【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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先鋒に

 いきなり既知文化が襲来した衝撃が収まると、色々なところが見えてくる。ここは間違いなくプレイヤーが関わった建造物であり、ユグドラシル時代は戦闘に積極的なギルドでは無かった可能性がある。

 

 

「アインズ様、招き猫って一体何ですか?」

「うむ。利益は色々だが、幸運を招く……要は縁起物だな。入り口に置いてあるということは本来なら歓迎の意味も込められているはずだが……現時点ではなんとも言えんな」

「流石ハ、アインズ様。ソノヨウナコトマデゴ存ジダトハ」

「ははは。そう世辞を言われるまでの知識ではないぞ」

 

 

 NPCに持ち上げられているアインズを見て、セシルは苦労しているなぁと平凡な感想を抱いた。以前から思っていたがNPCもこの世界にいる以上は、自我を持った生命体だと考えた方が良さそうだった。

 

 

「それでアインズ……様。今日のところはこの一階部分を調べるおつもりですか?」

「うん、そうだな。大事を取っての休息は重要だが、消耗していないうちに退くのも勿体なかろう」

 

 

 そうして招き猫の入り口部分を通りぬけると、広間のようになっていた。しかし、壁はパステルカラーで無駄に可愛らしくなっている。これではまるで子供向けの休憩所だ。

 

 

「うわっ。骨置き場がある」

 

 

 アウラが言ったとおり、部屋の隅には骨が山積みになっていた。形からして何かの動物のものであり、周囲の色と合わさって不気味な印象を与える。

 

 

「どれ、見てみようか」

 

 

 コキュートスにバフを山盛りかけていたアインズが、アウラとセシルの側によってきた。動物の頭蓋骨を一つ取り、少し集中した様子を見せると骨の山から頭蓋骨以外の骨が集まってきた。それらが合わさって一体の動物型スケルトンが出来上がった。

 スキルでアンデッド作成を行ったのだろう。

 

 

「これは……ただの猫だな。レベル1のNPCという可能性もないではないが……そこら辺にいる普通の猫と見たほうがいいように思える。動物相手にどこまで理解できるか分からんが、記憶を読んでみよう。各々警戒を怠るな」

 

 

 アインズが記憶を読んでいる間、警戒体勢に入る三人。アウラは弓を取り出し、いつでも撃てるよう構えている。コキュートスも4本の腕に3つの武器を持った。その真剣な様子は場にピリピリとした緊張感をまとわせるほどで、セシルはやや面食らった。

 セシルには苛烈なまでの忠誠心などないが、シチセイを取り出し武器を構える。魔導国の冒険者は国家に所属する組織だ。最高位の上役といえばアインズになるわけで、それに伴う義理は果たすべきだろうと切り替えた。

 のどかな内装の中、真面目に武器を構える光景ははたから見れば間抜けだろうが、ここにプレイヤーでもいればまさに死地である。気は抜けない。

 

 アインズは随分と時間をかけて記憶への旅を行っていたようだが、生物の一生だ。それも当然かもしれない。しばらくすると、骸骨の身でありながらふぅと息をはいた。

 

 

「これ自体はなんのことはない猫のようだが、プレイヤーらしき人物達に飼われていたようだ。それと見えた光景と音声からして、ここはギルド拠点ではなく後から作った……いわば別邸のようだな」

「となると、ここにギルド武器があったり、NPCがいる可能性はそう高くはないことになる……のですか」

「断言することはできない。である以上、警戒を解くべきではない。しょせんは猫の感覚から得た情報に過ぎんのだからな」

「シカシ、アインズ様。問題ハ、ココノ住人ガ友好的ナ場合デハナイデショウカ?」

「いいところに目をつけたなコキュートス。ここに勢力があった場合、友好的な関係を築いた方が利益となる可能性がある」

 

 

 確かに敵対する存在でもないなら戦う意味はない。相手が真っ当な知性の持ち主なら交友が結べるだろうが……仮にこの建物に誰かがいた場合、外がどうなろうと引きこもっていたものだ。かつてのセシルと同じように。

 だがアインズとしては高レベルの存在を放っておくという選択肢はないだろう。ならば……セシルにしかできないこともある。

 

 

「上の階に突入する時に配慮が必要だ。例え何もない場合でも、警戒しつつ友好的にというのは難しい。猫にこだわっている傾向が見られる以上、アウラの魔獣も最適ではない。だから、俺が様子を見に行くというのはどうでしょう?」

「お前が? 変則的だな……通常はタンクが先頭をきるものだ。しかし、ヒーラーとしては戦闘能力も高い……だが、いいのか? 場合によっては自分が戦闘の先鋒になる。プレイヤーを蘇生できるかどうかはまだ未確定だ」

「武器も構えずに行ってもいいのは俺だけです。その二人を失いたくはないでしょうし。最悪、集団相手になっても逃げられる可能性は俺が一番高い。まぁ助けは期待しますがね」

 

 

 アインズにとってNPCはギルド仲間が残した……いわば甥っ子や姪っ子のようなものだった。セシルはそこまでは知らないが、アインズが彼らを身内として愛情を注いでいるのは理解できた。

 ならば一番浮いている(・・・・・)のは自分だと考えたのだ。

 

 

「万が一のときは“金鎖”をよろしくお願いしときます」

「分かった。任せるが良い」

 

 

 大事が起こらなかったら間抜けな会話だなと考えながら、セシルは階段に足をかけた。

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