【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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支援要請

 馬がいななき、馬車の再始動を促す。セシルは白髪からホコリを面倒くさそうにはたき落としながら、ちらりと馬の方を見た。

 

 

「なんだか仰々しい名前の集団だが、道を急いでいる。とっととどいてくれ」

「ふむ。我々を見て怯えぬか。思っていたより弱者なのか? それとも……」

 

 

 規格外の強者なのか。漆黒聖典の半裸の男は測りかねた。一方のセシルの方は彼らの力は大体想像がついている。威厳をまとっているが、自分には脅威に感じられない。大体レメディオスかそれより少し上の集団だろう。

 

 

「とりあえず弱い人を巻き込むのは反則ということにしよう」

 

 

 セシルは直刀を何もない空間に突き刺すような動きを見せた。するとそこから血しぶきが舞い、奇妙な金属板を身にまとわりつかせた男が現れた。その様子に王国の使者は思わず絶句し、顔面が蒼白になった。

 直刀は暗殺者の肩をえぐり抜いていた。

 

 

「彼の動きを見抜きますか……想像以上の強者ですね。アダマンタイト級冒険者のセシルさん」

 

 

 金髪で温和そうな男が、称賛するように片手を上げた。奇妙な格好をした男はそれで馬車から離れていく。暗殺者じみた男を殺さなかったのは単なる気まぐれだと感づいたらしい。

 金鎖では比較的大人しくしていたセシルだったが、金髪の男はセシルのことも知っていた様子だ。余程前から見ていたようだった。

 

 

「それで用件はなんだ。初対面だが既に印象悪いぞ、お前ら」

「用件ですか。率直に言えばまず貴方を仲間に引き入れたい。そして、次に王国が勢力を残したまま魔導国に併合されるのを避けたいといったところです」

「嫌だね。俺の仲間はもういるし、現在その魔導国に向かって仕事の最中だ。仕事はちゃんとやらないとな。それで、そこをどいてもらえるんだろうな?」

「我々としては穏便な方だったのですが……王国に残った貴方の仲間を勧誘しに行っても?」

「それは自由だ。あいつらは立派な冒険者だからな。自分の行く道など、俺に聞くまでもない」

 

 

 少しだけ眩しさを感じるが、彼女達は自分がいなくても生きていける。この漆黒聖典とやらにレメディオス達が入りたいというなら、それも良いだろう。

 だから、今セシルがやっている仕事とは無関係だ。

 

 

「十秒以内に道を開けないと、全員殺す。十、九……」

 

 

 温和な男が頷くと、彼らは素直に道を開けた。だったら最初から妨害なぞするなよと思いながら、セシルは後方の馬車に合図して移動を再開した。

 馬車の横に移動しながら、いかにも気怠そうな格好をした女が不服そうに口を開いた。

 

 

「ちょっとー、あんなやつに言わせておいていいの?」

「良いんですよ。あくまで自由意志に任せた勧誘ですから……それとも勝てましたか?」

 

 

 半裸の蛮人は真剣に小首を傾げながら考えてから、言葉を発した。

 

 

「いや……なんとなくだが不可能に思える。一瞬見せた動きは間違いなく強者だが、それでいて何も感じなかった。次元が隔絶しているのかもしれん」

「貴方がそう言うのなら、我々では無理だったということでしょう。このことは上に報告するだけにして、蒼の薔薇や朱の雫などに粉をかけに行きましょうか」

 

 

 今の男が魔導国側の人間では無いといいのだが、そう思いながら職務に戻ることにする。漆黒聖典はスレイン法国の特殊部隊だ。勝てない相手に躍起になったり、帰還できなくなる状況になるようなことはしない。それが軍人と冒険者の違いと言えるかもしれない。

 

 

「全く、余計な時間をくった」

 

 

 依頼を果たすだけならセシル一人の方が圧倒的に早いのだが、王国の使者を伴っていなければ親書の意味は無い。そう考えると先の邂逅は案外、危険だったかもしれない。守りながら戦うというのは、どんなアクシデントが起きるか分かったものではない。

 無論、敗けることは無いがセシルはこの世界の存在を軽く見るようなことはしない。武力的に優位でも精神面の強さは別なのだから。

 

 途中の街で馬を替えながら、馬車とは思えない速度で進む。走ったほうが速いセシルは馬に悪いとは思いながらも、護衛のために酷使し続けた。

 そうして魔導国の勢力下にある街、エ・ランテルへとたどり着いた。都合よく(・・・・)、魔導王はエ・ランテルにいるらしい。

 

 使者は検閲所で簡単な説明だけ受けて、薄汚れた服を着替えて謁見に臨んだ。セシルはようやく終わったかと思いながら、庁舎には入らず馬車の中で待った。後は予定された結果を待つだけだ。

 

 

「本当に亜人と人間が一緒に暮らしているんだな……」

 

 

 セシルは感慨深く馬車の窓からエ・ランテルの街並みを眺めた。かつて見た世界でも同じ街に亜人と人間種が一緒にいることはあったが、どちらか一方が明らかに優遇されていた。

 あの奇妙な茶飲み仲間の偉業だろう。もしくはその部下の。このような光景を彼は本当に世界中に広めるかもしれない。

 

 そんなことを考えながら待っていると、庁舎の扉が勢いよく開かれた。異様なローブに身を包んだアインズが先頭に立ち、その横には青ざめて体が震えている王国の使者がいた。まぁアンデッド相手に謁見など刺激が強すぎたのだろう。

 

 

「王国からの支援要請、確かに請け負おう!」

 

 

 その声はセシルの耳にまで届いた。というよりはセシルに聞こえるように言っているのだろう。王国の反乱分子達の上にギロチンの刃が設置された。

 

 




そろそろ需要なくなってきた感
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