セシルが
「セシルさんはアチラにかかりきりになっています。せめて私達はこの敵を相手取りましょう」
「こっちも只者じゃなさそうですけどねー」
彼女たちも素人ではない。対峙した相手の力量ぐらいはなんとなく把握できるのだ。少なくとも自分達と互角ということは理解していた。
「なに、先程アイツも一撃で吹き飛ばしていたではないですか! 我々にもやってやれないことはありません!」
「セシルさんを基準に考えるのもどうかと思いますけどね……」
ともあれ、かつてのような絶望的な戦いではない、気を引き締めれば勝てる相手だ。それを思ってなのか、何も考えていないのか……レメディオスが
「聖撃!」
その打ち込みは身の丈ほどもある大盾に阻まれてしまったが、盾にも剣の跡を残した。
現に巨体と言って良い
そうだ。レメディオスは考えなしで頭を痛くさせたが、その勢いでカルカとケラルトの心を和らげてくれた。そんな彼女の奮闘に続くのだ。
「
「天使も呼んでみましょうかー。最悪、盾にもなりますし」
方針が決まってからは早かった。カルカはレメディオスの位置に注意しつつ、強化された魔法を叩き込み、隙を作る。その隙をレメディオスとケラルトの姉妹が突く。特にレメディオスは仲間のことを完全に信頼しているのか、自由に動き回り剣による攻撃で的確に攻撃を加えていった。
予想外だったのは天使の活躍だった。
「おおおおおぉっ! コレで終わりだ!」
聖剣サファルリシアによる強化された聖撃が、とうとう
「かはっ」
レメディオスの鎧をフランベルジュが貫いていた。
即座に放たれたカルカの攻撃でデスナイトは塵にかえったものの、レメディオスの腹部の傷は深い。すぐさまケラルトが
前衛がいなくなったことで、セシルの応援には行けなくなったが、それは幸運というものかもしれなかった。
セシルと
この世界での前衛戦闘はやはり違う。そうセシルは唇を舌で湿らす。レベルはセシルの方が高いため苦戦というわけではないが、レベルが一定以上の者との争いは凄まじい緊張感をもたらしてくれる。
なにせ相手はオーバーロード。第10位階までの魔法を強烈に放ってくる。得意とするだろう時間に干渉する類の術は対策済みのため、それが致命傷になることはない。
しかし、それでも強力な呪文などは大迫力であり、背筋をヒヤリとさせてくれる。
そんな中を超速で駆け抜けながら、愛刀で相手を切り刻む。そして戦士職にはこの世界の武技は使えないが、代わりにスキルがある。
「クラフトピアス!」
鋭い突きで相手の命中箇所に応じてデバフを与える技だ。今回は足を突いて、機動力を削いだ。マジックキャスターと違い、戦士職は実際の動き方が求められる。相手が遅くなってくれればやりやすいというものだ。
「モンスターだからか、会話が無いのが辛いな……!」
あるいはNPCか。役目だけをこなすようにできている。戦闘相手としては楽しいが、コミュニケーションで盛り上がれる手合ではない。
そろそろ終わらせるか。多少無理すれば、強力とは言えダンジョンに配置されているモンスターを早めに処理することもできる。
『
セシルの体を対個人最強の炎が包む。ダメージを負う感覚は久しぶりだった。何より視界が赤で塗りつぶされ、息が詰まるのは昔を思い出す。
しかし、悠久の時を生きてきたセシルの冷静さを奪うには足りなかった。
「
信仰系第9位階魔法。相手を大地で挟み込み、様々な行動阻害などを起こさせる魔法だ。セシルが狙っているのは相手が動き回らないこと。
『タ……』
「遅い」
時間停止で抜け出そうとしたのだろうが、時間停止中は攻撃できない。だからどちらにせよ詰みだった……いやセシルが戦いを楽しんでいなければ結果はもっと早く出ていただろう。
頭蓋骨を縦に割られてオーバーロードは塵となった。