【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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入り口

 単独行動は久しぶりだな、そう思いながらセシルは遠眼鏡でカッツェ平野の建造物を見張っていた。近くの窪地にはアンデッドが害虫のようにうごめいているのが見える。先日の戦闘以降知ったのだが死の騎士(デス・ナイト)はこちらの世界ではとても珍しいものらしい。

 アンデッドは放置しておくと、強い個体が湧く。恐らくはあのアンデッド溜まりの近くにオーバーロードがいたので、その影響があったのだろう。

 

 とうの建造物には動きがない。死の支配者の時間王(オーバーロード・クロノスマスター)は門番でもなかったのか? あるいはプレイヤーはもうあの建物にはいないのか。外に分かるように動きが無ければ、判断がつかない。

 

 

「……何かに似てるんだよな、あの建物」

 

 

 建造物は見れば見るほどおかしかった。四角い建物を斜めにつなぎ合わせて時々方向を変えれば、ああなるだろうか。遠眼鏡の倍率を上げると屋上部分には何かふさふさしたものが敷いてあるようだ。

 

 

「まぁ飯にするか……さっぱり分からんし」

 

 

 インベントリから今日の食事を取り出すセシル。今日はホットサンドのようだ。焦げ目が付いたのはカルカのものだろう。いびつに歪んでいるのはレメディオスのもので、完璧な形で作られているのはケラルトのもののような気がする。

 保存食でも良いのだが、こうした仲間たちの心遣いも悪くないように思える。そうしてセシルがもそもそと昼食を取っているうちに伝言(メッセージ)が届いた。

 

 

(今から転移門(ゲート)を出すぞ。準備しておいてくれ)

(ちょうど昼飯が終わったタイミングだ)

 

 

 黒い球体の門が出現する。そこからアインズを先頭にして、虫の姿をした巨体、頭の後ろで手を組んだ褐色の少女エルフが続いた。

 

 

「ご苦労だったセシル。ダンジョンらしき建造物を発見したのは称賛に値する」

「ありがとうございます」

 

 

 アインズがさり気なく入れてくるジェスチャーから『偉そうにしてゴメンね』というニュアンスが伝わってくる。セシルは曖昧に頷いて返した。

 

 

「我が国も大きくなった……フルメンバーとは言えんが、調査に必要な最低限の人材を用意した。既に顔見知りだったな。コキュートスとアウラだ」

「よろしくお願いします」

「前回はシャルティアとしか会話してないよね? よっろしくぅ!」

「アウラ、協力者ニ対スル態度ヲ忘レヌヨウ。第五階層守護者コキュートス。ヨロシク頼ム」

 

 

 以前戦ったNPCとは違い、友好的な印象をセシルに与えるメンバーだった。特にコキュートスという蟲人めいた姿の悪魔からは敬意を感じる。

 

 

「なるほど。アレが件の建造物か。確かに異質なものを感じるが、敵意があるかどうかは入ってみないと分からないな。占領するにせよ情報が必要だ。今回はそのための調査だ。威力偵察……だったか?」

「この面子だと俺がヒーラーですか?」

「そうだが、内部から応答が無い場合はアウラの魔獣を先頭に突入する。多少の敵なら押しつぶしてしまえるし、最悪盾となってくれる。すまないな、アウラ」

「い、ぃいいえ、いいえ。良いんですよ! 至高の御方のために働くことこそあたしとあの子達の役目です!」

 

 

 アウラはガッツポーズをしてみせた。真実、捨て石となって働くことを望んでいるのだろう。こうして見ていると、異常な忠誠心のように思えてしまうが、これがNPC……被創造物の一般的な思考らしい。

 小市民的な思考だとさぞ胸が痛むだろうと思ってみれば、アインズは意外と鷹揚にしている。子供にしてやるようにアウラの頭を撫でて、さてと切り替えた。

 

 

「では行ってみようではないか。未知を探求すべく」

 

 

 アインズを先頭に、カッツェ平野を移動する。建造物までの道のりでは何も障害が起きず、粛々とことは進んだ。そこでアウラの魔獣達が合流してきた。全てが高レベルのモンスターで、彼女のテイマーとしての力がうかがい知れた。

 

 

「……ここまで結界も妨害もなし。間抜けと見るべきか敵意がないと見るべきか。いや、相手を過小評価してことを進めるべきではないな。コキュートス、ドアをノックしてみてくれ」

「カシコマリマシタ」

 

 

 アインズとアウラの魔獣達に囲まれながら、固唾を飲んで見守る。巨大な手が扉に打ち付けられたと思った、そのとき手がドアに触れた勢いのまま簡単に扉が開いていた。

 

 

「……内部ニ、ギミックト思シキ像ガアリマスガ、イカガイタシマショウ」

「ギミック? まぁ入り口に置くのは悪い選択ではないが……アウラ、一体任せられるか」

「おっまかせください!」

 

 

 猟犬の姿をした魔獣が中に飛び込んでいく。が、少なくとも入り口には何もなかったのかすぐさま無事に戻ってきた。

 

 

「ふんふん。とりあえず入り口のギミックは攻撃的なものではないようです」

「そうか。では入ってみるとしよう」

「俺が先に行きますよ」

 

 

 並んで歩いて入り口に入った二人は絶句した。そこには確かにギミックと呼べるものがあった。台に載せられた2メートルほどの像が手を振り上げては下ろしているのだ。

 

 白を基調としてツルツルとした陶器状の猫の像だった。左手には輝く金の板がはめ込まれ、右手を半永久的に振り下ろしている。

 

 

「「招き猫じゃねーか!」」

 

 

 二人にしか分からない思いを込めた叫びが虚しく響き渡った。

 

 

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