エ・レエブルは活気のある街だった。リ・ロベルも活気があったが、それは港町特有の気質から来ている。エ・レエブルは純粋に人通りが多く、治安がしっかりと良いからこその、いわば品のある活気だった。
六大貴族の一人、レエブン侯は名だけでなく能力も高い人物なのだろう。王国ではあまり見ない、舗装されつつある街路もその証拠に見える。
「さて、ようやく落ち着ける候補地に着いたな」
「ああ、ここが我々の安住の地になるか……いや安住の地にしてみせよう!」
レメディオスは意気込んで答えた。最近、何かとセシルと張り合おうとするレメディオスだったが、この発言は決意と覚悟を示していた。少しばかり微笑ましいのは、彼女も心根が変わってきたということだろう。
以前のレメディオスは強さと信念が硬すぎて、折れそうだったが、今は柔らかくなってきている。セシルとしてはあの狂気が見れなくて残念なところもある。しかし、現状でも面白い人物ではある。
「その前に冒険者組合に行って、移動の手続きをしません? 依頼の傾向も見れますし、これから先のことを考えるうえで役立つと思います」
「そうですね。四人暮らしていくなら、それなりのお金が要りますし……世の中は甘くないですね」
落ち着いているケラルトとカルカから、真っ当な意見が出る。皆、新天地に逸ることを抑えながら冒険者組合に向かった。
「意外と早く終わりましたが、依頼は護衛がメインで、討伐は少なかったですね」
「トブの大森林より山裾のモンスター退治の方が多かったな」
「護衛よりは討伐の方が好きだな。気楽にやれる」
「このあたりはそう強力なモンスターもいそうにありませんね」
銘々勝手なことを言いながら組合を出る。
治安が良いことは良いことだが、食い扶持が減ることは困る。少ない任務から選んで請負、
以前ケラルトが言っていたように身分証として、ミスリル級までは上げておきたい。
「次は宿だが、今の私達に常駐できる宿があるか?」
「トブの大森林に住むというのはどうだ。大森林ということは食料には困らないぞきっと。森というのは意外に過ごしやすくてな」
「はい。却下です」
セシルの意見はカルカどころかケラルトにダメ出しを食らう。当然のことだが、セシルの単なる趣味に女性陣三人が付き合う理由はなかった。
「そういえば、ここまで来たんだ。もう、面頬は外しても良いんじゃないか」
「うん? ああ好きにすれば良い。常に兜を被っていると大都市だとかえって変かもな」
「それでは遠慮なく……」
カルカが兜を外すと、金紗の髪が膨らむように広がる。見事な金髪で、なるほど確かにこれは目立つ。ケラルトも外すと長さはともかく、レメディオスに似た髪だった。やはり姉妹なのだと、今更気付く。
「ふぅ、やはりこちらの方が気持ちが良いですね」
「大体、常に兜を被っているなんて男性でも拷問でしょう。セシルさんに従って東に来た甲斐はこれだけでもあったような思いです」
「まぁ刺客が再び来ようとも、私が今度こそ二人を守る!」
そう言うレメディオスはふわっとした髪の毛に、若干兜の跡が残っている。女性陣は大変だと思いながら、セシルは宿探しを再開した。
街の配置を覚えながらゆっくりとした道行で、白い静かな建物を見つけてきたのは意外にもカルカだった。値段も安い訳では無いが、安定して払える範疇だ。
「誰かと住むなら、こういう場所が良いなっと見ていたんです」
とは本人の弁。顔がほんのりと桜色に染まった美貌が、人々の目につき感嘆の声が聞こえた。セシルは初めてカルカの顔をまともに見た気がした。
「なるほど、美人だな」
「ええっ!?」
「おい、訓練兵。カルカ様に手を出したら殺すぞ」
「単に評価しただけだ!」
殺すも何も、レメディオスがセシルに敵うはずもないため、じゃれ合いめいたやり取りになった。とりあえず見つけた宿に部屋を長期で取り、来訪した日は終わりを告げた。
翌日から新天地での生活が始まった。冒険者組合に行き、依頼を受ける。受けた依頼はハルピュイアの討伐だった。これまたレメディオスが勘で選んだ仕事であり、当たりが期待できる。できればトブの大森林から出てきたマンティコアの討伐が良かったのだが、金級冒険者は難度によって受けれなかった。
昨日は来た時期が悪かったのか、討伐依頼もちらほらと見られた。意外と平和だったと思っていたが、トブの大森林とそこから伸びるアゼルリシア山脈から来たモンスターなどが出没するらしい。
実際、ハルピュイアを発見したのはアゼルリシア山脈の近くだった。イメージ通り、半人半鳥の種族で当然ながら飛んでいるのが厄介だ。逃げられるのもごめんだ。
だがセシル達のチームはマジックキャスターが多い。セシル自身もそうだと言える。突撃しているレメディオスは予想通り、少し飛ばれて初撃以降を出しあぐねている。
「
セシルから極太の光線が3条発射され、ハルピュイア達を一掃していた。次いでカルカとケラルトの
「わ、私は囮かぁ!?」
任務を果たすまで光線の嵐は続いた。