【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

25 / 155
時々護衛

 王女の放った一言にセシルは、ぼうっとなった。バレる可能性はあったが、こうまで早い上にあけすけにだとは思いもしなかった。

 

 

(……殺すか?)

 

 

 極めて物騒な思考をセシルがもてあそび出した。何のことはない。この城の住人全員を血と肉に変えてしまえばいいだけだ。

 

 

「おい、妹。確証があって言ってるんだろうな? 軽く出せる名前じゃないぞ、それは」

「勿論です。最初に判明したのはレメディオス様のことです。あの方は私の友人達と依頼で接触したことがありますから」

 

 

 ラナー王女はアダマンタイト級冒険者“蒼の薔薇”と親交がある。そこから気付かれたのだ。他の証拠を王女が喋っている間、セシルが考えたのはどう嘘をつくかではなく、どう切り破るかだ。

 その前にやることがある。この権力者を排除しても良いのかを確認すべき勢力が一つだけある。セシルは無詠唱化した伝言(メッセージ)を送る。

 

 

(おい、ちょっと急ぎなんだがラナーとか言う王族は殺しても構わないのか?)

(なんだいきなり物騒な……! いや待て、殺してはならない人間のはずだ。一体何があった?)

(俺達の素性に気付いて、べらべら喋っている。正直面倒なのでさっさと片付けたい)

(こちら側の策略に障る可能性もある。しばらくは大人しくしてくれ)

 

 

 伝言の効果時間が切れると、丁度推理の時間が終わったところだった。仲間の三人は苦い顔をしている。それはそうだろう……せっかく築いた生活が無に帰すかもしれないのだから。

 

 

「そうだ。私はレメディオスだ。だが、その二人に関しては違う。聖剣を持って出奔した身だ。どうとなり好きにするがいい」

「というか、姫さんは何がしたい? ここで推理ごっこをしても死体が増えるだけだぞ。自分で言うのも何だが、俺は結構強いぞ」

 

 

 ルーン武器ではなく、愛刀のシチセイの柄に手をかける。相手が弱かろうが関係ない。ただ切るだけだ。

 

 

「お兄様の新たな友人の架け橋として、話しているんです。お兄様より私の方が手勢が強いということをお兄様は案じておられます」

「弱みを握っているのが、良い関係だと?」

「力関係として、そのぐらいはこちらにも無ければ友人には成れませんから」

 

 

 友人? 世の中において上下関係があっても、それなりに理由があれば対等の関係にもなれるが……王女の語る友人という言葉に、何か奇妙なズレをセシルは感じた。

 

 

「もういい。ケラ、お前さんが王女さんと話してくれ。俺はザナック王子と話す」

 

 

 王子は執務用の椅子に座り込んで、自分が話に立ち入れないようになっていた。実際、王女の語るそれを事実としたならば何ができるだろう? そう考え込んでいるようだった。

 

 

「とんだ歓談になりましたね、王子」

「いや……実際、驚いているさ。君達に関する妹の発言が本当なら、まったく凄い集まりとしか呼べない。しかし……見方を変えればどうでもいいことじゃないか?」

「と、いうと殺しにかかりそうな相手とまだ友誼を結びたいと?」

 

 

 ザナックは唇を舐めた。顔に反して、覚悟のできる男のようでしっかりとセシルの目を見てくる。その様子は覇気があるとすら評せる。

 

 

「俺は君達の秘密を守り、擁護する。どこかの貴族の私生児としてでも、文書を発行しても構わん。その代わり、個の武力が必要になったときだけ君達を頼る。最初の提案通りだ」

「なるほどな。だが、あのお姫様が素性をバラした理由は何だ? どちらかといえばこちらを警戒させる意味しかない。友好関係を壊すだけだ」

「さあな、というのが本音だ。アレの知能は化け物じみていて、良く分からんことをすることがある。本当に友好関係を壊したかったのかもしれん」

 

 

 アインズ・ウール・ゴウン達が殺してはマズいと思っている人物。それがセシル達の素性を知っていると明かした。知っているにしても使い所を間違えているとしか思えないが……それ自体がわざとだとするなら?

 ラナー王女の狙っている目的は何だ? 少しだけ分かったのは王女がセシル達が王国を放ってはおけない状況にすることと……恐らく魔導国と繋がりがあることだけだ。

 

 顔をあげれば女達が不安げな表情でこちらを見ていた。

 

 

「カル。俺としては王子の依頼……時々力を貸すということを受け入れてもいいと思う。お前さんはどうする?」

「私は貴方と同じ道を行きたいと思います」

「変な懐かれ方をされても困る。自分で決めて欲しいな」

「えぇと……元々社会的には死んでる身ですし、正体が表に出ないなら受け入れたいと思います」

「レメはどうする?」

「もとより、カル様の傍が私のいるべき場所だ。まぁついでに手のかかる訓練兵にもな」

 

 

 その時ケラルトが丁度戻ってきた。話し疲れたような様子で、こめかみを指でぐりぐりと押しながらこちらへと歩み寄ってくる。

 

 

「ケラ。今意見をまとめていたところだが……大丈夫か?」

「ええ。王女からは何も聞き出せませんでした。煙にまかれたような、というのはこのことですね。交渉事には自信があったので、少しショックです」

「じゃああらためて、どうする?」

「王子との盟約ですね。このことがある以上、受ける方が無難でしょう」

 

 

 そうか、とセシルはザナック王子に向き直った。商談成立だ。ラナー王女はそれを三日月の笑みを浮かべながら見ていた。

 

 

 

「ザナックの護衛として活動させつつ、いざという時、結び目をすぐ解けるように素性を明かさせたか」

「ええ。占領にせよ属国にせよ、最後まであの王子に付かれていては協力者の有効活用ができませんからね。他の三人についてはもう利用価値がありません……フフフそれにしても力だけなら同格の者さえ手玉にとるとは流石はアインズ様」

「そんなことはない。ただ、あの男を侮るなよデミウルゴス」

「かしこまりました」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。