【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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影から胃痛

 アインズは影からその戦いを見ていた。純粋にセシルの戦闘能力を見たいというのもあったが、それ以上に何でこんなことになっているのか分からないからだ。

 

 親睦試合という名目と、他の守護者達が介入しないことから殺す気は無いようだ。だが、戦っているシャルティア自身は痛めつける気満々である。

 

 

(どうして、こうなったんだ?)

 

 

 アインズに覚えはない。いや、もしかすると日頃の何気ない会話からこの事態に陥った可能性が高い。なにせアインズは凡人であり、一週間前のこともよく覚えていない。

 文字通り無い脳みそを絞って考えると初めてセシルと出会った日が思い起こされた。

 

 

『構わんぞ、デミウルゴス。これでやつに首輪ができ、計画に支障もない。なにより、あの男には利用価値がある』

『――なるほど。そういうことですか』

『フッフッフ。そのようなことは考えていないぞ、デミウルゴス』

『フッフッフ。ええ、分かっておりますともアインズ様』

 

 

 何がそういうことなのかさっぱり分からなかった会話。アインズにとってはお茶を濁すだけの会話だが、デミウルゴスにとっては違った。

 

 

(あれかーーーー!)

 

 

 アインズが立てたとデミウルゴスが思っている策に、セシルが確実にナザリック側に立っている必要があるのかもしれない。そのため親睦試合と称して、力の差を見せつけているのだ。セシルと同等の存在がこれほどいるんだぞ、という主張か。

 

 

(それにしても、強いなセシル。信仰系前衛職なのはシャルティアと同じだが、それだけに差が見えている。ユグドラシルでも運動神経高い方が前衛は有利だったし……たっち・みーさんと同タイプか? まぁ装備とスキルに差があるから、あそこまで化け物じゃないけど)

 

 

 そんなことを考えている場合ではないのが惜しい。これからデミウルゴスのメンツを潰さないように戦いを止めなくてはならないのだ。セシルを使った策などアインズにはこれっぽっちもない。だが、あるように見せかけながら、威厳を損なわないようにしなければならない。

 

 できればこうした出来事が起きないように、セシルをNPC達に認知させる必要がある。彼をナザリックに益のある協力者であることを知らしめるか、自分自身がそう思っていることを伝えるのだ。

 

 アインズの無い心臓が高鳴る。部長にでも呼び出された気分だった。しかも資料も何もなしだ。

 

 だが、アインズにとってセシルは味方でいて欲しい存在だ。いや。この世界に転移したプレイヤー同士として、友人関係にまで持っていきたいのだ。

 

 

「双方、それまで!」

 

 

 シャルティアが大怪我をする前に、なんとか声を発することができた。あとは堂々たる振る舞いを見せながら、事態を収拾しなければならない。

 

 骨の両手を打ち鳴らして拍手をしながら、アインズは守護者達に近づいていく。守護者達はひざまずき、立っているのはセシルだけだ。

 

 

「シャルティアよ。見事な戦いぶりだったぞ」

「は、はい……ありがとうございます! アインズ様!」

「どうだ、我らが協力者も中々の腕前だったと思わないか? うん?」

「は、はいぃぃ」

 

 

 暗に怒られていることと思ったシャルティアはがくんがくんと頭を揺らしている。それに対して、他の守護者達は冷静なままだ。

 これはやはりデミウルゴスの作戦の一部なのだなと思いつつ、デミウルゴスとはなるべく目を合わせないようにした。

 

 

「セシルよ。お前も見事な腕だ。かつての仲間たちを思い起こされた。感謝しよう」

「あー、ありがとうございます。陛下」

(なにこれ、どうなってるの)

(知らん! なんとかなるよう調子を合わせてくれ!)

 

 

 アインズはぐるりと守護者達を見渡した。かつて、自分もミスをすると言ったはずだ! ならばこれもなんとかなるはずだ、と自棄を起こした。

 

 

「すまんな、デミウルゴス。至らぬ我が身を許してくれ」

「アインズ様……?」

 

 

 そして、ばさりとジルクニフのように衣を翻させて、声高らかに宣言した。

 

 

「私はこれまでセシルを協力者として遇してきた。だが、この才と人柄はそれには惜しい。このアインズ・ウール・ゴウンの友人として迎え入れたい」

「それは……」

「アインズ様が仰るのなら、それが正しいんじゃない?」

「武人トシテハ歓迎デキルガ……」

「このナザリックにおいてアインズ様のお言葉は絶対。いや、世界中のどこにあってもです。我々もまた、セシル殿に頭を垂れましょう」

 

 

 デミウルゴスの発言を合図としたかのように、守護者達がセシルに向き直る。

 

 

「これまでの非礼の数々。お許しくださいセシル殿。我らもこれより敬意をもってセシル殿を迎え入れましょう」

「いやいや、そう畏まらないでください。私もまた、魔導王陛下の協力者として依頼を受けていくだけです」

 

 

 表向きにこやかにセシルはアインズの友人という肩書が増えた。場をあらためてセシルはアインズと向かい合って茶を飲んでいた。アインズは縮こまったような姿勢になっている。

 

 

「部下を制御できてないとは聞いていたが……」

「いや、本当にすまない。ここまで直接的行動に出るとは……」

「大体お前の友人って何するんだ。公然と茶を飲みに来れるようになっただけだろ」

「もちろん、相応の礼は出す。人質も解除する。その代わりと言っては何だが引き続き、力と知恵を貸してくれ。俺の友人でいて欲しいというのは本当だ」

「愚痴の話し相手の間違いでは……」

 

 

 セシルはしばらく黙っていた。何か気に障っただろうかと焦るアインズにセシルはぽつりと言った。

 

 

「あの連中はお前がいないと生きていけないんだな。うちの奴らはそうでもなかったようだよ」

 

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