【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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調査の依頼

 暇だと、セシルは思う。だが、それが世捨て人生活を思い起こさせて心地よい。

 何もしていないわけではない。冒険者としての活動もしっかりとしているし、三人の安全にも気を配っている。ただ、近辺の敵や難関はセシルにとって何の驚異にもならないというだけだ。

 

 “金鎖”も単独依頼だけでなく、他の冒険者との合同任務もこなしていこうと考えている。ルーン武器の宣伝という目的を果たすためだ。

 

 

「これはまた……凄い杖ですね」

 

 

 手に持ったケラルトが端的に感想を述べた。オーブのはまった杖は、握った瞬間に分かるような効果だったようだ。もう一方のメイスは使用した際に効果が出る類のものらしい。

 

 

「ほう……私には無いのか? 訓練兵?」

「剣も一本借りたけど、コレ魔導国の商人に頼まれた宣伝用だぞ」

「……要らん」

 

 

 青い水晶のような剣をちらちらと見ていたが、レメディオスは余程に魔導国が嫌いなようでアインズの言った通りになった。

 ケラルトは一通り効果を試している。流石に街中で攻撃魔法をぶっ放すようなことはしていないのが幸いだ。

 

 ケラルトとカルカが使う予定の武器は、ユグドラシルの技術で作られているため、その効果は桁違いのはずだ。もちろん、この世界の武具と比較しての話だ。

 

 カルカもメイスを握るが、なぜか震えるようになってしまい、上手く使いこなせないようだ。

 

 

「いざという時のために、近接武器にもなるメイスをカル様に使って欲しいのですが……」

「ごめんなさい、ケラ。手に取るとどうしても震えが……」

 

 

 セシルもあれからカルカがどのような目にあったか聞いた。恐らくはそのトラウマだろう。良くも悪くもカルカは繊細な感性を持つ。一朝一夕で乗り越えられるものでもあるまい。

 

 

「良いんじゃないか。別に無理して使う必要なんて無いんだし、カルが杖。ケラがメイスで問題無いだろう」

 

 

 セシルは艱難辛苦の果に得られるものが一番とは思わない。楽をしたければ、楽をすれば良いのだ。セシル自身、人間社会が嫌で森に引きこもっていた男だ。それで何か支障が出た覚えもない。

 

 あからさまにホッとした様子でカルカはケラルトと武器を交換した。メイスは相手を叩き潰す、ある意味エグい武器だ。セシルが想像してみると、カルカよりケラルトの方が似合っている気もした。

 一説によると、刃が付いていないから聖職者の武器になったと聞いているが、怪しいとセシルは思う。血よりグロテスクなことになりそうだからだ。

 

 

「そうだ。私には訓練兵が日頃使っている剣を貸せば良いんじゃないか? 貸せ」

「出たよパワハラ。シチセイは自分で言うのも何だが、滅茶苦茶高価な剣なんだぞ。誰が貸すか」

 

 

 セシルが使う直刀シチセイは珍しく真面目に作った武器だ。攻略サイトと睨めっこしながらデータクリスタルを効果的に使ってある。この世界では下手をしなくても、セシル本人より値段が高くなりかねない。

 レベル100プレイヤーが使う武器とはそういうものだ。

 

 

「さて、日銭を稼ぐにあたって良い依頼はあるかね」

 

 

 拠点を出て冒険者組合に向かう。ミスリル級になったことで受けれる依頼はグッと増えた。雑魚を倒してもよし、多少遠出をしても良しだ。

 

 

「ここは姉様の勘を信じてみれば良いでしょう」

 

 

 レメディオスはここまでの依頼で実入りが良い任務を見つけてきている。動物的勘のようなものがあるのだ。

 

 

「珍しいな、合同任務か。近辺のモンスターの情勢が変化した可能性があるので、一定期間調査すること……なんだ、こりゃ」

「このあたりにアンデッドは少ないですし、亜種でも生まれたんでしょうか」

「まぁケラの言う通りだろうが……賭けてみるか?」

 

 

 任務は一見退屈しそうなものに見えた。エ・レエブルから東は六大貴族のレエブン侯が治めるだけあってかなり広い。そんな中をかなり目立つ相手だとしても、探して回るのは無理があるように思われた。

 

 

「情勢が変化ということだから、モンスターの棲んでいるような場所を探せば良いんじゃ無いですかね」

「討伐依頼の方が儲かっただろうが、強力な存在だとしたら遭遇する前に片付けておきたいな」

 

 

 共に行動するのは白金級の冒険者達だ。流石に場馴れしている様子で、一気に駆け上がった“金鎖”よりも調査には役立ちそうだった。

 

 

「敵が出てきたら、こっちに任せてくれ。調査はあんた方の方が得意そうだ」

「ええ。任せといてください。こっちの編成からしても、貴方達の編成からしても、その方が良さそうだ」

「偏ってるからな俺ら……」

 

 

 “金鎖”は全員が信仰系で固まっている。隠密行動はできても、足跡を追うようなレンジャーの真似事などできはしない。ただチームの特色としては目立つため悪くない。

 冒険者の一人が寄ってきて耳打ちしてくる。

 

 

「べっぴんさんを三人もチームに入れてるから、妬むやつもいるでしょうが悪く思わないでください」

「そういう視点で考えたことは無かったな……」

 

 

 のんびりとした返事に親切な冒険者は苦笑した。期限は一週間だが、数日は穏やかな日々が続いた。戦闘が無かった訳では無いが、“金鎖”があっさりと片付けた。

 

 そんなある日の夜。セシルは無詠唱化した伝言(メッセージ)を受け取った。

 

 

(面白い依頼をしているね)

(のんびり旅気分だ。それで、今日は何か用がありそうだけど?)

(すまないが、生態系の変化は我々がトブの大森林を押さえたことで起こったことだ。だから、調査を早々に終了させたいんだ)

(具体的には?)

(明日、こちらからモンスターを送る。それを撃退して、報告して欲しい)

 

 

 伝言(メッセージ)を飛ばしてきたアインズが語るのは、とんだマッチポンプ計画だった。

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