【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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武技の才

 エ・ランテルに無事で帰ってきた。それはいいのだが、セシルは居残った冒険者たちから涙ながらの祝福を受けた。どうやら死の騎士(デス・ナイト)と、文官の死者の大魔法使い(エルダーリッチ)たちとの同居は随分と神経に負担をかけたようだ。

 セシルからすれば常駐していてくれてもいいぐらいだが、アダマンタイト級冒険者でもない冒険者にそれを求めるのは酷であった。彼らは感傷もなく、無機質に引き上げていった。

 

 

「組合長、“金鎖”全員帰還しました」

「おお……セシル君、待っていたよ! いや、本当に! まるで監視されているような日々だった!」

「ハハハ、死の騎士(デス・ナイト)ぐらいで大げさな」

「それは君だけだよ……」

 

 

 実際、国から派遣されてきた護衛がいるということは監視に等しい。セシルたちが不在の間、怯えながら仕事にまい進する他なかった。組合に居たがらない冒険者が多かったことで、仕事は大分進んだようであったが。

 

 ともあれ、これで魔導国冒険者組合は平常運転に戻ったのである。

 

 セシルたちの朝は早い。正確には戦士組である三人の朝が早いといっていいだろう。朝食前に鍛錬をするからだ。特に最近はセシルのモチベーションが高い。武技という新たな境地を手に入れ、従来のプレイヤーの壁を突破できると思えばそうなるだろう。

 それにセシルの戦闘力向上は、最終目的であるレメディオスたちの聖王国帰還のために必要な手札だ。やる気も入ろうというもの。

 

 

「レイナースの〈重爆〉はオリジナルの武技なんだよな? 習得する時どんな感じだったんだ?」

「やはり普通の訓練から繋がったといえるでしょう。槍先にどう衝撃を伝導させるか……それを模索していた時に武技の力が伝達されて、偶然誕生したものですわ。今では二つ名になってしまいましたけれど」

「やはり通常の訓練がものを言うか……体に宿った力を精密にコントロールするわけだ」

 

 

 武技では魔力に近い……だが、確実に別種の力を消耗する。これをどう上手く刃に乗せるかがカギとなる。レメディオスが良く使う〈剛撃〉も一見力任せに見えるが、武技のエネルギーを腕力に回しつつ刃先に伝導させていた。

 

 

「習得できるかは別として、〈能力向上〉の訓練は武技の理解を深めますわ。全身に力をいきわたらせる感覚ですから……」

「そうだな……標的を壊さずに済むし……」

 

 

 セシルが見た鋼鉄の鎧は原型を留めていなかった。木剣でやったのだが、素の身体能力が高すぎて、手加減してもこうなってしまうのだ。実はこの程度の代物でも金はいるので、経費削減のために叩いて直して使っている。

 そうしてレイナースと二人で話していると、レメディオスが騒ぎ出した。

 

 

「おい、訓練兵! 模擬戦をやるぞ! 今日こそ一本取ってやる!」

「すまん、レイナース。俺が師匠という話だったのに……」

「いえ。代わりにあとで寸止め勝負でもしていただければ、良い訓練になりますわ」

 

 

 お世辞ではない。セシルが寸止めとはいえ、力を込めて振るう一撃は死を感じさせる。体は付いて行かないが。おかげでレイナースは格上の相手が使う技でも遅いと感じるようになった。最近ではレメディオスともいい勝負になっている。

 そのレメディオスとの模擬戦はセシルからしても、格好の教科書だ。なにせレメディオスは大雑把に見えて正式な剣術をきちんと使う。我流のセシルとしては学ぶことが多い。そのため、できるだけ勝負を長引かせようとしてレメディオスに怒られるまでが一連の流れになっている。

 

 

「そういえば訓練兵は〈空斬〉は使わないのか?」

「まず、その武技が初耳なんだが……」

「こういう武技だ……〈空斬〉」

 

 

 レメディオスが的の鎧に向かって、離れた位置から剣を振る。すると三日月のような剣閃が飛んでいき、鎧は当たった部分が切り裂かれた。

 

 

「見ての通り、剣撃を飛ばす武技で基本的なものの一つだ」

「ちょっと待てよ! 今まで見た中で一番訳が分からない!」

 

 

 武技を使うにはMP以外の力を消費する。その力は一種の集中力で、今までセシルはそれを肉体と剣に流し込んで使っていた。だから、〈斬撃〉や〈貫通〉は理解できる。単純に切れ味と込める力を限界突破させて使うだけだ。

 それを応用し、同時に放つ〈四光連斬〉に関しては未だに完全な理屈は分かっていない。武技には条理を超えた力があり、剣撃も同時に放てる。そのイメージが掴めずに〈三光連斬〉で止まっているのだが、これも手元で起こる現象だ。

 だが〈空斬〉は違う。武技のエネルギーを形にして崩さずに狙った位置へと届かせている。

 

 

「訳が……ってお前が覚えて来た〈三光連斬〉の方が、余程難しい武技だぞ」

「威力が高すぎて衝撃波が飛んでいるわけでもない。単純に剣撃を飛ばす……こ、こうか?」

 

 

 セシルが見よう見まねで〈空斬〉を放つと、頼りないもやのようなものが出て、おまけに振った剣が動かした空気で雲散霧消してしまった。

 

 

「あっはっはは! 何だ、今のは! 逆に難しいぞ!」

「くっ……レメに完敗する日がこようとは……」

 

 

 だが、それをレイナースは笑わずに見ていた。武技の習得には年単位で時間がかかる。それをセシルは()()()()()()()、出来はどうあれ武技の力を放ったのだ。恐ろしいまでの才能。いやあれは恐らく異能の類だと、レイナースは考える。

 タレントと呼ばれるそれは、持つ者の個性そのもの。役に立たないものがほとんどだが、その中には倍の速度で魔法を習得するなどといったものもある。

 理屈を理解すれば使用可能になる。あるいは集中力の自在化か。まるで()()()()()()()()()()()

 

 とんでもない男を師匠にしてしまったようだと、レイナースは考える。だが……これならあるいは魔導王とその側近たちを超える可能性を秘めているかもしれない。

 まぁ悪政を敷いているわけではないので、今のところ戦う意味など無いが。

 

 

「戦士っていうのは、朝から元気ですねぇ。まぁ姉様で慣れていますが、この調子で一日中動けるのだから大したものですね」

「訓練は終わったようですね皆さん。朝食の準備ができていますよ」

 

 

 セシルがレメディオスに笑われ飽きた頃、屋敷の中に戻るとケラルトが朝食を作り終わっていた。カルカも手伝っていたのだろう。聖王女と神官団団長がエプロン姿などと、かつてを知る者が見たら衝撃を受けるはず。

 朝食は戦士たちに合わせて、重いメニューになっている。というかほとんど夕食と変わらない。カルカとケラルトは自分たちだけの小さな器で食事を取るほどだ。

 

 

「クーデリカとウレイリカは?」

「まだ眠っていますよ。昨日ははしゃぎ通しでしたからね。子どもにとっては住む場所が変わるのは一大イベントでしょうから。はぁ……これからはあの二人の分は別に作らないと、成長に悪影響がでますよ」

 

 

 かねてからの計画通り、クーデリカとウレイリカはレメディオスに引き取られた。おかげで昨日は二人の世話に皆、振り回されたのだ。今後は少し大人しくなることを期待する他ない。

 

 

「遠征とかの時は世話役を雇う他、ないか。それに、あの二人まで加わってこの屋敷では手狭だが……予算がな……」

「子どもは騒ぐものだ。うるさいくらいで丁度いいではないか」

 

 

 現在の“金鎖”の拠点は、エ・ランテルの上流階級通りの端にある小さめの屋敷だ。その分、鍛錬をする庭があるので選ばれた。

 他の国の冒険者やワーカーなら高額の依頼を受けて、山ほど稼ぐこともできるが、魔導国の冒険者は公務員である。階級に応じて月単位で俸給が支払われる。アダマンタイト級冒険者であるセシルたちは最上位の額を貰ってはいるが……アダマンタイト級冒険者としては安いと言わざるを得ない。

 

 

「アイツも苦労してるな。賞与狙いで大きな仕事でも入ればいいんだが……いや、しばらくはいいか」

 

 

 当分はゆっくりと武技の修練をしたいというのが、セシルの本音だ。それに応えるようにセシルにアインズから茶会の連絡が来るのだった。




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武技ってツリー次第では結構早く習得できそうですよねと思いつつの主人公補正
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