再びの会議。今後の作戦において主力は“クリスタル・ティア”に任せることが決まった。カルカたち“金鎖”はそのサポートに回る。独断専行をしていないためのアピールで、発案者はケラルトだった。セラブレイトという奇矯な人物への配慮と言って良い。
そのケラルトはセシルの腕に自分の腕を組んで、セラブレイトもいる会議に臨んでいる。
「これはドラウディロン陛下の信頼する、自国の冒険者たちの戦いということを示すことになるでしょう。私たち“金鎖”と“虹”はすでに十分活躍を果たしましたので。人心を懐かせるためにも必要な措置でもあります。どうでしょうか、セラブレイト殿」
「ふん。言われずとも残り二つの都市の奪還は我々が果たす!」
彼は二人の組んだ腕を汚らわしそうに見た。あえてセラブレイトの不快……というより趣味外のものを見せて、敵意をそらす思惑通りだ。会議に出る少女などドラウディロンに限られるだろうが。
都市一つ救った“金鎖”より、二つ救ったセラブレイトというわけだ。まぁ過程でセシルが活躍しすぎたが、帰るまで不和を起こさなければそれで良い。
竜王国軍の将軍は微妙に不安そうな顔をしている。“金鎖”が主力を置き去りに暴走するのも問題だが、一番前で活躍してもらえば兵士の消耗を避けられるのは事実だ。
「“クリスタル・ティア”をサポートするのはセシルを除いた冒険者たちです。セシルには兵士たちの盾に回ってもらいます」
しかし、そのような不安などケラルトにはお見通しだ。セシルがいれば兵士たちの被害は最低限に抑えられるだろう。冒険者を先槍にすれば戦闘自体避けられるかも知れない。セシルも過剰、もとい異常な強さを披露する機会もない。
“金鎖”もセシルが抜けてもアダマンタイト級冒険者として十分に機能する実力がある。仮にセラブレイトが苦戦するようなことがあっても、レメディオスが応援に入れる。
根回しもすでに済んでいるのであろう、その後は何もなく会議は終了した。自分にこうした能力がないセシルはケラルトの手腕に敬意すら感じていた。
「というのが理想的な流れだったんですよ。まぁまぁ上手く話が進みましたね」
「俺としても文句はない。セラブレイトを守るよりは兵士を守りたいしな」
「うっふっふ。そう言うと思っていました。ただ……おそらくはこの方法が通じるのはひどく時間が限られています。具体的に言うとビーストマンに本国からの応援が来る前まで、なんですよ。あなたがいるから負けはないでしょうが、竜王国にとっては泥沼が延々と追加される状況になります」
ケラルトは少し考えるような仕草を見せた後、一言追加した。その声には恐怖のような畏敬が含まれていた。
「魔導国がここまで考えていたのなら、中々の商売上手ですね。宰相か参謀か……あるいは魔導王自身なのかは分かりませんが……」
「そうか。だが、地形的に残り二つの都市も取り戻した方が良いだろう? ちょうど三角形みたいな配置だしな。横を抜けるやつらがいるにせよ、一箇所の方が守りやすい」
「おや、話が分かっているんですね。ドラウディロン女王陛下も分かってくれていればエ・ランテルに帰れるんですが……」
「ところでいつまで腕を組んでいるんだ?」
「お嫌でなければいつまでも」
結局その日のセシルはケラルトと腕を組んで過ごすことになった。二つ目の都市解放作戦はそれから三日後に行われることになった。
思わぬ余暇だが、住人のいなくなった街に見るべき場所は少ない。兵士たちの手伝いでもしようかと思ったがそれは禁止されてしまった。兵士たちと気軽に接する英雄というイメージをこれ以上持たれないようにということだった。
そういう話が出るということは、セラブレイトはそういったことは行わないのであろう。
「私も巡回組から外されたぞ」
「まぁここは彼らの国だしな。指揮系統が混乱しても困るんだろう」
レメディオスも人気の問題で手持ち無沙汰になっていた。彼女も兵士たちを連れて仕事をするので、容貌と相まって人気が高かったのだ。結構キツい性格をしているが、そこがまたいいという兵士が意外と多かった。
カルカとケラルトはまだ仕事をしていた。竜王国軍に生粋の文官が混ざっているわけもなく、
これで指揮系統がどうとか言われても困るしかないのだが……実質カルカが都市を支配しているようなものだ。
「仕方がない。酒場にでも行くか。人気が問題というなら昼間からサボって下げれば良いだろう」
「やってるのか、酒場……」
「もとは宿屋だった場所とかな。巡回とかで結構見かけたぞ。兵士のいるところに酒場ありだな」
「なんだ、その名言」
「私が作った」
一方、ドラウディロン女王のいる竜王国首都では話し合いの場がもたれていた。相手は魔導国の文官である
『女王陛下にご挨拶申し上げます。魔導国の使者を務めさせていただきます。本来ならば階層守護者が来るべきところではありますが、担当者が直接話しをしたほうが良いだろうという魔導王陛下のお言葉によりわたくしたちが参りました。ご無礼お許しあれ』
「いや、ご配慮痛み入る。こちらとしても話が早いほうが助かるというもの」
始原の魔法を使えるとはいえ、戦闘能力は一般人と変わらないドラウディロンは恐るべき使者を相手に震えが出そうだった。しかし、女王としてそれはできない。というかアンデッドと直接会話する者自体珍しいんじゃないかと思いつつ、要件を口に出した。
「では、話し合いを始めよう。貴国はアンデッドを各国へ有料で貸し出しているな?」
『はい。使用用途は様々ですが、単純作業用のスケルトンなどを送り出すこと多くございます」
「では……貸し出しではなく購入は可能だろうか?」
ペースが落ちてきている…
いけない