【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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これから

 戦いはセシルの予想通り、魔導国の手勢の圧倒的勝利に終わった。事情を知る者なら誰でもそう思うだろう。しかし、多くの人々にとってはそうではない。わずか千にも満たない魔導国軍が、万を超える反乱軍に勝利するなど何の冗談だろう。

 実際、この戦場を知らない者にとっては信じられなかった。だが、方々に逃げた反乱軍の兵士たちが自ずと真実を語ることになる。

 

 

「色々と終わったな。反乱軍も二度と集結できまい」

 

 

 アインズは兵を散らした後のことを考えて、ハンゾウ達に反乱貴族達の捕縛も命じていた。彼らは意外にも王国軍に引き渡されて、正式な裁きを受けられることとなる。

 後は残党の処理だが、これはさすがに王国軍でもできることだろう。降伏してくる貴族はともかく逃げた兵の処理には大分時間がかかってしまうだろうが。

 

 戦争が一回の会戦で終わってしまったようなもので、アインズとザナックは1週間ほどで王都へと戻ってきた。民草はアインズの軍勢が通り過ぎた後で歓声をあげたため、魔導国が不快に思いはしないかとザナック達は気が気でない様子だった。

 

 あらためて魔導国の戦力を見た王国は、かなりの土地を魔導国へと割譲。時間を稼いで、自治権のある属国化を目指すようだ。

 セシルは今日、ザナックの護衛という依頼の最後の日を過ごしていた。

 

 

「やれやれ、やはり暴力の強い国こそが強国ということか。セシル、お前達はこれからどうするんだ?」

「色々と勧誘を受けましたが、とりあえず魔導国へと移籍する予定です。面白そうな仕事も提示されたものなので」

「王国を見限った冒険者も多いが、魔導国へ行ったものは少ないな。人材が減って頭が痛いよ……それで、最初から魔導国のスパイだったのか?」

「信じなくとも構いませんが、魔導王とは雑談ばかりしていましたよ。俺は機密を盗んだりとか、そういったことはあまり上手くありませんしね。まぁ政治が話題になることもありましたが、噂レベルでしたね」

「ふん……我々は搦め手を使うまでも無い相手だったということか。帝国との戦争では魔導王の個としての強大さ。そして今度は軍の強さを見せつけられた。確かに歯向かうような気力はもうないな……」

 

 

 ザナックの顔は皮肉げだったが、清々しい様子も見せていた。やることが定まったからで、セシルを恨む気持ちが起きないのもそこにある。

 

 

「魔導国へ行く冒険者か……まぁお前達の幸運を祈っておこう。なにせあんなモノ達がいる国に行こうというのだからな。いくらあっても困らんだろう」

 

 

 ザナックは冒険者組合で報酬を確かに受け取るよう言ってから、セシルに背を向けた。セシルもあの小太りの男の背中にこれから一国の重みが載せられるのかと思うと、複雑な心境がした。依頼とは言え長い時間を共有した男にこちらも幸運を祈ることにした。

 

 さて、セシルも魔導国に移籍する身として世話になった人々に別れを告げた。ブレインなどはあっさりとしたものだったが、ラナーとラキュースは複雑なようで形式ばったものになった。特にラナーからは何か不可思議な印象を持ったが、セシルがそれを看破することはできなかった。

 居を変えるというのも中々骨が折れるもので、屋敷の返却や冒険者組合へのあいさつ回りが終わる頃にはセシルも精神的にやや疲れていた。

 

 屋敷で過ごす最後の日。情勢が情勢なのでやや高価だったが酒や料理を買ってきて、軽い宴会のような席になった。長椅子に座ったセシルはカルカとレメディオスに挟まれる形となって、奇妙な配置になってしまった。

 

 

「そういえば、この中で魔導国に行ったことがあるのはレメだけなんだよな。どうだった?」

「どう、と言われてもな。エ・ランテルの建物などは王国時代のものだから、そう大差ない。異形種と人間種が共に暮す町と言えば聞こえは良いが、その分規律などは異常なほど厳しいな」

「聖王国も人魚(マーマン)と協力関係がありますが、それともまた違うでしょうしね……」

 

 

 カルカの声が耳元で囁かれるようなものだったセシルは少し震えた。

 魔導国への移籍に関してカルカは賛成してくれた。もっともセシルへの好意から来るもので、思案して決定されたことではないだろうが……ともかくリーダーである彼女が納得してくれたのなら話は早い。

 

 

「カル様、セシルに近づきすぎです。それはそうと、あそこの冒険者というのは何をするんだ? モンスターなど自分達でどうにでもできるだろう」

「現在の人間種の勢力圏から離れた、そんな場所への探索行などがメインと聞いているな。文字通りの冒険者を集めて、あらたな地を切り開くつもりらしい」

「ふぅん。厄介な所と繋がらなければ良いがな」

 

 

 意外なことにレメディオスは魔導国入りにあっさりと賛同した。相変わらず異形種が味方とは思えないと言っていたが、それとは別に心境の変化があったらしい。

 

 

「大陸中央には様々な種族の国があると、物の本にはあります。果たしていい選択かどうか……」

 

 

 移籍に難色を示しているのは、ケラルトだった。元々神官であり、異形種への見方も凝り固まっている。姉が賛同したので渋々と着いていくる……といった様子だ。現地で揉め事が起きないよう、注意せねばなるまい。

 しかし、ケラルトのものの見方では行くところはそれこそ無くなってしまう。故郷のローブル聖王国も今は親魔導国。スレイン法国には冒険者がいない。

 

 

「ケラは考え過ぎなのですよ。既に一度終わった命。真逆に行ってみるのも悪くはないではないですか」

「はぁ……カル様と姉様も難儀な男に引っかかったものです」

 

 

 確かに難儀だが、大恩ある身としては仕方もない。既に冒険者として築いた実績を活かさないのも勿体ない。

 明日からは“金鎖”の新しい旅が始まる。




ここから先書くとオリ展開とか設定が増えそうだし、終わらせた方が良いのかな…
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