【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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コウモリの責任

 ザナックの護衛も板についてきた頃……自分の部屋に転移門(ゲート)が開いていた。ちなみにセシル達は、高級住宅街の中でそこそこの屋敷を借りて拠点としている。少し四人には広くないかとも思うのだが、カルカ達は生まれ育ちが良いので気にならないようだった。

 

 そして現在、対面者以外誰もいない部屋で、セシルは一国の王が机に頭を打ち付けて謝っている様子を目にしていた。

 

 

「本っ当に! すまない! 部下があそこまでやるとは思っていなかった。責任はこの私が負う! 重ねて、すまない!」

「いや、何と言うか……もういいよ」

 

 

 アインズは口を開きながら希望を見る目で、セシルを見ている。一方のセシルの発言は見えない程度に諦念が込められていた。悪さをした子供の代わりに親が出てきたから、仕方なく許すような微妙な感覚だ。

 

 ようやくアインズが椅子に戻る。サイドテーブルに置かれたお茶を冷めない内に飲むセシル。

 

 

「いや、本当にありがたい。俺も今回のような事態になるとは夢にも……言い訳だな。こちらが口に出せることではない」

「まぁ部下がいる身というのも大変なものだな、と」

 

 

 セシルは部下を持った試しがない。現在も表向きはチームの中で部下の方とされている。そうした身で言えば誰かに指示を出したりして、そこにズレが生じても仕方が無いことなのかと納得する他無い。どちらかといえば謝罪に何週間かかかっている方が気になる。

 

 

「忙しいのか? そろそろ王国への干渉も佳境だろう?」

「ん、うん。そちらから見ても分かるのか?」

「ザナック王子の近くにいるからな。王都は良いが、他の街はひどいものだと聞いている。後、なんか扇動者がいるとか」

 

 

 フィリップ餅だかなんだか。セシルは王国民の名前に馴染めずにいた。名字があるのは分かる。ミドルネームっぽいのも分かるが、そこまでだった。結果として貴族王族ではザナック以外の名前は全く覚えていない。

 

 

「忙しいのは確かだが、判子をついてばかりいるな。正直、細かくは覚えていない」

「いいのか、それで……王都は良いって言ったけど、麻薬中毒なんかは見ていて気分が悪いぞ、この世界に来る前みたいだ」

「裏社会などにも、勢力が根付いているからな。気分が悪いのはすまないが、対案がなくてな……」

 

 

 セシルはお茶をすすった。アインズと話していると、昔の光景が写真のように思い出せる時がある。大体が美しいものではない。自分も含めて知らず知らずの内に、あの世界に似せるよう行動していないだろうか?

 

 

「向こうというべきかこちらというべきか。民衆の恐怖を煽るものか……食糧はもう流しているが、効果は出てないのか?」

「思ったよりは、と付けるべきだろうな。アンデッドが作った食糧というのは、予想以上に抵抗があるらしい。良く分からない感覚だけど」

 

 

 野菜などに貼ってある“私が作りました”という写真を思い出す。アレが骸骨だったら確かに抵抗はあるかもしれない。

 

 

「謀略というのは意外と身近なものなのかもしれないなぁ。さて、そろそろ戻るとしよう。あまり長々と居ると、うちの連中がうるさい」

「待て待て、もう少し話をしていかないか? 緑茶とお土産を用意してある」

「緑茶かぁ。少しだけだぞ」

 

 

 やはり食い物、飲み物には人は勝てないのだろう。それはセシルも同じだった。

 ちなみにお土産は伝説級(レジェンド)の陣羽織風の装備品だった。かなりのレア度で、セシルは狂ってるのかアイツとちょっと引いた。

 

 

「ちょっと図に乗ってるのではありんせん?」

 

 

 帰りの転移門(ゲート)をくぐる時、そんな声が聞こえた気がした。

 

 

 元の屋敷に戻ると、セシルは眠る前に色々と準備をしておこうと自室から出た。そこでレメディオスと出くわした。なぜだか既に目が据わっている。

 

 

「こんな夜中にどこへ行っていた、訓練兵」

「ある種の夜遊びだ。気にするな」

 

 

 転移門(ゲート)を使う時は当然、部屋に鍵をかけている。それをセシルが外出していたと判断したのだろう。

 

 

「気にするな、という方が無理があるだろう。カル様も夕食は一緒にできないか、気にしておられた」

「謝っておくよ。今じゃ役割分担しているのだから、あまり気にされても困るがな」

「おい、私達はチームではないのか。確かに冒険者活動は私達が、護衛はお前で分かれているが、だからといって縁が切れたことにはならないだろう」

 

 

 レメディオスは意外なことにセシルのことを心配していた。自分達の身許が割れたせいで、余計な負担をかけていないか。何か後ろ暗いことをさせられているのではないかと。

 

 

「レメ……随分と優しくなったな。それに落ち着いてきた」

「話をはぐらかすな」

「はぐらかしてはいない。だが、チームだからこそ言えないこともあるんだ。ある意味では俺はお前達以上に問題児だ。危なくなったら、むしろ俺を切り離せ」

「そんなこと、できるわけがないだろう。今更……」

 

 

 レメディオスがうつむいて、立ち尽くしている。それをセシルが優しく抱きしめる。親愛の心まで失ったわけではなかった。

 

 

「そう。問題は俺だ……」

 

 

 呟いてセシルは天井を見上げた。

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