・セイクリッド・フェンサー
・テンプラー
・クレリック
・ハイクレリック
・バトル・クレリック
など
南部の要衝である都市デボネ。先の戦役でも前線になると目されていた堅牢な都市である。そこの宿屋兼酒場でレメディオスは黄昏れていた。
その理由は簡単で、自分の人望の無さにあった。自身の頭脳となるような人材集め、貴族達との折衝、全て失敗している。
「なぜだ! カルカ様の想いの分からん奴らめ!」
水の入った木製のジョッキを机に叩きつけると、周囲の客たちすら迷惑そうな目で見ていた。とても元聖騎士団長とは思えない。
それも当然で、レメディオスは貴族達からの評判は元々悪い。ヤルダバオトによる襲撃以降、より頑なになった後は更に悪くなった。
加えてレメディオスの妹であったケラルトが対立貴族に対して容赦なく対処してきたこともあり、いまではレメディオスにその憎悪もプラスされていた。
向かいに座って、荒くれぶりを観察していたセシルは興味深そうな顔をするだけだ。
聞けば既に新たな王が立ち、レメディオスの慕う前聖王は南部を掌握しきれていなかったという。そうなればどの階層の人々も新しい王にすり寄るのが普通だろう。
そんな単純なことが理解できず、本気で怒っているレメディオスは枯れたセシルにとって飽きない存在だ。
「以前、お前さんを補佐していた人物とかは使えないのか?」
「グスターボか。あいつが今は騎士団長だ。それに軍略などでは頼みになったが……」
政略的には向いていない……というより分からないのだろう。この国の聖騎士は実戦的な役割が大きく、いわゆる貴族としての騎士ではない。期待するだけ無駄かもしれない。
「とすると、お前さんが短気を抑えるか、立場を変えるかということになるが……」
優秀で小回りの利く存在は権力者にとっては欠かせないものだ。レメディオスが今までの確執を超えて、怒りを抑えて忠勤すれば気に入る貴族もいるだろう。
後はレメディオスが完全に南部寄りの存在になる場合。これが一番手っ取り早いだろう。一般的な兵相手なら文字通りの一騎当千だ。北部と南部が対立しているというのなら、諸手を挙げて歓迎される。
「乗り気じゃなさそうだな」
「当たり前だ。聖騎士は聖王に忠誠を誓う。今はカスポンド陛下だが……」
「それでも前の王が良いという思いを捨て切れないか。難儀なことだな。だが、どっちかをはっきりと切り捨てなければ、苦しむだけだ」
「私の苦しみなどどうでもいい。カルカ様の正義が残り続けることが重要だ」
なら切り捨てる側は決まっているじゃないかとなるが、レメディオスにとってはそうではないのだろう。将来的に北部と南部で争いが起きたりすれば、どちらにつくかで煩悶するに違いない。心情的には北部、理屈では南部といったところか。
「じゃあ後は地道にやるぐらいしかないぞ? 何でも南部の東には大森林があるそうじゃないか。そこの開拓を助けながら、教えを広めていくとか」
単なる新興宗教に過ぎなくなる気もするが、そこは言わないで置く。
「駄目だ。教えが根付かないし、時間がかかりすぎる」
「そういうところは分かるのかよ。率直に言って、カルカ様本人がいたところで、その正義は根付かないことも分かるだろ?」
「……っ!」
セシルは思いっきり水をぶっ掛けられた。それだけ痛いところを突かれたということなのだろう。レメディオスは地面を踏み鳴らしながら、店を出ていった。
前金で払っていて良かったな、と思いながらセシルも外に出る。城壁への階段を見つけて、そこに座ったセシルは珍しく悩む。
現状を打破できるかはわからないが、レメディオス自体を幸せにする方法ならあるのだ。
セシルのビルド……つまり、職業構成は信仰系戦士職である。いわゆる殴りヒーラーと呼ばれる存在で、圧倒的な回復力を基にしたソロプレイ向きのプレイヤーだ。余談だがバフも回復も一人でしてくるためPvPなどでも一対一なら果てしなく鬱陶しい。
それはともかく、戦士でありながら魔法も習得可能というわけでその中には蘇生系の魔法も含まれる。つまり死体の一部でも残っていれば第9位階魔法・
だが、傍観者としてのセシルが訴えかけてくる。それは本当に良いことなのかと。死すら超越した世界は確かに素晴らしいものだろう。だが、限りあるからこそ輝くものは消えてなくなる。現在のレメディオスの暗い輝きも消えて無くなってしまうのだろうか……
そしてセシルは蘇生術をばらまく趣味は無い。である以上、レメディオスへの贈り物は完全に特別扱いになる。
「第一……蘇ったやつらの立場はどうなる?」
レメディオスの主君、聖王女カルカ。そして妹ケラルト。元々かなりの権力者であり、蘇らせたのならば争いの種になるか日陰の身になるか。ついでに言えば彼女らが復活を望んでいるかも分からない。
何より……自分も彼女らの運命に連動して、世界と無関係でいられなくなる。あのうんざりするほど長く関わった社会に久方ぶりにご帰還となるのだ。
世捨て人という名のプレイヤーは、有名な思考のポーズを取ったまま動かなくなった。