【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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セラブレイトやら

 “クリスタル・ティア”のセラブレイト。その名はあの争いで聞いたばかりだったが、セシルは彼がどのような人物なのか知らずにいた。

 

 

「セラブレイトは以前言ったように聖騎士系のアダマンタイト級冒険者だ。『閃烈』の異名を持っている。どういった性格なのかは我々も知らないから安心しろ」

「補足どうも。最近のレメは冴えてるな」

 

 

 戦という状況が、彼女の直感を冴えさせているのか。やや困惑していたセシルに背中からレメディオスがつぶやいてくれた。

 同じ聖騎士系というだけあってセラブレイトは白を中心にした装束をしている。赤銅色の髪をうねらせてたらしており。皮肉っぽい笑顔を浮かべている。どこか両極端な印象を与えてくる。

 ともあれ向こうがリーダー一人で来たのだから、こちらも相応の人物を出す。カルカがカップを置いて、微笑みながら握手を求める。

 

 

「“金鎖”のリーダー、カルです。今日はお見事な活躍でしたね」

「おっと、宗教上の戒律で握手はご遠慮願いたい」

 

 

 ……? と“金鎖”と“虹”の全員が首を傾げた。そんな宗教あっただろうか? 白装束の聖騎士なら六大神信仰じゃないのかといぶかしむ。セシルだけは仏教でも伝わってきたのかと少し考えたが、そうした話は聞かない。

 

 

「ええっと……」

「今日の皆さんのご活躍は流石でした。だからこそ言わせていただく」

 

 

 セラブレイトはなぜか視線をセシルの方に向けてから、一礼するような大仰なポーズで言い放った。

 

 

「ドラウディロン様に一番褒められるのは私だということを」

 

 

 それだけ言うとセラブレイトは夜の草原を引き返して行った。残されたカルカたちはさっぱり意味が分からない。はぁ、どうぞどうぞという感じだ。

 

 

「……何だったんだアイツ。酒が不味くなったぞ。いや元々、戦場の安酒だけどよ」

「忠誠心アピールとでも言うのか? 国が違うのに」

「カルさんに失礼にも程がある」

 

 

 “虹”の面々は水をさされてセラブレイトへの印象が悪くなったようだ。“金鎖”は“クリスタル・ティア”にライバル心でも持たれているのだろうかと首をひねる。

 

 

「ぽっと出が乱入してへそを曲げたのか? 器の小さい男だ」

「そういう感じでも無かったが……女王陛下に過剰な忠誠心でも抱いているんじゃないかな」

「何か、私たちに昔立った噂を思い出して嫌になりますね……」

 

 

 カルカたちは三人で聖王国をまとめている時期、誰も結婚していなかったことからそうした関係(・・・・・・)ではないかと言われていたのだ。セシルは知らないし、知らなくても良いことではある。

 

 

「カル様、その例で言うとあの御仁は陛下に懸想していることに……」

「趣味は人それぞれ……で片付けて良いのか微妙な気分になりますね」

 

 

 想像してみると絵面に大いに問題がある。一応貴族などでは家と家のつながりで組み合わせ自体はあるが、流石に実態としては極めて少数だろう……と信じたい。

 こうしてセラブレイトは魔導国に別の意味で仮想敵対者として認識されてしまった。

 

 

「そういえばその女王陛下も妙な気配だったな」

「ああ、それは私も思った。なんというか威厳ではなく、距離を置かれようとしているようだったな」

「うっふっふ、隠し事をしている人なんかはああした感じになりますよ、姉様」

「ですが竜王国は秘すことができるほどの余力はないのです。きっと無理をなされているのでしょう」

 

 

 カルカの意見はやや善意に寄っていると他の三人は苦笑した。皆、無難にできれば魔導国に頼りたくなかったのだろうというありきたりな結論で良しとした。

 

 夜中は屋根がついた簡易的な兵舎を借りて、寝ることになった。“金鎖”の夜番はセシルだ。なにも理由なくそうなったわけではない。“虹”や兵士たちは妻や恋人を置いてここに来ているのだ。セシルだけが男女混合では不公平感が出る。

 そういうわけで焚き火を前に座ってセシルは大人しく過ごしている。

 

 

「なにもセシルさんが警戒している必要はないでしょうに」

「良いんだよ。慣れてるし、こういう時間は好きだ。それに兵士も歩哨を出してるしなぁ」

 

 

 “虹”の夜番は昼、セシルにバフを駆けてくれた魔法詠唱者(マジックキャスター)の男だった。歳は中年に見える。見た目は若いセシルを侮らないあたり、できた(・・・)人物のようだ。

 男は実のところアダマンタイト級冒険者であるのに驕らないセシルをこそ、立派だと思っていた。

 

 

「セシルさんはなんで冒険者になったんですか?」

「俺に関しては御大層な理由はないよ。森で生活してたらレメに無理やり連れて行かれただけだ」

 

 

 なぜ冒険者に? というのは踏み入った質問であると同時に、誰もが気になることだ。特にアダマンタイト級冒険者に対してはそうだ。

 

 

「荒事や冒険なんて飽きたと思っていたんだがなぁ。最上位にいて悪いが、今はあの三人のためみたいになってるな」

「ははぁ……」

 

 

 落胆されるかと思ったが、意外にそうでもなかったためセシルは若干妙な顔になってしまった。男からするとあの三人は戦う理由に足る美女だと思われていただけだったのだが。

 

 

「お前さんはなんでだ?」

「まぁ……生活のため、金のためですよ。貧乏子沢山な家に生まれたから冒険者になるしかなかった。俺、私の幸運は早い段階で教えてくれる魔法詠唱者(マジックキャスター)に出会えたことですね。おかげでミスリル級にまでなれた。家族は今や何不自由ない暮らしをしています」

「その分、お前が苦労してるわけだな……さっさと都市を解放して帰らないとな……」

 

 

 いつの間にエ・ランテルが帰る場所になったのやら。あのセラブレイトという男もドラウディロンがいる場所が大事なのだろうか……セシルは火が爆ぜる音に聞き入っていった。




セラブレイト「ちっ、年増趣味ですか」
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