【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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港町にて待機

 幽霊船は無事に竜王国の港湾都市へと到達した。しかし霧を発生させる船の入港は他の船と、住人たちにとって大変に迷惑であった。これまで魔導国との小さなやり取りで船を使った場合もあったらしく、アンデッドの船に恐慌などは起こらなかった。

 内心がどうであるかは言うまでもない。時間をかけてでも陸路で来たほうが良かったのではないかと思いつつ、一行はタラップからはしけへと乗り込んだ。

 明らかに警戒の目で見られている中、幽霊船は冒険者を無事に送り届けると、再び元の道を伝って帰って行く。

 

 

「おい、あいつ、私達をおいて行ったぞ」

「帰るときはまた来てくれるんだろう。多分……」

 

 

 人間種の援軍という依頼には乗り気だったが、アンデッドの船は乗り心地が良くなかったのであろうレメディオスは不満をもらしていた。忘れがちになるが“金鎖”は聖職者系の構成になっている。カルカもケラルトも口には出さないが不満を溜め込んでいても無理はない。

 もっとも大抵の生物はあの船に好意的にはなれないだろうが。そう思いながら地上に上がる。上陸を果たした冒険者一行にまだ警戒の目が向けられている。

 

 

「早く街を出たほうが良さそうですね……」

「まぁ現地住民と友好を結ぶのは難しそうだが……正式な依頼だし、あまり慌ててもなんだ。こういうときは先触れを出した方がいいかな?」

「ですが、地理に明るい方がいません。ここはこの街の兵にお願いするといいでしょう」

 

 

 モックナック、セシル、カルカでああでもないこうでもないと相談しあう。なんとなくこの先も見ることになりそうな光景だ。

 わざとゆっくり歩いて、衛兵のいる門まで向かって事情を話す。警戒心を見せていた兵士たちもカルカの笑顔にかかればあっさりと陥落した。馬を飛ばし、一両日中には戻ってこれるという。

 

 

「さて、二日の空き時間だ。羽根を伸ばして、けれど大人しくか。できるかな……“虹”はこういう経験豊富なのか?」

「ええまぁ。冒険者を信用しないって連中はどうしたっていますからね。そういうときはお行儀よくすることもありますが……へへっ酒が出るところを用意しないと不満が出ますよ」

「うちにも一人似たノリがいるよ。宿と酒の確保か。あとで経費として請求するか……」

「そう来ると思って、うちの連中に宿を抑えにやらしてます。酒は樽ごとで、持ち込みます」

「本当に慣れているな! 請求書は俺に回しといてくれ。魔導王陛下に払わせる」

「あー、以前話しましたけど陛下はああ見えて寛容ですよね」

「……うん」

 

 

 モックナックの目にはわずかに敬意が宿っていた。まさかアインズに好感を持っている冒険者がいるとは思っていなかったセシルは、『ズレているだけだ』という言葉をこらえた。世の中には勘違いさせておいた方が良いこともある。

 

 

「あれ? ケラはどこ行った?」

「神殿の方に行きました。小さな街でも神殿勢力はあるものですからね。祈りを捧げたり、奉仕活動をすることで少なくとも私達は敵ではない、ということを示しに行ったのでしょう」

「レメは……嫌な予感しかしないな」

「ですが“虹”の方々と一緒ですから、流石に昼から羽目を外さないはず……」

「……酒樽をもう一つ買いに行くか」

 

 

 カルカとセシルは並んで歩き出した。一旦元の港へと戻って色々と見て回る。小さいが港町だけあって活気がある街だ。漁師たちは仕事をして、今日の夜に魔導国の船が来たことを語り合うのだろう。

 来たときは気付かなかったが、港近くには看板が立っていた。

 

 

「ド・ラ・ポエルトへようこそ……街の名前か。客の出入りも意外とあるのか?」

「確か竜王国には港町はそう多く無いはずです。湖の対岸にあるスレイン法国から船が来るのではないでしょうか?」

「あそこは人間種至上主義だったな。ビーストマンとの戦いに参加しているのかな……いかんな、休みに考えることでもないか。お、露店があるぞ」

 

 

 近くに寄っていくと老婆が貝殻などの簡単な素材に、細い鎖などをつけてアクセサリーを作っていた。眼の前のゴザにはその成果が並べられている。

 近寄ってきたセシルにはちらっと目をやっただけで、作業に戻る。日焼けして気の強そうな老人だった。

 

 

「どうも、売れますか?」

「客がろくに来ないのに売れるもんかね。けどここで売れなくとも、湖が近くにない王都では多少売れるからね。王都行きの荷車に載せるのさ」

「淡水の貝なのにキレイな白色だな」

「黒や緑の貝は装飾品に好まれないからね。で、冷やかしならお帰りよ」

「それじゃ、そこの……耳飾りを3つ。銀貨でいいかね?」

「あいよ。客なら客と言いなよ」

 

 

 老婆はひったくるように数枚の銀貨を受け取った。多分、普通の価格より高かったのだろうとセシルは苦笑した。材料費がほとんどかかっていないだろうし、戦争中にそう売れるものでもない。

 

 

「というわけで耳出せ、カル」

「えっあっ」

 

 

 セシルはカルカの耳に螺旋貝殻のイヤリングを付けた。旅に出たのだから土産物の一つぐらいは良いだろう。

 

 

「強引ですね……でも、ありがとうございます。似合ってますか?」

「似合ってはいるが、お前のキレイな金髪の近くだと負けてしまうな」

「ふふっ……ありがとうございます。でも直接付けるのは私だけにしてくださいね。3つ買わないといけない人なんですから」

「うぐっ。でもそれぞれ別のモノを贈るのもな……さて、酒蔵を探すとするか」

 

 

 “虹”が抑えていたのはこの街で一番の宿であり、セシルとカルカが帰って来た頃にはもう宴が始まっており。酒樽を持った二人は英雄のように迎え入れられた。

 その夜、結局酒樽をさらにもう一つ買う羽目になり、これも経費で落とせないかなと思うセシルだった。

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