【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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王子の姿

 能面のように動かない顔でセシルはザナックと向かい合って、馬車の中にいた。会談の相手次第でこのようにザナックが時折、護衛を依頼してくる。そういう会談の時は新興派閥の貴族相手だったりした。

 起きた戦争で突然、家を継いだ者は貴族社会の常識を知らない場合が多く、武力が必要になる場合もあるということだ。

 

 

「……王子というのは」

「え?」

「王子というのは意外と忙しいものだな」

「やっと口を利いてくれたな。そう、王子でも派閥争いからは逃れられんのさ」

 

 

 先日以来、セシルはずっと不機嫌さを態度で表してきた。実際にはそこまででは無かったのだが、仲間の三人を王女が暴露話で追い詰めたせいだ。

 そうした背景を除けば、ザナックは十分好感が持てる相手であることを認めざるを得なかった。

 

 良くない風体と皮肉げな口調をしているが、ザナックは自国のために行動している。それは多くの人間を守るためであり、打ち捨てたセシルとは正反対とも言える。

 

 

「ただでさえ魔導国との問題があるというのに、いざこざばかりでたまらんよまったく」

「魔導国……」

 

 

 まさかその魔導国と関係があるとは言えず、表面的な感想に留めておこうと誓う。気付かぬうちに政治の世界にまで足を踏み入れている。

 

 

「魔導国には武力では勝てん。魔導王の魔法の前には軍勢さえ無意味だ。いやむしろ軍勢で挑むのは愚かなことだ。同じくらい強大な個人で無ければならない」

「心当たりでもあるのか?」

「ないが、お前ならどうだ? 勝てるか?」

「さぁ……そもそも一騎打ちに行くまでに死にそうだ」

 

 

 ザナックの質問は心臓に悪い。危うく一騎打ちなら可能性はあるなどと答えそうになる。あくまで自分はアダマンタイト級冒険者のフリをしなければならない。セシルは久しぶりに頭を使った会話をする羽目になる。

 

 

「それにしても護衛はいつもお前だな。他の三人はどうしている?」

「あれらはあれらで仕事をしている。アダマンタイト級の実力はちゃんと持っているから、さほど心配はしていない」

 

 

 嘘だ。セシルとしてはむしろ彼女達の護衛に付きたいところだが、レメディオスに過保護過ぎると釘を刺されている身だ。

 

 

「そうか……しかし、あれだな。対等の話し方というのは悪くないな。宮廷に慣れた身には新鮮だ」

「不快なら直すぞ。まぁ俺がそういった肩書を軽視しているのは変わらんが……大体そういった奴は間に合ってそうだからこうしている」

「違いない。だが、俺は股肱の臣などといった奴を持っていない。それが父上との違いだな」

 

 

 皮肉げな口元で目を逸しながらザナックは押し黙った。こうして会談などに時間を取られるのも、そうした信頼のおける部下がいないからだ。任せられるところは任せるということができないでいる。

 

 

「真面目にやっていれば自然と手に入るもの。作ろうとしたところで時間がかかりすぎる」

「まぁなぁ。せめて、戦士長だけでも決めておきたいところだが……興味ないよな」

「無い。というか冒険者との二足のわらじは無理だろう」

 

 

 そこからはしばらく無言だった。ザナックは話題が無いというより、何か考えているようでセシルは暇になった。

 戦士の話題が出たということは王国は魔導国に抗う選択をすることもあるのだろうか? ならばその時、どんな顔をして守れば良いのだろう。

 

 戦争。幾度も見てきたが、プレイヤーの有無で絶大な差がついたものがいくつかあった。王国が魔導国に対して力で勝つ確率はゼロだ。だからこそザナックは奔走しているのかもしれない。戦い以外の道を模索して、だ。

 

 

「魔導国の勢力拡大を止める手立て……本当にあるのか?」

「分からん。だが、探し続けなければならない。次期王としての責務というやつだ。勝てなくても、やれることはあるはずだ」

 

 

 セシルには一瞬、ザナックの苦笑がとても眩しいものに感じられた。

 

 

 一方の魔導国でも各守護者達が仕事に追われていた。至高の身に仕えるという自負を持つ彼らに疲れは無いが、忙しいことには変わりない。

 王国への侵略計画の他に、これまで一気に勢力を拡大してきた地を統括するシステムを作る必要にかられたからだ。

 

 正直に言えば武力で攻め立てた方が王国への対処としては早いぐらいだが、主に献上する国を瓦礫の山にしたくない。これはアインズも言っていたことだ。

 

 そんな中、一番暇なのはそのアインズだった。部下達は至高の身に雑事をさせたくないし、むしろ自分の結果を褒めて欲しい。どの王も羨む身分だったが、何もしていないというのは心苦しい。

 

 

(はぁ……もっと上手くやるべきだったな)

 

 

 暇を埋める雑談相手のことを思いやった。何もかもアルベドとデミウルゴスに任せておけば問題ない、というのが友好関係にヒビをいれることになるとは思いもしなかった。

 すぐさま呼びつけるというのも考えものだ。伝言(メッセージ)で詫びを入れるには効果時間が短すぎる。まるで仲違いした友人に対する未成年のような気分で、関係修復の機をうかがっていた。

 アインズの本心を理解できるのは現状ではセシルしかいなかった。部下達には普通の話が普通に話せないのだ。

 

 

(とりあえず、聖王国の三人を保護リストに入れるとして……他にも何か詫びの品を用意したいな)

 

 

 アインズはすぐに用意できるアイテムをリストアップし始めたが、相手もプレイヤーだ。アイテムでは物足りなく思うかもしれない。誠意が見えるような一般品が良いだろうか?

 

 セシルとの関係。ここでも王国と魔導国の熾烈な駆け引きが展開され始めていた。

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