【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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開戦の前に

 セシル達“金鎖”は城壁の上に立ち、二人の為政者の護衛についていた。セシルはアインズに護衛など必要ないと知っていたが、ザナック王子には必要だと常にカルカ達三名をつけていた。信仰系のマジックキャスターであるカルカとケラルトならザナックが傷を負ってもすぐに回復できる。

 セシルは護衛対象であるアインズが何をするか分からないので、そちらについている。

 

 

「ふふふ……知ってはいたが、レメディオス団長が冒険者とはな。世の中、何が起こるか分からんものだ」

「ああ、そうか。面識があったんだったな」

「あまり良い関係は築けなかったがな」

 

 

 少し離れて小声で会話をする。兎の耳(ラビッツ・イヤー)を使われでもしたら聞こえてしまうだろうが、アインズはあまり気にしていないようだった。

 ザナック王子の近くに戻ると、彼の顔が少し青ざめて見えた。

 

 

「壮観だな。アンデッド騎士団とでも呼ぶべきでしょうか?」

「いやいや、貴国のために急いで作った部隊。そう大したものではありませんよ。もっとも戦力的には充分な量を揃えたつもりですがね」

 

 

 ソウルイーターに騎乗するデス・ナイトというのもユグドラシル時代では考えられなかったが、この世界ではこのような応用ができるらしい。

 城壁の下にはそんなまさに騎士となったデス・ナイト達とデス・キャバリエが陣形を組み、出番を今かと今かと待ちわびている。物資は既に王都へ移動した後だ。疲労も眠気もない彼らにかかれば夜のうちに済んでしまったらしい。

 

 アインズは謙遜して言ったが、下のアンデッド達は中位のモンスター達だ。実力的にはこちらの世界の兵など相手にもならない。禍々しい瘴気のようなものが見えているのは、これだけの数が一箇所に集まったためか。

 

 カルカ達もそれを見ているが、彼女達はなまじ強者である分この軍勢がどの程度の力を秘めているか分かってしまっている。折れない心に拍手されてもいいぐらいだ。

 

 この軍勢にかかっては反乱軍など物の数ではない。ザナック王子が魔導国と同盟を組む決心をした時点で、内戦の趨勢は決まっていたのだ。

 ザナックの内心は悪魔にでも魂を売ったような気分になっていたが、それを見せることはしない。

 

 

「殿下の決断一つで、この軍勢を動かして敵を滅ぼすことができます」

「ああ……一刻も早くこの事態を収拾せねばなりませんね」

 

 

 派閥も違えば、考え方も違うが相手は同じ王国の民。反乱軍が魔導王の動きを知り、降伏してくれれば良いのだが……そうはならないだろう。

 ザナックの王道は血と泥で始まった。せめて、王国軍も共に動いて矜持を示すことが精一杯だった。

 

 魔導国の支援が決定したことを告げる使者が反乱軍に向けて出発した。使者の働き次第によっては貴族派閥に徴兵された兵だけでも助かるかもしれない。それを以て今日の政務は終わりを迎えた。

 だが、レメディオスとセシルは残って練兵場に赴いた。理由は簡単で魔導国から流れてきたルーン武器の扱いを教えるためだ。

 

 

「それほど扱いは難しくない。馴染みの無い技術ではあるが、基本はエンチャントされた武器と同様だ。つまり手を通じて念じるような感覚で……ほらできた」

 

 

 セシルの手元で簡素な剣が燃え上がった。それと同時におおっという声が上がる。セシルとしては当然のことだが、徴集された兵にとってはそうではない。例え一文字か二文字ルーンが刻み込まれたものであっても、魔法の武器だ。戦士にとっては当たり前に欲しく、農民たちにとっては子供のころに夢見た魔化された武器なのだ。

 日頃、やる気のない民兵達もこぞって鍛錬に注目し実際に使用する。スペシャルなんたらを見せて回るより、安価な魔法武器としての側面を見せたほうが宣伝になるのではなかろうか。今度会った時に言ってやろうかなと思っていると、気合の声が想像を妨げた。

 

 

「いいか? 手に向かってぐぅうううとやって、剣がぐわぁぁぁとなるイメージだ。一度成功すればもう完全に習得したと同じだ。ほらやってみろ」

 

 

 半信半疑で民兵は奇妙な体勢で、ぐぅうううと呻いている。どう見ても異様な光景だ。それでも火を出すことに成功した者が数名いた。案外、教え方として正しいのかもしれない。

 レメディオスは昔、聖騎士の団長だったそうだが、その頃からこんな感じだったのだろうか? 団長、団長ってなんだ。アレでいいのか。

 

 

「……レメのところで失敗した者はこちらに来い。逆に俺が教えて失敗した者はレメのところにいけ」

 

 

 まぁ良し悪しということなのだろう。それにしても民兵はよく従ってくれる。それはアダマンタイトのプレートのおかげだった。アダマンタイト級冒険者は生きた伝説、単なる騎士などより余程尊敬されているそうだ。

 その後は同士討ちを避けるアドバイスをしていく。炎の剣は騎馬兵が乗る馬に対して、効果が強い。敵にやるのは結構だが、自分達の馬を混乱させても仕方がない。

 魔剣の扱いの難しさは発動させることよりも、加減と停止にある。そのあたりを民兵に覚え込ませるようなことはできないが、注意事項として伝えることはできる。

 

 

「レメ、そっちはどうだ」

「ひゃいっ! いや、大丈夫だ。ただ私は人に教えたことがなくてな……その、アレだ。むしろお前に教わりたい」

「俺のシチセイは自己強化の塊で聖剣とは扱いが違うが……まぁいいか。俺達も一緒に鍛錬することで、兵達も分かりやすくなるかもな」

 

 

 出兵の時期は近い。ザナック王子が魔導国に対する謝礼が決まれば、すぐ動くだろう。セシルは珍しく、民兵達の出番は少ないと思いつつも周囲のためにできるだけのことをするつもりでいた。

 そんなセシルの様子をカルカは城壁の上からじっと眺めていた。

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