【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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会議の後に

 ザナック王子と官僚達は大いに悩まされることになった。魔導王の軍勢は数としては少ないが、戦力として一級どころではない。それは歴史を紐解いても、裏付けられた。魂喰らい(ソウルイーター)が一つの街をほぼ壊滅させた伝説や死の騎士(デス・ナイト)のわずかな記録が残っていたのだ。

 ザナック王子は個人的にセシルを呼び出して、話を聞いた。夜だというのに、珍しく各尚書だけでなく重臣も集まっている。

 

 そこで珍しい人物とも出くわした。金髪だがカルカとは違い、健康的な魅力の女性だった。自分でそんな評価が出てくるとは、自身の内面が変わったかな? とセシルは考えた。以前は美女であることを気にしたことはあまり無かった。

 

 

「“蒼の薔薇”のラキュースです。貴方が噂の新しいアダマンタイト級冒険者の“金鎖”の方?」

「ああ。“金鎖”のセシルだ。よろしく頼む……それにしても、同じ用件で呼び出されたのかな?」

 

 

 “蒼の薔薇”はセシル達の正体を知っているラナー王女の手勢と言って良い存在であり、それゆえに接触を避けていたが今となってはどうでもいいことだろう。

 ラキュースの本来の名はラキュース・アルベイン・デイル・アインドラという長ったらしい貴族名だが、それを省略した簡潔な自己紹介だったと後からセシルは知ることになる。

 総じて好感の持てる女性冒険者だった。

 

 

「来たか。セシル、話し合いが堂々巡りになって退屈してきたところだ」

「はぁ。外の軍勢の評価とかですか」

 

 

 セシルの態度に幾人かの貴族は眉をひそめた。貴族に対する礼儀もなく、白髪頭をかきながら答えたせいだったがザナックはそれを見て面白がっているように頬を緩ませた。

 

 

「例えば、アダマンタイト級冒険者ならあの連中に勝てるか?」

 

 

 コウモリというのはこういう時、困るなとセシルは考えた。それは嘘を付かなければならないことにある。もっとも自分なら全滅させられると言い出した奴が、正気扱いされるとしたならばの話だ。

 だから自分がいない場合のメンバーで考える。アダマンタイト級冒険者なら、という質問なので嘘にはならない。

 

 

「一体、二体なら。運が良くても十体は超えないでしょうね」

「こちらも似たようなものです。もっともイビルアイならかなり粘れるでしょうが……数が数ですから魔力切れを起こすでしょう。つまり勝てるか勝てないかで言えば、勝てませんね」

 

 

 どうやらあちらにもイビルアイという名の切り札があるらしい。レメディオス達を見てきたセシルとしては、この世界では規格外の存在では無かろうかと思う。

 

 

「つまり、普通の軍隊なら?」

「練兵場にいる民兵とか、宮殿にいる騎士とかですか? 話にもならないでしょう。一体にも勝てないでしょうね」

「貴様っ……!」

 

 

 セシルのあけすけな答えに憤慨する貴族もいたが、ザナックが手を横に出して止めた。顔には苦笑と疲れが滲んでいる。ザナックは魔導王と共に彼の軍勢を実際に見ている。予測が補強されただけなため、皮肉げな顔をする余裕があるだけだ。

 

 

「つまり、利益が最大のものにならなければ、その軍勢がこちらを向くわけだ。代価は相応のものを払わなければならないと、実につまらん結論だ」

「やはり、反乱貴族の領地を渡すのが一番ではないでしょうか?」

「飛び地を貰っても嬉しくはあるまい。反乱貴族の土地を使って場所を整理して、隣接するよう組み替えるか。もしくはエ・ランテルと地続きな貴族に涙を飲んでもらうかだな。それでも駄目なら属国だ」

 

 

 あっさりと属国という言葉を口にしたザナックに対して、不満の視線が飛ぶ。魔導国の軍勢を引き入れる決定を下したのは彼なのだから、当然と言えば当然だ。

 だが、横にある国が王国をあっさりと武力で侵攻できる武力を擁していた。その事実を受け入れた者は視線を逸した。全てはエ・ランテルを割譲した日に決まっていたのだ。

 なにせ外に駐留している軍はあくまで支援の軍に過ぎない。それ以上の軍勢を魔導国が自国に残しているのは当然だろう。むしろ支援に対する見返りという形を取れる現在は幸運とさえ言える。

 

 そんな苦境を毒で乗り切らないといけない面々を前にして、セシルは早く終わらないかなとだけ考えていた。どう考えを弄ってもザナック以上の考えは出てこないだろう。

 そこに悪いけれどもと、思ってしまったあたりだけがセシルの変化だ。セシルは“金鎖”の者であり、“金鎖”に利益が無ければ動く気はない。

 

 

「政治向きの話になってきましたね。ここにいても役には立たないでしょうから、退出しても?」

「ああ、夜にすまなかったな。モモンの件以来、アダマンタイト級冒険者に過度の期待を寄せる者も多くてな……」

 

 

 期待の元になった件に関しても興味はなく、セシルは外へと出ていくことにした。ラキュースは残るつもりのようで、奇特な人物だと思っただけだった。

 宮殿を出てしばらくすると見覚えのあるシルエットが立っていた。話題の人物がこうしてホイホイと出歩いているのが滑稽だ。

 

 

「それで……ここでお前と出くわすわけか」

「そう言うな。宮殿内には入れて貰えなくてな。王城の貴賓室に変わりはないが、そこで部屋を借りている。良ければ寄っていかないか」

「いいのか。俺のことがバレても」

「我が魔導国は、真の冒険者を求めてもいる。勧誘の一環だ。もしもの時に備えてお前の仲間のところに転移門(ゲート)を開く用意もあるし、ハンゾウを送ってもいる」

「茶飲みにどれだけ警戒してるんだよ……まぁ、ここらへんでバレても良いかもな」

 

 

 セシルはアインズの後ろをゆっくりと着いていった。こんなことをしているからこそ、仲間たちは薄々感づいたのだろうなと思いながら。

 

 

 

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