【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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茶飲み友達

 フィリップ・ディドン・リイル・モチャラスは男爵でありながら、大派閥を率いる偉大なる盟主である。後ろには帝国との戦争で血縁が死に、当主に繰り上がった者達を従えている。

 つまりは新興の大派閥であり、今やその勢力は王族派閥と貴族派閥に比肩するものとなっていた。

 

 

「んふっ」

 

 

 フィリップは優越感と共に頬を緩ませた。自分がトップ。派閥の中には爵位が上の者さえいる。そう、これがあるべき姿……いいや、この程度ではない。名実ともにもっと上の爵位があって然るべきだ。

 まったく王族達は見る目がない。しかし寛大なるフィリップとしては“黄金”と称されるラナー姫を差し出し、六大貴族と同等の地位を与えるなら許してやらないではない。

 黄金、まったくフィリップの未来は黄金であるべきだ。

 

 だが現在も王や大貴族達は既得権益にしがみつき、フィリップを認めようとはしない。これは国家の損失である。そこに現在の食糧不足。フィリップはやれやれと頭を振った。自分のように作物を切り替えていかないから、こういうことになるのである。

 フィリップの領地はまるで高位の森祭司(ドルイド)がいるかのように、実り豊かだ。領民達も蔑むような目を止め、自分を敬うようになった。

 

 その時、フィリップに電撃が奔った。

 

 これは天啓ではないか? フィリップの領土を広げ、王国を救えという天の導きだ。そう考えると全てがしっくりと来て、アイデアが次から次へと浮かんでくる。蜂起し、王家に国主たる資格がないと示させるか? あるいは戦で自領に引きこもったというレエブン侯の代わりに、六大貴族となるか?

 いずれにせよ、フィリップの領地が広まれば天候さえ機嫌を変えてくれるに違いない。フィリップの野望は大きくふくらんだ。

 

 

 

 アインズ・ウール・ゴウン魔導王は小さな部屋で、切り出した。

 

 

「底抜けの馬鹿、というのを見たことがあるか?」

「自分以外だとないなぁ」

 

 

 セシルはアインズの前で紅茶をすすりながら答えた。相手が味覚を失ったアンデッドなので、少し気が引けるが注がれたものは仕方がない。

 

 

「いるらしいんだよ。それでそいつが原因となって王国は内乱になるらしい」

「内乱の話は聞いたことがあるな。馬鹿も超がつけば国を揺るがすのか。見習おうか、ならないようにしようか……」

「私の部下達は王国の内乱を望んでいる。そこから魔導国の入り込む隙間ができるからな……という話だ」

「前も言ったけど、それ俺に聞かせていいの?」

 

 

 いくら興味が無いと言っても、所詮セシルは外部の協力者に過ぎない。国家の大事を話すのに相応しい人間とは言えない。相談相手にしても知識が不足している。

 

 

「いや、真面目な話。お前しか頼れる者がいないんだ。警護を依頼したい……といっても私からではなく、向こうからコンタクトを取ってくるはずだが」

「警護って誰を?」

「王国の次期王……ザナック王子だ」

「向こうを攻めたいのに、守りたいのもいるのか。政治っていうのはよく分からんな」

 

 

 察するに王国を蚕食し、属国にするにせよ、占領するにせよ、その人物が必要らしい。奇妙な依頼だ。

 

 

「このザナックという人物は中々優秀らしい。動乱の最中にうっかり死んでもらっては落とし所が分からなくなる。できるだけ王国を傷つけずに手に入れたいからな」

「はぁ……向こうからコンタクトを取ってくるっていうのは?」

「うん。ザナックはガゼ……ある人物が倒れてしまったので強力な武力に欠けるらしい。ミスリル級やオリハルコン級の冒険者達とコネを持とうと努力しているそうだ。そこで、異例の早さで昇進した君たちに話がいくのは当然……なのか?」

「聞かれても分からんが、不思議では無いな。エ・レエブルから出てもいいのか?」

「国を出ていかないのなら問題は無い」

 

 

 しかし、王族というのならカルカと面識がある可能性も存在する。自分一人で行くべきか……また、面頬になってもらうしかない。

 三人が近くにいなくてはこちらが守れなくなる。

 

 

「高位のヒーラーでもあるお前なら、暗殺の危険性はグッと減るだろうしな。まぁそこは理解している」

「後味悪い展開は避けて欲しいなぁ。エ・レエブルの守りは任せても?」

「元々脅迫も兼ねて八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)影の悪魔(シャドウ・デーモン)を配置してある。少なくとも領主の心配の必要は無いな」

「そんなことしてたんだ……」

 

 

 それがエ・レエブルが自分の息がかかっていると言った理由か。八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)は不可視化の能力を持つ。単に見えなくなるだけで高位プレイヤーには通用しないが、この世界の住人にとっては最悪かもしれない。

 

 

「とりあえずザナック王子から招待でもあったら、素直に応じることで良いのか」

「ああ。それで構わない。ふぅ真面目な話は肩がこるな」

「こるのか、その肩……まぁ重そうな服ではあるが」

 

 

 アインズは肩をぐるぐると回している。正直、かなり奇妙な光景だ。どうやって動いているのかさえ、良くわからないので、そういうこともあるかもしれない。

 

 

「ごちそうさん。茶や菓子はここのが一番だな」

「まぁ作物もだが、調理スキルの差もあるだろうな。この世界は本当に興味深いよ」

「じゃあ、また会おう」

「待て待て、もう少し話をしていけ。普段雑談など無いんだ」

 

 

 アインズの愚痴にたっぷりと付き合わされた後、セシルは解放された。依頼主とは奇妙な付き合いの長さになってきた。

 

 ザナック王子からの手紙が届いたのは、それからすぐのことだった。

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