魔導国の支援部隊は充分以上に物資を用意し、荷物の運搬には
警護につくのは
「壮観ですな。デス・ナイト達だけで、戦場で出くわした者達は震え上がるでしょう」
表向き魔導王とは関係ないセシルは口調をあらためて言う。喋っている内容はいつもどおりに素直だった。デス・ナイトは総勢200体を数える。正直、これだけで国を落とせるだろう。
「ありがとう。君のように優秀な人間に褒められるほどではないがな」
アインズとセシル、王国の使者は魔導国の豪華な馬車に乗っている。元の速荷馬車も後日届けるとわざわざ言われている。
アインズはスケルトンだが顔つきや装束に威厳がある。同乗した使者はできるだけ隅に寄ろうとべったりと端にくっついている。
(なんだこのデス・ナイトとソウルイーターの数。わざわざ策謀しなくても、普通に王国侵略するの余裕じゃないか)
(日課の作成数制限を無駄にしなかったんだ。ぶっちゃけ余っているから、働かせるには良い機会だ。それにこのぐらいの数じゃないと見た目にインパクトが出ないだろう?)
哀れな使者を放っておいて、無詠唱化した
とはいえ、王国への支援に王たるアインズ自身が出向くことは意外だった。片手間にするだけの物資と人員の余裕が魔導国にはあったはずだ。
「それにしても、魔導王陛下自らが向かわれるとは。お国柄でしょうか? ねぇ使者殿」
「そ、そうですね。このようなことになり誠に……」
「その先は無用ですぞ使者殿。王国の危機的状況を救わんがため、過去の遺恨を水に流さんとしたザナック殿下と、そのために走った使者殿の内心を考えてのこと」
「はいぃぃ……ありがとうございます……」
哀れなのは怪物と怪物に挟まれた常人だ。だが、常人で良かったとも言える。半端に強者であったのなら、それこそ力量が分かり失禁しかねない。
二人は同乗している一人を孤立させないだけの
ここまでわざわざ遅い手段を使って来たのはなんだったのかと思うほど、帰り道はあっさりとしたものになるのだ。
「いきなり王都に乗り込んでは迷惑だろう。都の中には兵は入れないよう少し離れた場所を選んだが、それで良かったかな?」
「は? は?」
「魔法で転移……というよりこの場合近道を作るのですよ。それで出現地点に気を遣った……と、魔導王陛下は仰りたいようです」
「はぁ……その……お願いします」
王国は魔法を軽んじる気風がある。そのため、瞬間的な移動の知識が無いのだ。第3位階にも距離は限られているものの、
「では支援行動を開始するぞ。先触れを出せ」
アインズが窓からデス・キャバリエに指示を出すと、伝令のように先頭へと駆けていった。セシルも知らないが、デス・キャバリエは以前も王国への使者として使われたことがある。そうした面での配慮だった。
デス・キャバリエ達が門の向こうに消えてから、セシル達の馬車が静かに動き出す。
「え? あの黒い丸に入るのですか? 本当に?」
「そういえば何で、あの手の門は黒とか紫なんでしょうね? 別に他の色でも良いでしょうに」
「一般的なイメージの問題ではないかな。魔法の色を変える実験でもしてみようか……」
「う、うわぁぁぁ!」
馬車が黒紫の穴に入り込むと、呆気なく何の感動もなく王都リ・エスティーゼの門前に到着していた。叫んでいた使者は狐につままれたような顔をしていたが、門前で待っていたザナック王子達も似たような顔をしていた。
それでも取り乱さずにいたのは流石。ザナックは歩みはじめて馬車の近くまで来た。
「魔導王陛下自らお越しとは……今回の我が国への救援。国を代表して感謝申し上げます」
「顔を上げてくれないかザナック王子。食糧はすぐに届くが、貴国の窮状に対して私はまだ何もしていない。貴国とは因縁めいたものがあるが、これから良き関係を築きたいものだ」
「その件については後ほど取り決めましょう。我々としてもできる限り譲歩したいものです」
ザナックに連れられてアインズが門を潜っていく。これでセシルの当面の依頼は終わりだ。きっかけを見たものとして最後まで見続けられるといいなと、思った矢先に視界はふさがれた。
アインズがいなくなるまで隠れていたのか。もっともアインズはそれに気付いていたに違いないが。
「セシルさん! お帰りなさい!」
「飛びつくとは意外と子供っぽいことをするなカルは」
くるくると回転してからセシルはカルカを下ろした。それを何故かぶすっとした顔でレメディオスが見ており、ケラルトが苦笑している。
「俺がいない間になにか……あったみたいだな」
「それなりにな。まぁ私にかかれば問題ない」
「真っ先に突入したのは私なんですが、姉様……」
「俺も変なのに出くわしたよ。まぁこれから先のことを話すには良い機会かもしれないな」
宮殿に向かう前に、どこかに寄ろうか。ザナックの安全はアインズが近くにいる以上、問題はない。それぞれが目的に向けて真剣に話し合う時が来ているが、笑顔の一つくらいはあっていいだろう。