【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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前哨戦

 〈ユグドラシル〉において、物理系戦闘職は現実(リアル)における運動神経を要求されることがあった。ことがあった、というのは万事がそれではゲームとして自由度を大きく削いでしまうからだ。ゆえに運動神経の良さ、あるいは武術の経験があることを求められるのは雲の上。上の上の戦士に限られていた。

 だが、この世界では全員がそうだ。セシルは自分が徹底して我流の剣士であることを少し後悔していた。

 

 

「敵対行動!」

 

 

 そう叫んだので、十数秒でアウラかコキュートスが増援に駆けつけるだろう。アインズも動かない性質の者ではないが、NPCは忠誠からしばし押し止めるはずだ。

 拠点NPCが相手である以上、誰かが加わればそこで大幅に有利になるが……逆に言えばその十数秒はセシル一人での戦闘となる。

 セシルは感覚で相手の強さを感じ取った。自由意志を持ったNPCはAIによる稚拙な動きが無い。プレイヤーと同類同格だと見て良いだろう。この世界では珍しいレベル100との戦いになる。

 

 ケットシーは異形種で、どちらかといえばマジックキャスターに向いた種族である。そのため高位の魔法を警戒して、セシルは一瞬で懐に潜り込む。

 

 

「バイパーソード」

内部爆散(インプロージョン)

 

 

 命中させた相手を鈍化するスキルと、対象を爆裂させる魔法が同時に放たれた。セシルの一撃でケットシーは空中から叩き落され、復帰に時間がかかっている。手応えは柔らかいモノを叩いたようで、断ち切るとはいかない。やはり同格の防御力は剣で切断しきれないという理不尽を実現した。しかしダメージは確実に蓄積される。

 一方のセシルも第10位階魔法で体内を爆発させられたにもかかわらず、カートゥーンのように口から煙を吐き出すというデタラメぶりだ。高レベルの肉体は内臓まで強靭になっているのだろう。

 

 

「フー! シャー!」

「これは飯が入らなくなりそうだ!」

 

 

 煙は吐き出されるに任せたまま、倒れたケットシーへと剣を振るう。ケットシーも爪で応戦するが、肉体の一部である爪の性能は、プレイヤーが所有する武装に劣る。

 セシルとケットシーの能力差は装備によるところが大きい。異形種は素の能力値が高い反面、どうしてもどこかでデメリットを有する。かつてはバランス取りの一環でもあったのだろうが……あるいは単に主の趣味かもしれないがケットシーの装備は軽装にもほどがあった。

 

 

「おっ待たせ!」

 

 

 十数秒は経過した。扉を吹き飛ばしながらアウラが弓を携えての乱入だ。魔獣たちがなだれ込んで来ないのは、狭い室内ということを考慮してだろう。

 

 

「敵は一体。硬めのマジックキャスターで、レベルはおそらく100だ」

「おっけー。レベルが同じならこのまま弓で援護するね」

「またご主人の邪魔者かニャ! 掃除、掃除をしなけりゃ……」

 

 

 ぶつぶつとケットシーが呟きながら、浮き上がるのを横目にセシルは大治癒(ヒール)で自身のダメージを回復させた。ここがセシルのビルドのいやらしいところである。強大な火力に欠けるところはあるもののスキルで敵にデバフを、自己にバフをかけて回復までする。

 

 ともあれ単純に数が倍になったことで、ケットシーの敗北はほぼ確定したようなものだ。アウラの直接的な戦闘能力は低いが、後方から弓による援護が可能だ。

 

 

「コキュートスは?」

「アインズ様のそばに念の為付いてるよ。それより、何この変な生き物。ぶつぶつと気色悪いんだけど……んーテイマーとしてはそそられないなぁ。なんか人間っぽいし」

「そんなものか。空を飛べるようだから、この地形のまま戦った方が良い。下手に外に出ると面倒そうだ……?」

 

 

 わずかな振動を感じ取った瞬間、3階(・・)へと続いているであろう扉がぶち壊されて、白い虎が乱入してきた。ここは敵地。こちらと同様に敵にもまだ札があったのだ。

 

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