現在、セシルは
そうやって眼下に収めるのは聖王国の首都ホバンス。目的は元聖王女と元神官団団長の聖体……ぶっちゃけ遺灰である。それらに第9位階魔法・
遺体が損壊していても復活させることのできる
だから、これから遺灰のある聖廟まで侵入しなければならない。しかし、セシルには場所が分からないため、地上のレメディオスが到達するまで目立たずに飛んでいるわけだ。
……セシルが
むしろ蘇生に賛成だったことは意外だった。復活させても社会的地位はそうはいかないのだが……
地上に見えた松明の火をめがけてセシルは降下しはじめた。ここからは泥棒まがいの仕事になる。宗教色の強い聖王国では聖廟にも聖騎士が入り口を警備している。それを静かに突破しなければ、こちらの所業がバレる。
「聖王女様と妹の墓参りに来た。通せ」
「い、いえ、いくらレメディオス様でも、許可がなければそのう……」
「はっきりしないやつだ。通すのか、私と戦って通さないのか?」
「いえ、少しだけ忘れます!」
「よろしい」
よろしくないだろ、と言いたくなるやり取りを経て聖廟の扉が開いた瞬間にセシルは扉の隙間へ滑り込んだ。あの聖騎士は確実に覚えてしまったし、あとで報告に行く可能性が大きい。
「
範囲内の音を消す神官の低位魔法を使い、レメディオスの後を付いて行く。聖廟の中は石造りで平らな石を使ってできているが、装飾も無く、寒々しい印象だった。
一時的に透明化を解いて、音もなく進んでいく。足音がしないというのは奇妙な感覚だった。セシルはユグドラシル時代にもレンジャーのマネごとなどしたことがないのでこれが初の体験だ。
レメディオスも違和感があるのか、時折こちらを見たり、足を床にコツコツとつけて落ち着かない様子だ。
まず辿り着いたのは神官団長の墓所だ。王家の墓所はもっと奥にあるらしい。
「~~~~~~!」
取手の付いた壺をレメディオスが持ち上げてなにか言っていた。恐らくそれが妹、ケラルトの遺灰なのだろう。ここが問題だ。理想で言えば何処かへ持っていき、離れた場所で蘇生させたいが、聖廟の中から物を持ち出すというのは非常に見た目がよろしくない。流石にレメディオスの恫喝でもどうしようもない。
やむを得ない。ここで復活させ、
「
神々しい光が辺りを包む。聖廟が石造りで光が漏れないことに感謝するしかない。しばらくすると、レメディオスに良く似た、しかし長髪の女性がその場にへたり込んでいた。
レメディオスはそれに抱きつき、滂沱の涙を流していた。妹が困惑していることと、音がないことで少し台無しだが、感動的な光景と言えるだろう。
「―――!」
今度はセシルが音もない叫びを出して、レメディオスを妹から引っ剥がした。感動のところ悪いが、あと一回行わなくてはならないのだ。
レメディオスの意外な一面を見たが、涙を垂れ流させたまま、先頭を行ってもらう。
そしてたどり着いたのは恐らく霊廟の中央部分に位置する間。その中で一番入り口から近い石棺をレメディオスはバシバシと叩いた。
セシルが剛力でかつ慎重に蓋を外すと、副葬品と共に先程より装飾が施された壺が入っていた。
「
再び煌めきが場を満たすが、石棺の中で出現していく女性もそれに劣らない金色の髪を持っていた。前聖王女カルカ・ベサーレス……これで後戻りはできない。現在の政権を脅かす鍵を手に入れたことになる。
ケラルトとレメディオスはその前に片膝を突いて、頭を下げている。カルカは困ったように周りを見渡し、セシルと目が合った。セシルは肩をすくめて答えとし、ここから早く出たい気持ちを表現した。
その後、石棺の蓋を丁寧に戻し、墓所を後にするべく動き出した。門衛の騎士を魔法で何とか誤魔化し、3人の美女と一人の男は首都を後にした。
「うっふっふ、なるほど。事情は分かりました。それにしても。貴方はよく姉様について行けましたね」
どうもレメディオスとは違った方向で問題がありそうな話し方をするケラルトに、セシルは苦笑した。ここは南部のデボネの宿屋だ。部屋を借りて事情を説明し終えたところだった。
「ですが、時期の悪い蘇生ですね……お兄様とは争いたくありませんし、配慮に感謝します」
「え、なんでだ? 堂々とカルカ様が聖王女に返り咲いて、ケラルトも神官団団長になればいいじゃないか」
レメディオスの発言に全員が盛大に溜息をもらした。