【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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首輪でも足かせでもなく

 最近森でレメディオスと出会った日を思い出す。あの時は一人で良かったというのに、気が付けば蘇生にも手を貸し四人組になった。

 セシルは自分の立場に苦笑する。鬱屈した半生の方が自由でいられた。隠者の方が楽だということに気付いていたから世の中に関わらなかったのに、今はこのざまだ。そう、輝かしいモノに惹かれれば苦がついて回る。

 

 

「そんなこと、分かっていたのになぁ」

「セシルさん?」

「いや、まだ王都は平和だな。そう思っただけだ」

 

 

 カルカと並んで歩きながら、誤魔化すように言った。しかし、言った言葉に嘘はなく、王都は比較的平和だった。各都市は危険な状態にあるにも関わらずだ。

 食糧不足や麻薬。小さな貴族領地では反乱の兆しすら見えるという。ザナック王子の傍にいるので、その状況を一般人よりは把握していた。

 

 

「まぁ今日はそういうのは良いか、大通りにでも行くのか?」

「ええ、ちょっと良いお店を見つけまして」

 

 

 カルカから一緒に外出することを求められた時、セシルは躊躇した。現在の自分の立場……魔導国のコウモリとして生きていくかを悩んでいた時だったからだ。

 結局は一人で考えていても何も解決しないだろう、と付き合うことにした。思えばカルカが自分から誘ってくるのも珍しいことだった。

 

 

「セシルさんは買い物に出かけたりとかしませんね」

「最近はそうでもないな。ケラに付き合わされてだから、自分では何も買わないが……それに安酒場なんかはよく行くよ」

「そうでしたか……」

 

 

 なにか微妙にどんよりとしているカルカを見ながら、セシルは王族というものは国によって大分違うらしいと感じた。カルカは王族どころか、女王の地位にあたる聖王女だったから当然かも知れない。

 それがこうも機嫌が上下するのはどうかと思わないでもないが、セシルとしては付き合いやすい。

 

 

「女性の買い物といえば服だが、最近になってから急に買うようになったな」

「身許がバレてしまいましたからね。悪いことだけでは無いことの一つですよ。正直、年中鎧は辛いものがありましたし……それも冒険者稼業が無い時だけですけど」

 

 

 安全のためにずっと着ていて欲しいとは流石に言えない。それに同じ屋敷に住むようになってから気付いたのだが、完全に護衛し続けるのも不可能だった。部屋も分かれているし、セシルのように瞬時に目覚めるような真似はそうそうできない。

 一人で三人をずっと守っているというのはセシルの独りよがりだった。彼女達は立派にこの世界で生きていける人間なのだ。

 

 これなら親鳥のマネはもうおしまいなのかもしれない。

 セシルはそう感じているが、二つ厄介なことが残っている。彼女達が自身の力で生きて行くのを邪魔するもの。魔導国の監視と、それとつながっている自分だ。

 

 カルカ達は魔導国が武力による侵略を選んだ時、自分とは違って傍観者で居ることはできないだろう。

 

 だが、反抗できるだろうか。監視の排除は簡単だが、魔導国とやりあって勝てる気はしない。奥の手を使っても、向こうも同等の物を自分以上に持っているだろう。

 やはり、魔導国の庇護下で生きていくしか無いのか……そんなことを考えていると耳に大声が入り込んできた。

 

 

「セシルさん!」

「お、おお。すまなかった。ちょっと考え事をしていてな」

「女性と二人きりの時は、そういうのは禁止ですよ?」

「確かにそうか。真面目に仕事のことは忘れるよ」

 

 

 セシルはカルカに連れられて、様々な店を訪れた。どこも客は少なく、落ち着いた雰囲気だった。それが現在の王国の立場に起因することは明らかだった。

 訪れた場所の一つ、装飾店でセシルは良い指輪を見つけてカルカにプレゼントした。信仰系魔法の威力を向上させる透明な宝石の指輪だった。

 それを渡す時、なぜかセシルがカルカの指にはめることになったが、セシルには理解できないままだった。

 

 夕暮れ時、カルカは子供のように石段を踏み外さないように歩いていた。それは彼女の金の髪と合わさって、踊りのようだった。

 

 

「セシルさん。私達はセシルさんの足枷になっていませんか? それで時折悩んでいるのでは?」

「微妙に外れだな。俺は俺こそがお前達の枷ではないか……そう危惧している」

 

 

 死んでいた身を蘇らせた。ならば、第二の人生は彼女達が思うままに生きれば良い。だが現状ではセシルは魔導国に目をつけられ、アインズの手伝いをしている。セシルがいなければ、彼女達は人質としての役割を失い自由になるかもしれない。

 

 

「そんなことはありませんよ。セシルさんは私達にとって、導き手です」

「だが、生き返らせた以上は責任がある。そうでなければ二度死なせるだけになってしまう」

 

 

 魔導国から付けられた条件を三人は知らない。王国から出れば死ぬことも、故郷に帰れないことも何一つ知らないままだ。そして現在、王国は静かに魔導国に侵食されている。

 

 

「生きていく以上、何か制限があることは当たり前なのです。私がかつて聖王女であり、そこから離れられなかったことと同様に。だから、貴方にこそ自由に生きて欲しい」

「カル、お前は……」

 

 

 気付いているのか、首輪の存在に。それが、三人と一人を結びつけて協力させられていることを。

 

 

「きっと、ケラとレメもそう思っていますよ。それと……貴方は隠し事が下手すぎます」

 

 

 彼女は聖王女。かつて一国を総べていた身。その治世は凡庸だったとしても、一人の考えを予想するなど当然のことだった。

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