【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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駆除

 魔導国の工作にせよ、ラナーの独断にせよ、今の状況は以前ラナーが示した状況を裏付けてもいる。つまり残り二か所でも事件が起こるのは確実だ。感謝すべきかは微妙なところだが、とセシルは頭をかきたい思いだ。

 同時に怒りを覚えているのも確か。ここにセシルがいなかったのなら、“金鎖”に犠牲者が出てもおかしくはないのだから。せめて自分にだけでも教えてほしかったと願うのは傲慢だろうか。

 シチセイを固く握りしめたセシルの手にカルカの手が添えられる。自分は大丈夫だからと、気負わないようにとの意をくみ取った。

 

 

「離れるなよ、カル」

「ええ、ずっと」

 

 

 何だか意味が変わっている気がしたが、まぁいい。そう切り替えたセシルに風切り音が迫り、目の前に火炎が広がった。風を切る物を無造作につかみ取り、右手の刀で炎を断ち切った。火の広がり方から〈火球(ファイヤーボール)〉と判断できるが、威力からしてそれほどのレベルは無いと推測された。

 

 

「私の〈火球(ファイヤーボール)〉を断つとは、中々やりますねぇ。もっとも、強化していない魔法なのであまり自惚れてはいけませんよ? しかし、今日の生贄は美しい……ああ、男の方はいりません。その高価そうな刃物だけ頂いでいきましょう」

「見る目があるんだか、無いんだかわからんやつだな。どっちも渡さないが」

「フシュー! フシュー!」

 

 

 セシルが左手でつかみ取った物の正体は鞭だった。太さからして鞭の規格を超えているが、持ち主が見上げるような巨漢なので違和感は無い。ただ鞭の男は口をレザーマスクでふさいでいて、奇妙な呼吸音しか出さない。そして、魔法詠唱者(マジックキャスター)と思われる男は平民が思い描くキザな貴公子そのものだった。

 

 

「そちらの同朋は口が利けないのでね、代わりに私が挨拶しましょう。彼はシャビエル、見た通りなので紹介はいらないでしょう。そして私はハビエル。華麗なる魔の使い手……貴方方は深入りしすぎた。ズーラーノーン十二高弟たる我々の手にかかることを、名誉に思って逝きなさい……ああ、外の君の仲間にも手は回っていますので寂しくはないですよ?」

「そうか……とりあえず、話が長い!」

 

 

 セシルが叫ぶと掴んでいた鞭を引っ張った。無造作なそれで巨漢シャビエルが弾丸のように飛んでくる。膂力に差があり過ぎた。すぐに鞭を手から離れても結果は同じだっただろう。

 

 

「〈貫通〉!」

 

 

 行われるのは圧倒的なオーバーキル。レベル差からして間違いなく必要無かった相手目がけて、武技が発動する。文字通りの貫通、突きの一撃だ。

 巨漢の心臓を刀と手が穿ち、セシルを返り血で染めながら停止した。心臓どころかその周辺まで空いた大穴。恐らくは死んだことにさえ、気付かなかっただろう。

 

 

「なっ!? ……〈魔法最強化(マキシマイズマジック)炎の雨(ファイヤーレイン)〉!」」

 

 

 炎が曲線を描いて降ってくる。それに向かってセシルはシャビエルの遺体を投げた。味方が放った炎で更に無惨になる死体に……セシルは隠れていた。ハビエルの真上に、来たそのタイミングで念には念を入れた一撃を与えてやるのだ。

 

 

「〈斬撃〉!」

 

 

 これもまた最も単純な武技の一つだが、プレイヤーたるセシルが放てば地形を変える一撃となる。飛び上がったのはできるだけ街を巻き込まないためだ。

 衝撃で館が、地震を受けたように揺らぐ。その震源地にキザな男は存在しなかった。〈斬撃〉の衝撃波で文字通り床のシミになったのだ。

 

 

「カル! この連中を一人も逃すな!」

「はい! ですが、外の方は……」

 

 

 当然十二高弟が来ているだろう。だが……これまで見てきた手合いならば。

 

 

「問題ないよ。レメたちなら十分やれる。少なくとも持ちこたえてくれる」

 

 

 下に見ることなどしない。彼女らの戦闘力を冷静に考えたうえで、セシルはレメディオスたちを信じていた。ゆえに当然。

 

 

「あっはっはあ! 良いね! ここに来てレメディオス・カストディオと戦えるなんて! 同じ騎士同士仲良くしようじゃないか!」

「生憎とそんな名前じゃないな。私は冒険者のレメだ。それに……邪教に仕える騎士なぞいるかぁっ!」

 

 

 褐色にドレッドヘアーの女騎士とレメディオスは刃をかみ合わせる。騎士というのは嘘ではないようだ。剣術や呼吸に一定のリズムがある。なぜ彼女がズーラーノーンに入ることになったのか……レメディオスには知ったことでは無かった。

 

 

「名乗りはいらんぞ。どうせ殺す……お前には分からんだろうが、我々では決して届かない剣を私は知っている」

 

 

 だから騎士同士の戦いにおいてレメディオスは同格を相手に、絶対的なアドバンテージを持っている。常に自分より上の相手と共にあったのだ。それはステータスではないが、見える力となって表れる。レメディオスは相手の()()に動き出した。

 敵は一人ではないが、こちらも一人ではない。レメディオスはある男や主君と同じくらい妹を信じていた。

 

 

「くっ……ここは通しませんわ! ケラさん!」

「〈聖なる光線(ホーリーレイ)〉! すばしっこいですねぇ!」

 

 

 レイナースとケラが戦っているのは寡黙な少年だった。若さに似合わない禿頭姿が、二刀を振るって攻めてくる。名乗りもしなかったのは意味がないからだ。

 彼はズーラーノーンに拾われ、ズーラーノーンに育てられ、十二高弟にまで登った。しかし、あまりに純粋なその育ちから特に感情を動かすことは無い。ズーラーノーンの任務に忠実。それしか無い。

 彼の戦闘能力は一言、万能である。近接戦闘もできれば、魔術戦もこなす。もし彼がどちらかに努力を集中していれば、英雄の領域。それもかなり上の方までいけていたかもしれない。

 

 

「〈雷撃(ライトニング)〉」

 

 

 電撃が迸る。〈雷撃(ライトニング)〉はオブジェクト破壊の効果も持つ。屋敷の扉へと放った一撃は回避も容易だった。そういう風に撃たれたのだから。扉を破壊して内部を確認するための術行使。

 そこで彼は屋敷の内部が既に制圧されている光景を覗き見る。任務が失敗してしまう可能性が出てきた彼は一気に攻めかかる。

 

 

「くっ」

 

 

 レイナースはケラルトの盾になるので精一杯だ。元々、彼女は戦士として見ればレメディオスよりも下である。槍というリーチがある武装だからなんとかしのげているが、時折守るはずのケラルトに援護される始末。

 一方のケラルトも隙を見出せずにいた。何か一瞬の間があれば、一発で逆転可能だが攻撃魔法の撃ち合いはあまり良い状態ではない。とにかく間断なく戦い続け、強化や連携を防ぐしかない。

 元より待っていればセシルがいずれ来るのだ。ならば無理をする必要も……そこまで考えてケラルトは己の思考を恥じた。それでは付いてきた意味がない。考えろと自分を叱咤する。相手のことを見て……ふ、と考え着いた。

 まぁちょっとした賭けだ。少なくとも相手の意表をつくことは間違いない。後はレイナースが合わせてくれれば満点。

 相手が放つ魔法を一回足さばきで避けた。それはダンスのステップや姉の動きをぎこちなく再現したものだったが……次の瞬間、少年が後ろから何かに殴られて吹き飛んだ。

 レイナースがそれに合わせて槍を突き出す。

 

 

「〈超貫通〉!」

「……ゴフッ」

 

 

 体に穴が空いている。魔法詠唱者(マジックキャスター)相手ならともかく、あの格下の戦士相手に致命傷を負わされている理由が分からない。

 少年の背後には一体の天使が立っていた。

 

 

魔法無詠唱化(サイレントマジック)化した〈第五位階天使召喚(サモン・エンジェル・5th)〉です。やったことがないので一瞬の間が要りましたが……無口はあなたの専売特許じゃありません」

 

 

 少年は最後まで何も感じずに息絶えた。しかしそれは外に確かな影響をもたらした。

 

 

「ホルヘ!?」

 

 

 女騎士の動きが止まる。このままでは三対一になるのだから、動揺は当然だろう。だが、一瞬の間における賭けを狙っていたのはケラルトだけではない。

 

 

「ああああぁつ! 〈聖撃〉!」

 

 

 それは位相が悪の相手に対する特効攻撃。人間相手だが、邪教に堕したというわずかな情報を頼りに聖剣サファルリシアによって極限まで強化する。

 侵略者相手でも、悪と判定されないこともある。かつてより成長した“人を見る目”を頼りに発動させたスキルだった。

 

 

「何!? この光は……!」

 

 

 他の者にとっては眩しくなどない、その一撃を光の奔流と感じながらズーラーノーンの騎士はソレに押し流された。

 

 

「はぁ……効いたか……じゃない! 中に援軍に行かねば! ケラ! レイナース!」

 

 

 元々逃亡者が出ないようにするのが彼女たちの役割だった。それにまだ高弟がいないとも限らないと考えて、屋敷の中に突入する。

 

 

「まぁ……心配いらないですわよね」

「いや、この参加者たちが逃げないようにするには人数がいる。我々は決して足手まといではない!」

「三人ともやはり無事だったか」

「当然、お前もよくカル様を守った!」

「頑張ったのは四人にしてほしい」

 

 

 信者たちから小さな悲鳴があがる。そこには人の首を手にぶら下げたティラがいた。クレマンティーヌも同じ場所からこそこそと近づいてきていた。

 

 

「監視役がいた。結構強かったから、多分これも高弟」

「ティラ……」

 

 

 “金鎖”の情報を流したのは彼女かも知れない。素直に喜べないのが悲しかった。だが、それを糾弾するのも筋違いだろう。

 自分がもっと地位を上げれば、このようなことは防げるかもしれない。セシルはそう思った。

 

 だが、とりあえずは戦果を喜ぼう。これでズーラーノーンの高弟は残り三人ということになるのだから。

 




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聖剣に出番があったことに俺が一番驚いてるよ!
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