【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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合流

 “蒼の薔薇”とは綿密な打ち合わせが行われた。ラナー王女が予想した三か所のうちどこを攻めるか。それが問題だった。二か所を落とすのは容易い。だが、二か所潰されたと知られれば残る一か所は逃げてしまうだろう。だから、日取りと時間を決めて同時に陥落させる。

 

 

「俺ひとりで行ったところで、どうなるか分からないからな。俺は城に残るとするよ。そんな奴らに喧嘩を売るんじゃ、王女にも危険が降りかかるかもしれん」

 

 

 セシルにとって嬉しい再会を果たした人物にブレイン・アングラウスがいた。ボサボサした青い髪の戦士はアダマンタイト級冒険者と比較しても見劣りしない存在だったが、流石に一人で行かせるわけにもいかない。今回は同行することは叶わなかった。

 ただかつてのように、共に訓練に励むことができた。

 

 

「〈六光連斬〉!」

「〈要塞〉!」

 

 

 以前会った時とは違い、セシルも武技を使用可能になっている。前回はブレインのプレイヤーには無い、剣の冴えに技量の差を思い知った。だが、今回は違う。多くの戦士たちと戦ってきた経験をもとに、セシルはかなり自然なまでの手加減ができるようになっていた。

 身体能力ではなく。技と精神を比べ合うことができた。ブレインの剣技は傭兵のソレであり、セシルと近い。必然的に舞踏のような打ち合いが演じられた。

 

 

「前の時とは違うな。あの時はひたすら生物としての格が違うって感じだったが……」

「少しは剣士っぽくできたかな」

「ああ。だが、手加減されてるって感覚が余計に強くなってたぜ。まったく世の中絶壁だらけだな」

 

 

 その後セシルは〈四光連斬〉とブレインオリジナルの〈瞬閃〉を見せてもらい、習得を目指すことにした。実に有意義な時間を過ごしたセシルだったが、出発の日が訪れた。

 城の門で“蒼の薔薇”と別れて歩き出そうとしたところ……なぜか目の前に〈転移門(ゲート)〉が現れる。呼び出されたのかとも思ったが次瞬、〈転移門(ゲート)〉を抜けて見覚えのある顔が出てきた。言わずもがな“金鎖”の面々である。

 

 

「これはまた凄い偶然ですね、姉様」

「ああ、丁度いいタイミングだったな。それで? あの女たちはなんだ?」

「なんだって、“蒼の薔薇”の人たちだよ。レメも会ったことあるだろ……というかなぜここに?」

 

 

 彼女たちは組合から動けないと思っていたセシルは困惑していたが、話を聞いている内に納得……はできない。冒険者組合のためだけに護衛と文官が派遣されるとは思えなかった。しかし、残った面々が使えないはずの〈転移門(ゲート)〉で転移してきた事実があるので認めざるを得ない。

 

 

「と、いう訳で今回も“金鎖”で行動しましょうね。セシルさん」

「あ、ああ……」

 

 

 なぜだかカルカの笑顔が怖い。そしてチラッとティラとクレマンティーヌを見た気がする。セシルは背中に冷たい汗を感じて、助けを求めるようにレイナースに目を向けた。

 レイナースは肩を竦めるだけで、擁護してはくれない。代わりに事態を説明だけした。

 

 

「まぁ、男女比を考えれば疑われて当然といいますか。お師匠も女性に甘いので、自業自得というやつですわね」

「俺、何もしてないよ!」

「言う相手が違いますわ。しかし……三股は許しても、他は駄目ということなのか。身内以外は排除されるというやつなのか……わたくしも気を付けましょう」

 

 

 何に気を付けるというのか。分からないまま、セシルはカル、ケラ、レメから冷たい視線を浴びせられ、必死に“蒼の薔薇”とした情報交換の内容を説明し続けた。弁明すべきはそこではないと分からぬまま。

 

 

「大丈夫。男女のアレは無かった。そもそも私の妹たちは年下趣味と同性趣味、筋肉戦士は初物食いで、仮面は魔導国嫌い。リーダーは貴族」

「よく分からんが、それを早く言ってくれよ……」

「それだと面白くない」

 

 

 流石は自称大型新人だけあって、ティラは“蒼の薔薇”をよく把握していた。まぁ姉妹が所属しているパーティなのもあるだろうが。しかし、改めて聞くと他のアダマンタイト級冒険者もおかしな集団だ。内実はドロドロとしていないか心配になる。

 

 

「そのリーダーだけは怪しんでおくとして……ティラとクレマンティーヌは大丈夫だったか」

「私はノーマル。常道から外れた相手はちょっと……」

「へへへっ、勿論。皆様のご機嫌を損ねるようなことは致しません」

「クレマンティーヌさん。なんだか人格がおかしいことになってますね……」

 

 

 なぜだか三文芝居の腰巾着のようになってきたクレマンティーヌを、三人は浮気の相手としては見ていないようだった。代わりにティラが疑われたが、セシルは前提からしてあり得ない扱い。セシルは自分が変人に見られていることにややショックを受ける。

 高位冒険者が多数の異性を侍らすのはよく見られる光景だが、ティラは一夫一妻の清い関係が理想なのだろう。

 

 

「ともあれ、早めに合流できて何よりだ。それで、これから私たちはどうすればいい?」

「ああ、それなんだが……」

 

 

 ようやく許しを得られたセシルは時間が無いことを説明する。同時攻撃のために決められた日付の前には丁度いい隠れ場所を見つけておかなくてはならないのだ。

 

 

「俺……いまや俺たちか……は北西の小都市群に向かう。北東は“大虐殺”で反魔導国が根強いとかで“蒼の薔薇”に行ってもらった」

「そこに十二高弟はいるのでしょうか?」

「それは分からんが、拠点があるらしい。いる可能性も低くは無いだろうな」

 

 

 ケラルトがどこから手に入れたのか、王国の地図を見ながら確認している。通常、外国人に売られるような代物ではないが、聖王国時代から持っていたか、エ・ランテルにあったのだろう。

 一方でレメディオスが得意げな顔をして胸を張る。

 

 

「十二高弟なら私も倒したぞ。冒険者組合にいきなり襲い掛かってきてな。だが、我々三人の敵では無かった!」

「私の牽制は数のうちに入らないのですね……ですが確かにレメさんは冷静に立ち回っておりましたわ。奥の手も見事なものでした」

「そうか。俺も一人倒したが……ところで、十二高弟って少し多くないか?」

「セシルさん。それ重要ですか?」

 

 

 全然重要では無かった。セシルは単に四天王とかの方が楽だったと思っているだけだ。“かつての世界”には十二神将などもあったし、ユグドラシルのワールドアイテムすらかなりの数がある。

 

 

「はい。では荷物に足りない物がないかチェックしてから、出発しましょう。急げばそれほどの距離ではないのでしょう? ケラ」

「ええ、カル様。周囲を巻き込まないようにするため、乗り合い馬車などは使えないのが難点ですね」

「まぁ、最悪の場合は俺が騎乗動物を出して無理やり間に合わすから、そう焦る必要もない。それにしても……カルがいるとやはり違うな。流石はリーダーだ」

「一番強い人がリーダーじゃない不思議。私も指示してくれて構わない」

 

 

 クーデリカとウレイリカのためにと別行動したが、いつもの仲間たちの姿にセシルは不思議な安心感を覚えた。十二高弟は今のレメディオスより多少弱いぐらいの強さはあるので、守る対象が増えたともいえるのだが。

 この仲間たちとの時間が心地いい。それを守るためなら、見知らぬ悪人などいくらでも倒せる。

 

 

「カル様、荷物はリスト通りに揃っています」

「そうですか。では出発いたしましょう」

 

 

 あまり力強くない声とともに一行は歩き出す。セシルはここに来て自分の変化を認める他無いと思う。世界への接続により自分は“この世界”の住人になった。

 だがそれでプレイヤーであるという事実が消えるわけではない。これから世界の国々とどう関わっていくのか分からない。とりあえずはあの双子の幸せをつかみに行こうと、愛する仲間たちの後に続いた。




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プレイヤーが四光連斬とか覚えたらやべぇだろうなだけでできた回
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