【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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竜王国へ

 セシルはエ・ランテル旧都市長館の応接間に待たされていた。メイドがお茶を淹れてくれたあたり、なにか敵意があってのことではないようだ。

 “金鎖”は現在、魔導国の冒険者である。他国の冒険者と違うのは国家に属しているという点にある。となると、なにか頼み事……表向きは依頼があるのだろう。それはそうと休憩時間を求めてもいるはずだ。“金鎖”のリーダーはカルカであってセシルではない。

 待つことしばし、茶色のおかっぱ頭のメイドが扉を開いた。セシルは茶番と思いながら、立ち上がり頭を下げる。

 

 

「ご苦労。頭を上げて良い。インクリメント、デクリメント、すまないが席を外してくれないか。内密の要件があるのだ」

 

 

 メイド二人は新参者と主を二人きりにしていいかどうか考えているのだろう。きつい目を向けた後、主人の言うとおりに従った。アインズの言は絶対なのだろう。

 柔らかい椅子にアインズは身を沈めた。セシルもそれにならって座りなおした。

 

 

「ふぅ。ここでは軽い会話もままならんな」

「拠点ほど防音仕様というわけではなさそうだな。あまり大きな声では話せない……まぁある程度かしこまればいいか。それで、今回の依頼は一体?」

「話が早くて助かる。竜王国という国を知っているか?」

 

 

 セシルの頭の中に地図が浮かぶ。カッツェ平野から南東にある国だ。ビーストマンの国と戦争中で、交通の便が悪い。

 

 

「位置と噂程度なら。どうやって行くかはともかくな」

「うむ。知っての通り我が魔導国はアンデッドを貸し出してもいる。大抵の場合は単純作業をするスケルトンが主だが……ここは戦力としても求めてくる珍しい国だ。アンデッドを嫌う法国とも交流があるので現在は競争の真っ最中だ。ここは穏便に友好国としての可能性を模索したい」

「そこで援軍として冒険者を?」

「うむ。法国も人間種の援軍なら文句をつけようもあるまい。そのうえで日をあらためてプレゼンテーションを行い、良い顧客となってもらう」

 

 

 聞いていると至極真っ当な話で、もっと難しい話を押し付けられるかと思っていたセシルは緊張を解いた。レベル100であるセシルがやられることは早々ない。加えてアダマンタイト級冒険者としての知名度も使える。

 

 

「あまり人数が少ないのも体裁が悪いのでな、適当に冒険者組合の方にも依頼を出しておく」

「分かった。ビーストマンは滅ぼさない程度に……停戦ぐらいを基準にすればいいんだな」

「お前は本当に話が早い。やりすぎてしまうと、レンタル業に支障が出る。争いの緊張感は保ってもらわないとな。それになんというか……滅ぼしてしまうと誰かの計画を邪魔しそうでな」

 

 

 乾いた笑いがアインズから漏れる。普通のプレイヤーが権力者になるとろくでもないと言っているかのようだ。乾いた代わりにセシルが茶を手に取り飲み始める。

 こうした細々とした布石のときにはセシルは魔導国からすれば非常に良い駒だ。頭脳をになうアルベドやデミウルゴスのように頭が良いわけではないが、とりあえず考える頭はついているといっていい。戦闘能力は非常に高く不慮の事故でも生きて帰って来れる。アインズからすれば自分と同じ目線に加えて、現地の常識をぶち壊したりしないあたりが特に良い。

 加えてナザリックは幹部が少なく、それぞれが地域全体に対して対処しなければならない状態だ。それぞれが諜報や流通といった専門分野を抱えて駆けずり回っている。

 

 そんなセシルだが、使われていることには当然気づいている。だが、上に立つ気はないのでこれはこれでと、楽しんで使われている。

 

 さて、今回の舞台は竜王国と決まった。決まったは良いが、竜王国は四方を何かに囲まれている。山であったり敵国であったり、湖だったりする。陸路を行くにはビーストマンの国か、山を越えるしかない。一番分かりやすいのはカッツェ平野の南にある巨大な湖を行くことだ。ただ、海と接していない魔導国には船が無いだろう。そうセシルは思っていた。

 

 

「移動方法は? カッツェ平野の山すそを移動していくか? 飛行(フライ)も併用すればそれなりの時間で着くだろう?」

「いや、我が魔導国にも船はある。一隻だけなので今後は何隻か作っておくか」

「まさか……」

「ああ、あの船だ」

 

 

 というわけで……冒険者たちはボロボロの船の上で顔を引きつらせながら立っていた。船はボロボロでどう見ても航行できる状態ではないのに、動いている。というか水の上に浮かばずに自身が出す霧の上を滑っていく。

 船員は全員がアンデッドで、船長もエルダーリッチだ。

 そう。かつてはカッツェ平野を走っていた謎の巨大幽霊船だ。確かに魔導国がカッツェ平野を統治してからはこれも傘下に入っていた。

 

 

「あー、こんな状況だが今回はよろしく頼む。俺が“虹”のリーダーを努めているモックナックです」

「“金鎖”のカルです。ご一緒できて光栄です」

「いえ、そんな……足手まといにはならないようにします」

 

 

 ミスリル級冒険者であるモックナックは、魔導国支配後もエ・ランテルに残っていた貴重な人材だ。交渉が上手く行ってビーストマンとの戦闘になれば、戦力に数えられるだろう。この船に乗る勇気を持つ男なのだから。

 

 

「しかし前が見えんな。本当に竜王国の港町に向かっているんだろうな」

「まぁこれまでも行き来しているし大丈夫じゃないですかねー」

 

 

 今回の依頼にはやる気十分なレメディオスといつも通りのケラルト。“金鎖”と“虹”を乗せて自分で出した霧をかき分けながら、幽霊船は航海を続けた。

 




トチ狂ってほぼ完全なオリジナル展開に…
需要があるのか?
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