【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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時の流れに

 サバイバルゲームよろしく、3階に突入すると同時にセシルが入口の左側を、アウラが右側へと武器を構える。しかし、やはり先程の白虎しか配置していなかったのだろう。この部屋には他に誰もいなかった。

 

 

「コキュートス、4階への階段の前で警戒していろ」

「畏マリマシタ」

 

 

 アインズも大分警戒を緩めているようで、当面の安全が確認されると部屋へと足を踏み入れた。次の階への扉へはコキュートスが四本の腕でハルバードとメイスとブロードソードという四刀流で向かって、乱入者を警戒している。汽笛のように冷気を放出していて、やる気がうかがえた。

 

 

「と言っても、戦力の逐次投入は愚策というからな。4階にも敵はいないだろう。それでも備えておかなければな。石橋も叩いて渡れというだろう」

「さっすがアインズ様! アインズ様がおっしゃるなら絶対安全ですよ!」

 

 

 アウラの追従でコキュートスの吐いていた冷気が止んでしまった。コキュートスは今回一度も戦闘していないのだ。

 セシルとしてはそのあたりは身内で処理して欲しいので何も口出ししなかった。

 

 

「これまでの客を通すような造りと違って、実用的になりましたね」

 

 

 セシルは現実世界にあった猫カフェを思い出していた。1階と2階が客をもてなすメインでそこより上は倉庫や従業員通路……という構造だと覚えば分かりやすい。

 この建物自体は排他的雰囲気は無く、むしろ歓迎を主張しているように思われた。ケット・シーや白虎と戦闘になったのは住人が狂ってしまっただけなのだ。

 

 

「ふむ。倉庫のようだ……アウラ、セシル! 全ての棚などから物品をかき集めるのだ! 調度品なども忘れるな!」

「……はぁ」

「わっかりましたぁ!」

 

 

 セシルからすればイマイチ意図の見えない命令が飛んだが、アウラと話している間に納得した。

 ユグドラシル世界の金貨は物品をエクスチェンジボックスに入れないと手に入らない。そして、現実の通貨も何らかの手段で得なければならない。

 ということで火事場泥棒的な行為もアインズ・ウール・ゴウンには必須という。拠点を持つ彼らだからこその悩みだ。

 

 

「それでも国家規模になってるんだから、何とかならないものなのかね。こういう壺の価値とか分からないし」

「む、国家運営に必要な分は流石に何とかなってるよ。スケルトンたちで農場や鉱山を活動させる……まさに魔導国らしい生産さ。帝国とかドワーフ国との交易もあるし……」

「ほー、なら何に使われるんだろう」

「そこはアインズ様の深いお考えあってのことさ」

 

 

 深い考え……あるんだろうかとセシルは微妙な気分になる。実際にはアインズが国庫に手を付けるわけには行かないと考えて、細かく動くときの資金にしているのだ。大枚ではなく、小銭が必要になるときもある。

 冒険者モモンとして活動することはほとんどなくなったとはいえ、使いを出したり、お忍びで動きたいときもあるのだ。なので深い考えというよりは浅い事情というところだ。

 魔導国は望めば望むだけアインズに金品を献上するだろうが、アインズとしてはそんなことは望んでいない。正確には望むと期待されたり、支障が出たりと恐ろしくてできないのだが。

 

 

「結構、色々あるものだな。何に使ってたか分からない飾りとか……宝石付いてるから磨けば価値が出るのか? 考古学的な価値とか……」

 

 

 結局セシルとアウラは装飾品と調度品のほぼ全てを一箇所に集めて、アインズがそれをインベントリに収めた。

 

 

「さて、次の階だな。外から見た限りではそろそろ終わりだろうが……ここは結局何を目的として建てられたものだったのか」

「分かると良いですね。先に行きます」

 

 

 セシルは自分から次の扉へと手をかけた。いい加減慣れてきたことでもあるし、この建造物への好奇心も大体満たされてきた。

 扉を開いた途端、埃っぽい空気が舞った。この階はどうも他の階と異なって空気の入れ替えも何もなされていないようだった。視界も悪い。

 

 

暗視(ダーク・ヴィジョン)

 

 

 暗闇を見通せるようになる魔法を使い、セシルは慎重に進んだ。だが、なにも出てくる様子はなく念入りに確認した後、窓を開き外の空気を呼び込んだ。

 

 

「敵影なし!」

 

 

 報告を受けてアウラ、コキュートス、アインズの順に入ってくる。窓から入ってくる光で空間にあるものが見えてくる。

 

 

「ここは……さっきの階とは違って何もなさそうですね。目立ったものといえば、この人骨と本棚ぐらい。ベッドもありますが、人が住んでたのかな」

「NPCという可能性も高いな。寿命がある種族なら普通に老化して死ぬだろうからな。さて、貴重な本があればいいが……これは」

 

 

 バサバサと本棚の中身をインベントリからアイテムボックスに無造作に突っ込んでいたアインズが動きを止める。それは本といっても随分と原始的な感じを放つ、手稿と言ったほうが良い代物だった。

 

 

「ふむ。これはモノクルを使わなくとも読めるな……」

 

 

 探索も終わったため弛緩した空気の中、アインズがページをめくる音だけが響く。しばらくすると今にも崩れそうな本がパンと閉じられた。

 

 

「文字は欠けていたが、どうやらここはネコ何とかというギルドの別邸だったようだ。しかし、ギルド構成員たちが寿命で倒れてしまうとNPCたちが変調をきたし、暴走した結果として拠点は壊滅。寿命のない種族があの2体だけだったようだな」

「NPCが暴走って……それらしい話が残ってないということはレベルはさほど高くなかったのか?」

「分からんが……我がギルドがそのようなことはないよう努めていかなければならないな……」

「アインズ様……」

 

 

 どことなく物寂しい雰囲気の中で謎の建造物探索は終了を迎えた。アウラとコキュートスは主人に哀願するような目を向けていた。

 セシルは“金鎖”の3人に会いたくなってきた。いずれ別れが来てしまう仲間に……

 

 




ちなみに建造物は大型キャットタワーでしたが、出すタイミングを逃したのでここに書いておきます。
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