして今日の道のりは終わった。

 セシルも三人もそう思っていたのだが、夜中に馬車の響きを感じてレメディオスも起きてきた。

 

 

「商隊? こんな時間にか? 怪しい積み荷でも載せているのか?」

「分からんが、ちょっと見てくる。二人の護衛は任せたぞ」

「……まぁ部下が先に出るのが基本だな。うむ」

 

 

 そうして木の枝の上にセシルは飛び乗った。猿よりも素早く動いて、状況を確認しにいくが、そこで見たのは奇妙な光景だった。

 荷物を引いた荷馬車が立ち止まり、周囲に武器もろくに持っていない農民のような集団がいる。馬車の周りには武装した傭兵らしき者達がおり、状況が良く掴めない。

 最終的に馬車に乗っていた商人らしき男が、叫ぶ言葉で理解できた。どうやら戦力的に劣っている側が聖王国への支援物資を載せた馬車を襲うつもりらしい。

 

 自分で考えて意味がわからないが、荷馬車側は確かに魔導国の旗を掲げている。このあたりの農民はそれほど飢えているのだろうか? 魔導国の出した支援物資らしいので伝言(メッセージ)を飛ばす。

 

 

(魔導王陛下。何かそっちが出した、聖王国への支援物資を襲おうとしてる連中がいるんだけど)

(なんだ、それは。まぁこっちの計画じゃないから助けといてくれるかな)

(了解)

 

 

 セシルは冒険者プレートを隠し、道を塞いでいる暴徒と、荷馬車の代表らしい商人の間に降り立った。突然の闖入者(ちんにゅうしゃ)に驚く双方に向けて語りかける。

 

 

「俺は魔導王から依頼を受けた兵だ。この荷物が無事に届くようにな。逆らえば斬って捨てる」

 

 

 たった一人で双方の沈黙を招いたのは、突然の出現ということの他に魔導王の名が大きいだろう。セシルはあいつ怖がられてるなぁと奇妙な感慨を抱いた。

 

 

「貴様、この私、フィリップ・ディドン・リイル・モチャ……」

「うるさい」

 

 

 暴徒側の首魁らしき人物を柄で一撃し、昏倒させる。すると、周囲の人間の態度が明らかに変わった。特に農民のような格好をした者達がだ。

 

 

「あのう、私達は坊っちゃんの命令で来ただけでして……」

「じゃあ、さっさと引っ張って持って帰れ。解散しろ」

 

 

 すげなくあしらって、今度は商人と傭兵の側に語りかける。

 

 

「という訳なので、俺としては輸送を続けて欲しいんだが」

「あんな連中、助けなんかいらなかったぜ」

「まぁ、そうだろうけど依頼なんでな。商人さんはどうする? このまま行ってくれるかな」

「……ああ。まぁそうするしか無いだろうなぁ」

 

 

 なぜか商人が遠い目をしていると、馬に乗ったみすぼらしい革鎧の騎兵が現れた。馬も農耕馬のようで痩せてしまっている。

 

 

「ご無事でしたか! 私は領主のデルヴィ男爵で、こちらは隣領のロキルレン男爵です」

「ああ、まぁ。大丈夫ですよ」

 

 

 商人と貴族らしき者の会話が始まると、セシルは黙って影に溶け込むように戻っていった。野営地に帰ると、微妙な表情をしたレメディオス達が出迎えた。どうやらカルカもケラルトも起きてしまったらしい。

 

 

「結局なんだったんだ?」

「聖王国への救援物資を襲おうとした連中がいてな、止めてきた」

「なに? 聖王国へのか? ちゃんと痛い目を見せてきただろうな」

「まぁ首領には一発食らわせてきたが……」

 

 

 カルカが聖王国と聞いて会話に加わろうとしてきた。彼女の身からすれば救援物資が必要なほどの故郷が思いやられるのだろう。

 

 

「聖王国への救援物資……どこから来たんでしょう? 王国が援助してくれているのですか?」

「いや、魔導国からの物資らしい」

「なに! あの骨野郎……聖王国に恩を売るつもりか!」

 

 

 セシルからはなぜか暴れだしたようにしか見えないレメディオスを、皆で宥めながら再び休憩に入る。

 

 この一件で大きく事態が変わったことにセシルとアインズは気付かないままだった……

 

 

 

 

 

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