【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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力の差と後ろ盾

 レメディオスは見ていた。自分が勝手に拾った男の剣さばきと実力を、意外なことに見ていたのだ。レメディオス・カストディオは人格に問題はあるが、戦闘では優れた直感を発揮する。ゆえにまさか、と信じられずにいた。このセシルという男が完全に自分より上であると。

 

 アーマットをあらかた掃除した後のことだ。地響きとともに、穴から巨大なアーマットが転がり出てきた。ここが集落なのであれば、その首領だろう。

 

 

「私が……!」

 

 

 そう。ジャイアント・アーマットは他のアーマットよりも遥かに強い。亜人種の勇者達に次ぐレベルだ。それでもレメディオスには勝てる自信があった。実際に過去の戦いではその強者たちと五分に戦ったのだ。そこから漏れた敗残者ならいくら特別な個体でも、一対一なら負けはしない。

 

 

「念を入れていくかね……スキル〈シャープ・エッジ〉」

「……は?」

 

 

 あまりにも呆気なく、巨大な肉体の敵は、胴から二つに分けられて最後の地響きをあげた。何だ、これは? レメディオスは勝てる自信があった。だが、それは一撃でという意味ではない。

 野営した時、自分の剣が指で止められたのを覚えている。疲弊した体だったからだと思っていたが、そうではなかった。

 このセシルという剣士はあまりに強すぎた。レメディオスの嫌うあの王のように……

 

 

(ヤルダバオト、アインズ・ウール・ゴウン魔導王、そしてこいつ……コイツラは何なんだ。この世のものじゃあ無いんじゃないか?)

 

 

 頭が単純と思われ続けてきた女騎士は、皮肉にも真相を言い当てていた。

 

 

「これで終わりかね。帰るのかい、騎士様」

「んで……」

「は?」

「何でお前はあの時いなかったぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 レメディオスは過去に絶望していた。こんな男が近くにいたのなら、なぜ聖王国のために戦っていなかった? おかげで自分があの魔導王を招き入れ、国は変わった。

 いや、そもそも……セシルが聖王国の住人という自覚があったのならヤルダバオトに主君と妹を殺される事自体が無かったかもしれない。

 理不尽なことを言っている……いや、言っていない。理不尽なのはこの男の方だから。

 

 

「世捨て人だと! ふざけるな! 貴様のせいでどれだけの民が苦しんだと思っている!?」

「おいおい……落ち着けよ」

「落ち着けるか! 貴様がいれば、あのヤルダバオトだって倒せていたかもしれないじゃないか!」

「そんな事言われてもな……大体、俺は聖王国自体知らなかったし」

 

 

 レメディオスは悔しくて兜を地面に叩きつけて、何度も地団駄を踏む。こうして真正面から見れば分かる。この男は生物としての格が違う。そんな存在が自分に今更協力している。そんな状況が耐えられない。

 レメディオスはアーマットの集落を壊し尽くすまで八つ当たりを続けた。

 

 

「……で、落ち着いたか?」

「ああ、腹立たしいがな」

 

 

 まだ怒っているらしい態度にセシルは感心する。あれだけ破壊すれば普通は精神が抑制される。セシルにとっては羨ましいほどだ。

 

 

「分かってるだろうが、お前さん達の過去に俺は謝らんぞ。その時いた者で何とかしなければならなかったんだからな」

 

 

 知っていれば参戦したかと言われれば、セシルはそれも怪しい。元々人間社会から距離を置いて、無限の寿命を浪費していたのだから。それを思うと現在はレメディオスの炎のような気性につられる虫のようなものだ。

 

 

「分かるものか。力ある者が弱者を助けるのは当然のことだ」

「自分たちを弱者だと規定するのもどうかと思うがな」

 

 

 レメディオスは今、無い頭で考えている。今更強者を見つけ出してどうするかと。時間は巻き戻らない。忠誠を誓った聖王女も妹も死んだ。だから自分で考えなければならない。

 

 そうして思いついた。カルカ聖王女が倒れても、その思想は残せる。そう。この南部だからこそ可能だ。

 

 大きく傷ついた北部では、忌々しい魔導王の影響を受けた教えが広がっている。だが南部は違う。貴族勢力が未だ根強い南部では、下剋上を招くその教えは忌避されている。

 そこでレメディオスがどう権力を握るのかは、自分でもさっぱりだったが。

 

 

「おい、償いはしてもらうぞ」

「何だ。また亜人とかと戦えと? 種族の絶滅なんかは土台無理な話だぞ? ちょっと残ってしまえば、また繰り返しだ」

「違う、そんなことじゃない」

 

 

 そのようなことに耽るのなら、防壁の外……東のアベリオン丘陵で行うべきだ。そこにしたところで、ヤルダバオトと魔導王の戦いで、全種族が混乱の極みだろう。いずれ利用すべきかもしれないが……

 

 

「これからも私のもとで戦え。全力でだ」

「まぁ50年ぐらいなら良いけど……」

 

 

 セシルの種族は寿命が無いに等しい。ゆえにこの程度(・・・・)の頼みになってしまう。レメディオスには冗談に聞こえてしまったが、レメディオスにセシルが裏切らないという直感があるのは確かだ。

 そうカルカの支配でレメディオスが武力的後ろ盾になっていたように、セシルにレメディオスの後ろ盾になってもらう。それはすなわちカルカの理想の後ろ盾である。

 

 自分の弱点である頭の弱さを補う者を見つければ……「弱き民に幸せを、誰も泣かない国を」という教えを後世に伝えていけるだろう。

 

 ……南部とカルカの対立があったことや、あてのない人材集めだということ。それにセシルが飽きないかを考慮していない、レメディオスの夢想が始まった。

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