【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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爆弾交渉

 通常、冒険者は国家運営に関する活動には参加しない。しかし、それは不文律である上に、法として考えれば当然に抜け道が存在する。

 例えば国家運営に関わらない範囲で、貴族や王族が個人で依頼する方法。そして、その過程で得をするというやり方だ。

 あるいは物の警護で居場所を固定する方法。建造物や宝物、もっと踏み込んで人間でも構わない。相応の理屈をつければ抜け道はいくらでも存在する。

 

 もちろん、それに対して冒険者組合がどう思うかも自由だ。冒険者組合には総本山と言える統括機関が無い。現に聖王国ではヤルダバオト襲撃の際、冒険者を徴兵した例があるが、これはその街の冒険者組合が大きな権力を持たなかったためだ。

 王国もラナー王女の個人資産で依頼する形で、総動員したことがある。

 

 

「これは……どうすべきでしょうか」

「さて……俺は受けても良いと思うが……面識は無いんだろう?」

 

 

 酒場ではなくカルカの部屋に集まって、四人で協議する。

 頭が痛いのはセシルだ。アインズからの依頼はザナック王子の警護だが、“金鎖”のリーダーはカルカだ。無理に押し通すことはできない。

 

 

「何か王子の下心を感じますね。いえ、下心が無ければ歓談の招待など出さないのですが……問題はどの程度こちらを取り込もうとするかですが、うっふっふ」

 

 

 カルカの腹心であったケラルトが不気味に笑う。今、彼女の頭の中では様々な可能性と謀略が渦巻いているのだろう。こういった場合、セシル並に頼りになるかもしれない。

 レメディオスは腕を組んで立ち、頷いているが絶対に何も分かっていない。と皆が思っていたのだが……

 

 

「しかし、王子から直接招待されて行かないほうが変じゃないか? それは冒険者の正義とかあるにしても、やましいところが無いことを正直に示すべきだろう。取り込まれようとしたらちゃんと断れば良いんだ」

「誰だお前。レメの偽物か?」

「人が何も考えていないみたいに言うな!」

 

 

 しかし、話が良い方に転がっていく。利益で考えればアダマンタイト級と言えど、王子の招待は魅力的だろう。そこからセシルはアインズの頼みを聞けるかもしれない。

 

 

「そうですね……王国と聖王国はそう仲が悪くない時代もありましたが王族が行き来するほどでもありませんでした……城内でなら身許はバレないでしょうが、外では顔を隠す必要があるでしょう」

「王国内を見るいい機会ですし、行っても良いでしょう。一生エ・レエブルというのもなんですし」

 

 

 普通の人間なら生まれた土地から出ないのもありふれたことだが、三人にはやはり窮屈らしい。セシルは何ら問題ないのだが、人それぞれということだ。

 

 

「じゃあ、行ってみるか。気に入られなくても、気に入られても悪いことにはならんだろう」

 

 

 一番行かないといけないと思っているセシルがそう締めくくる。気に入られる方に持っていきたいが社交界の知識なぞ脳みその隅でホコリを被っているだろうからあまり期待せずに、あくまで気楽な気持ちで応じたいところだった。

 

 

 エ・レエブルと王都リ・エスティーゼはわりと近い。通り抜けるだけなら何度か機会があったが、リ・エスティーゼは正直、あまり魅力的な街とは言えない。

 小さな路地は舗装されておらず荒れた印象を与える上に、実際闇社会的なものが存在する。

 

 それでも王城は流石に堅牢で、威厳に溢れている。多くの塔と城壁に囲まれたそれは実戦的にさえ見えるほどだ。

 

 

「しかし、アダマンタイトというのは便利だな。どこでもすぐ通れる。この辺はケラの言う通りか」

「身分証としてもですが、武力の証でもありますからね。アダマンタイト級冒険者に暴れられたらろくでもない、という意味もあります」

 

 

 王城までにも当然衛士がいて、誰何してくるが、プレート一枚で解決する。便利だが、警備的にはどうなのだろうかとも思える。

 まぁ良いか俺には関係ない……とは言えない。セシルの役割はここでの警護なのだから。

 

 やがて見えてきた王城で手紙を見せて、呼ばれるのを待った。

 

 結果はかなり早く出て、慌てた様子の兵士達が宮殿の一つにセシル達を案内した。

 

 

「よく来てくれた。“金鎖”の方々。かねてより冒険者との繋がりを持ちたかった私としては、最近稀に見る幸運だよ」

「率直に仰られるんですね。“金鎖”のリーダー、カルです。あちらがレメ、ケラ、セシル、私のかけがえのない仲間達です」

 

 

 ザナック王子は小太りで顔の肉も緩んでいる。風采は悪いが、貴族でない冒険者との挨拶に直接目的を伝える度胸がある。ただ、少しだけ無理に威厳を取り繕おうとしているようにも見えた。

 

 

「ははっ。色々考えたんだがね。君達、高位冒険者におべっかは意味がない。強いということは我を通せるということだ。この城の兵士など君達の前には物の数ではないだろうしな」

「なるほど。用件はつまり……」

「君達を取り込みたい。この王都で冒険者活動をすると同時に、有事の際には力を貸して欲しいという訳だ。妹も“蒼の薔薇”と繋がりを持っているが私はそうじゃない。ゆえに圧倒的な個という力が私も欲しい」

「直截的ですのね。私達としてはようやく安定した生活を手に入れた、というところなのですが……」

 

 

 カルカも流石に元王族ということか。話をひきのばそうとしている。いつものような普通の娘のような様子は鳴りを潜めていた。

 恐らく報酬について話そうとしたザナックの発言の前にノックが執務室の扉を叩く。

 

 

「はぁー。なんだ、妹。俺は大事な来客中だ」

「ええ、ですのでご挨拶を、と思いまして」

 

 

 了承を得る前に扉から現れたのは黄金の美姫だった。やや幼い感じはするが、セシルはなんとなく気に入らないものを感じた。

 

 

「はじめまして、ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフと申します。会えて光栄ですカルカ・ベサーレス様、レメディオス・カストディオ様、ケラルト・カストディオ様、そしてセシル様」

 

 

 美しい闖入者はいきなり爆発物を放り投げてきた。

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