【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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ズーラーノーンクリア

 墓地では下級アンデッドが墓場から抜け出し、群れとなった。そこには妙なるハープの旋律が、夜の騒動を抜けて流れている。ズーラーノーンの高弟イェディエル。彼が奏でる音楽によって、彼自身はアンデッドの標的とはならない。

 ところが彼の旋律に苛立ちが乗った。住人の悲鳴や喧騒といった伴奏が聞こえてこない。それどころか大規模な破壊の音が邪魔をする。

 その時、骨が飛び散り骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)が吹き飛んできた。骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)はレベル十六のアンデッドだ。それをあっさりと砕く存在が来た。

 

 

「よう。随分と風流なことじゃねぇか。夜の墓場にピッタリの音楽だ。だが、今度は鎮魂歌でも弾くんだなぁ」

「意外。ガガーランから似合わない言葉が出てきた」

「音楽を聴く耳があった」

 

 

 戦場にあって呑気な会話。それは強者にのみ許された特権だ。イエディエルも覚悟はしていた。街中で騒ぎを起こせばどうなるかぐらい、阿呆にも分かるというものだ。ただ彼もむざむざとやられてやるつもりはない。一人ぐらいは道連れにしてやると、旋律を変えた。

 

 

「外には鬼ボスとイビルアイがいる」

「一匹も漏れは出さない」

「つぅわけでだ。覚悟しろやぁ!」

 

 

 覚悟ならいつもしている。それがズーラーノーンに仕えるということだ。そう思いながらイエディエルは自らも死の螺旋に加わらんと最後の戦いに身を投じた。彼らの“盟主”がどんな最期を迎えたかも知らずに……

 

 一方、“金鎖”が担当していた神殿の高弟……ミイラ姿の小男は神殿に火を放つよう命じた後、さっさと逃げていた。帝国での邪教集団捕縛。その時現場にいた彼は“金鎖”の恐ろしさを知っている。もとより忠誠心が高い方でもなければ、自分の力を過信するような趣味もない。結果として彼が一番賢かったのだろう。

 

 

「ズーラーノーンの雑兵はレメに任せて、私たちは救護に回ります」

「うっふっふ。久々に神官らしい仕事ですが、後で治療費を請求される神殿がどう出るか……気になりますねぇ。もし、こちらに罪を押し付けようとしたのなら……」

 

 

 ひたすら真摯に人を助けようとするカルカは、人の誘導を完璧にこなす。召喚した天使に運ばれてきた負傷者を癒すのはケラルトの仕事だが、黒い笑顔が浮かんでいる。

 

 

「ええい、こいつら弱いくせにしつこいぞ!」

 

 

 レメディオスはズーラーノーンの信徒たちを相手に、左から右へ大忙しだ。確かに負けるような相手ではないが、魔法詠唱者(マジックキャスター)もいて鬱陶しいことこの上ない。自分たちのローブにまで火がついて尚向かってくる相手に、レメディオスは戦いを楽しむ気力も無かった。

 ただ事態を収拾して、中央にいるであろう男を安心させる。もしくは救援に向かうのみ。

 

 そして、その中央では……当初の目的にない魔戦が繰り広げられていた。セシルとリクの戦いは激しかったが、おおむねセシルの優位にあった。

 リクもセシルも戦士なので真っ向勝負となっているのだが、空中戦なので真っ当な戦士のソレとは様相が異なる。リクが四つの武器を浮遊させて一つの連撃と化すが、セシルは落ち着いてうち落しと回避で退ける。反撃に出ようとすると距離を取られる。

 

 

「おかしな戦い方だ。もっと力強く攻めてきても良いんだぞ」

「不要。手の内を晒す気はない」

 

 

 つまり肉体を強化する方法は持っているということだな。そうセシルは判断した。ここまでで互いに相手の戦いに違和感を覚えている。セシルとしては、見た目レベル百なのだが実際の戦闘力はやや落ちるのが気になる。なんと言うべきかほんのわずかに動きがぎこちないのだ。からくり人形でもあるような……それを確かめるためには一撃入れないといけない。

 リクの側からは困惑を覚えている。相手は間違いなくぷれいやーなのだが、違和感がない。しっかりと地に足がついているような。まるで、この世界の人間と変わらないような気さえするのだ。

 

 

「そっちは手札をきる気がなくとも、こっちは出して問題ないな。さっさと勝たせてもらう!」

 

 

 次の激突でリクはあり得ない体験をすることになる。

 攻撃手段は変えず、四本の武器を使っての物量勝負。流れるような武器の滝がセシルを襲うが。

 

 

「〈斬撃〉!」

「なに……!?」

 

 

 四つの攻撃は一撃でまとめて弾き飛ばされた。だがリクが驚いているのはそこではない。このぷれいやーは今、武技を使った。この世界の戦士のように。なんだ、それは。あり得ない。

 まるで、この世界がやつを受け入れているようではないか!

 

 その隙をセシルは逃さなかった。今、武器は四つとも離れ、さらには本人も隙をさらけ出しているのだ。

 

 

「空中で意味があるかは知らないが……〈加速〉!」

 

 

 意外にも、それは効果を発揮した。恐らく、この世界でも試した者は少ないであろう〈飛行(フライ)〉からの加速武技。リクはセシルに向かって拳を振るおうとした。

 さぁ賭けの時間だ。

 

 

「〈要塞〉……! 〈四光連斬〉!」

 

 

 高レベルの存在が放つ殴打を顔で受け止めて、更には未習得であった武技の使用。結果としてリクの拳はセシルの顔に食い込んだものの貫くには至らず、()()()攻撃が白金の鎧に刻み込まれた。

 

 

「これじゃあ〈三光連斬〉だな。それで……その中身、空か? どこから操っている?」

 

 

 リクの鎧についた三本の爪痕からは何も覗いていない。血も流れてはいなかった。セシルはユグドラシルの知識からオブジェクトを操るジョブを思い出そうとするが、ここまでハイレベルの存在は思い浮かばなかった。もしかすると、忘れてしまっただけかも知れないが。

 

 

「お前は……何だ? 世界の異物ではないのか?」

「いや、あんたの方が変だよ。武器の遠隔使用に高位のマリオネット。それにこれまで出会ったどの戦士よりも強い……」

「……お前の目的は何だ?」

「何だと言われても……そうだな。鳥を故郷に戻してやりたくてな」

 

 

 セシルは少し照れ隠しのように言う。その様子を見て、相手も気が抜けたのか長い沈黙の後、武器を自分の周囲に戻した。下からレメディオスの声が聞こえた気がした。

 

 

「ここは退こう。だが、世界を歪ます者は許さない。世界は私が守るのだ」

 

 

 リクと名乗った鎧は遠ざかっていった。だが、余程に動揺していたのだろう。評議国の方へ向かって一直線だ。しかしまぁ世界を守るというのは大仰なことだな。セシルとしてはそう思わざるを得ない。なにせ彼には三人で手一杯だ。

 

 

「逃げていったが、追わなくていいのか?」

「ああ。ズーラーノーンの“盟主”を殺したのはあいつだしな。そっちは?」

「被害は最小限だ。ケラがまた何か企んでいるがな。それにしても、ぶふっ」

「……なんだ」

「お前のそんな顔が見れるとは思っていなかったぞ。左頬だけ蜂にでも刺されたようだ……お前が手傷を負うぐらい強いやつがいたんだな」

「さらに上がいそうな感じだったからな。〈要塞〉を習得していて良かったよ。また鍛え直しだな」

 

 

 広場の縁石に腰かけたセシル。なんだかんだとここに来て珍しい同格との戦いだった。緊張感が抜けて疲労していた。次は平和的に接触できればいいのだが、と思わざるを得ない。

 短いレメディオスとの時間を過ごしていると、“蒼の薔薇”と“金鎖”の面々が集結してきた。

 

 

「こっちも無事終わったみたいね」

「終わったは終わったのですが……こちらには高弟らしき者がいませんでした。一人残ってしまうことになります。復讐など企まれたら……」

「それなら心配いらない」

 

 

 カルカが困ったような顔で言うと、ガガーランが肩にミイラ男を担いでやってきた。恐らくアレが最後の高弟なのだろう、と皆が思うぐらい奇怪な姿をしている。

 

 

「ティラが置いていった」

「貸し一つだって」

 

 

 随分と高い借りになりそうだと、“金鎖”は思った。一番遅れてきたケラルトがセシルの顔に〈重傷治癒(ヘビーリカバー)〉をかけて腫れをひかせようとしている。

 まぁともかくこれで良かったのだろう。クーデリカとウレイリカを引き取ることもできる。しばらくは長旅は遠慮したいと思う一行だった。

 

 

 




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オリ展開一旦終了。いかがでしたでしょうか。新刊をプリーズ
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